2005年10月21日

パラグアイの米軍「民主主義拡大」を準備
〔U.S. Military in Paraguay Prepares To "Spread Democracy":Original Article in English/ZNet原文

ベンジャミン・ダングル〔Benjamin Dangl〕;2005年9月16日


パラグアイで論争が巻き起こっている。米国軍が秘密裏に作戦を行っているのである。7月1日、飛行機、武器そして弾薬と共に、500人の米国の軍隊がこの国に到着した。目撃者の証言によると、ボリビアとの国境から200キロの地点にあるパラグアイのマリスカル・エスティガリビア〔Mariscal Estigarribia〕に空軍基地が存在し、そこを米国軍が利用している可能性がある。パラグアイの高官らは、軍事計画はお決まりの人道主義的な貢献であると主張し、米国基地につながる計画が進行中であることを否定した。しかしながら、その地域の人権団体らは心底心配している。ホワイト・ハウスの高官らは軍事作戦の論拠を作り上げる為、(パラグアイ、ブラジル、アルゼンチンが接している)3カ国国境地域〔tri-border region〕におけるテロリストの脅威というレトリックを使っている。これは色々な面で、イラク侵略へと向かった売込みを連想させる。(1)

3カ国国境地域は、世界最大級の水資源の1つであるグアラニ帯水層〔Guarani Aquifer〕を有している。エスティガリビア空軍基地の近隣には中南米で2番目に大きい、ボリビアの天然ガス埋蔵地が存在する。政治分析家達はパラグアイの米国作戦が、上記の天然資源を支配する為と、ボリビアにおける社会的暴動を鎮圧する為の予防戦争の一部であると確信している。

アルゼンチンのノーベル平和賞受賞者であるアドルフォ・ペレス・エスキベル〔Adolfo Perez Esquivel〕はパラグアイの状況について「ひとたび米国が到着すれば、彼らが去るまでに長い時間がかかるだろう。そのことが私をぞっとさせる」と述べた。(2)

エスティガリビア空軍基地は1980年代に、パラグアイの独裁者アルフレド・ストロエスネル〔Alfredo Stroessner〕に雇われた米国の専門家のために建設され、1万6千人の兵を収容可能である。アルゼンチンの新聞「クラリン〔Clarin〕」に執筆するある記者は最近その空軍基地を訪れ、そこが完璧な状態にあり、大きな軍事飛行機を運航できると報じた。たった少数の航空機しか保有しないパラグアイ空軍にとって、その飛行場は大きすぎる。基地には巨大なレーダー装置、非常に大きい格納庫群と航空交通管制塔がある。滑走路自体はパラグアイの首都アスンシオンにある国際空港のそれよりも大きい。基地の近隣には軍の野営地があり、それは最近規模が大きくなった。(3)

「エスティガリビアが理想的な場所である理由は、1年を通して使用可能であるからです...米国の駐留は増大することを私は確信している」とパラグアイ人防衛専門家のオラシオ・ガレアノ・ペロネ〔Horacio Galeano Perrone〕は言った。(4)


否認と免責

「国家政府は米国政府との間で、〔パラグアイにおける〕米軍基地の設立についての、いかなる合意にも達していない」とパラグアイのレイラ・ラチド外務大臣により署名された公式発表は述べる。

パラグアイの米国大使館は同様に声明を出し、その国に軍事基地を設立する計画を公式に否定した。(5)

8000万ドルの米軍基地がある、エクアドルのマンタにおける活動を説明した時、ペンタゴン〔国防省〕は同じ言い回しを使った。まず彼らは、施設は古めかしい「汚れた滑走路」であり、気象観測のために使われるのであって、恒久的に米国軍人を収容するのではない、と言った。数日後、国務省はマンタが多様な安全保障関連の任務を担う、主要な軍事基地として利用される予定である、と述べたのである。(6)

パラグアイの政治分析家で歴史家であるミルダ・リバロラ〔Milda Rivarola〕は、「実際には、過去50年の間、既にパラグアイで(米国)基地は機能してきた」と語った。この国で米国軍は駐留を継続している、と彼女は言う。「過去、彼らは6ヶ月毎に議会の許可を必要としていたが、現在彼らは1年半の承認を得ている。」(7)

2005年5月26日に、パラグアイ上院は米軍に対し、2005年12月までの間、パラグアイと国際刑事裁判所〔ICC〕の裁判権からの完全な免責を与えた。この法律は自動的な延長が可能である。2004年12月以来、米国はペルー、エクアドル、ベネズエラ、パラグアイに対し、米軍に免責を与える協定に調印するよう圧力をかけてきた。ブッシュ政権は、もし各国が免責協定調印を拒んだ場合、2450万ドルに達する経済・軍事援助を断つと脅迫した。この申し入れを受け入れた唯一の国がパラグアイであった。(8)


ボリビアにおけるクーデター警告

ボリビアの天然ガス埋蔵地に対するエスティガリビア基地の近さと、軍事作戦がボリビアの大統領選挙と同時期に起きているという事実が、同様に懸念の原因となっている。選挙は2005年12月4日に予定されている。ボリビア労働総連の代表ハイメ・ソラレス〔Jaime Solares〕と、社会主義運動党(M.A.S.) 議員のアントニオ・ペレド〔Antonio Peredo〕は、選挙を失敗させるための軍事クーデターを米国が計画していると警告した。ソラレスは米国大使館が右翼のホルヘ・キロガ〔Jorge Quiroga〕元大統領の出馬を後援しており、他の候補者による勝利を妨げるために必要なことは何でもする、と述べた。(9)

最新の世論調査は左翼のM.A.S.議員エボ・モラレス〔Evo Morales〕が、わずか1ポイント、キロガの後を行く結果であった。2005年6月、カルロス・メサ〔Carlos Mesa〕大統領を引き摺り下ろした大規模な抗議の最中に、軍事クーデターの呼びかけがあった、とソラレスは言う。隣国パラグアイにおける最近の米軍作戦はその様な介入を容易にする(10)

ブッシュ政権は、ベネズエラにおける2002年のウゴ・チャベス大統領に対するクーデターと、2004年のハイチ大統領ベルトラン・アリスティドの追放において主要な役割を演じた。


3カ国国境地域テロ説

3月に、米国務省テロ対策調整官室首席副次官補〔Principal Deputy Coordinator for Counterterrorism〕のウィリアム・ポープ〔William Pope〕は、9/11の立案者ハリド・シェイク・モハマド〔Khalid Sheik Mohammed〕が1995年に数週間、3カ国国境地域に滞在したと信じられている、と述べた。国防省高官らは、中東のイスラム急進派組織であるヒズボラとハマスがこの3カ国国境地域から「大量の財源を得」ており、その地域におけるさらなる動揺は、他の民主的努力を侵食する政治的「ブラックホール」を作りだす可能性があると語る。(11)

ウルグアイとボリビアの軍事分析家達は、米国によりテロの脅威が、軍事介入と天然資源独占の口実に使われていると主張する。パラグアイの例では、米国はグアラニの水資源とボリビアの天然ガスを確保するべく準備をしている可能性もある。(12)

テロ組織網と3カ国国境地域を結び付けようとする常習的な試みにも関わらず、関連性についての証拠はほとんどない。だが、それ〔証拠がないこと〕は、2003年に米国がイラクを「解放」することを妨げなかった。イラクの大量破壊兵器に関する論争中、ドナルド・ラムズフェルド国防長官が主張したように、「ただ単に何かが存在する証拠がないからといって、それが存在していない証拠があることにはならない。」(14)

パラグアイと米国の高官は、最近の軍事協力の多くは、医療と人道的な活動に基づいていると主張した。(13)しかしながら、国務省の報告書はパラグアイにおける医療活動に対するいかなる支援についても述べていない。2005年にその国における、「Counterterrorism Fellowship Program(CTFP)」に対する資金援助が2倍になったことには触れている。報告書は説明する、「米国とパラグアイの二国間関係は強力であり、パラグアイはテロに対する戦いにおいて優秀な協力をもたらし...CTFPはパラグアイ人が国際テロの力学、テロとの戦いにおける情報の重要性と利用についての講座に出席する資金を提供している。」(14)

パラグアイ陸軍のウゴ・メンドサ〔Hugo Mendoza〕大佐は、米軍が合同演習を通して、パラグアイが安全保障に対する脅威を対処する手助けをしていることを感謝している、と述べた。「私たちは新しい事を学び、別の状況では手にすることのできない新しい設備と最新の科学技術を使い活動している。」(15)

ジャーナリストで人権活動家であるアルフレド・ボッチャ・パス〔Alfredo Boccia Paz〕は、「これらの軍事派遣は常に人道的援助を装う...パラグアイが管理せず、また管理できないことは、この国に入国する工作員の総数なのです」と語った。(16)

一方、近隣諸国はこの軍事活動のニュースを暖かくは受け入れていない。チリの共産党はニカノル・ドゥアルテ〔Nicanor Duarte〕パラグアイ大統領に対し、米国との最近の軍事協定が「中南米にとって極度に重大である」ことから、それらを「再考し、撤回」するよう要求した。(17)

パラグアイでは、人権団体や活動家組織が軍事活動反対に結集している。8月にドナルド・ラムズフェルドが訪問した時、軍楽隊が〔米国歌〕「星条旗〔Star Spangled Banner〕」を演奏し彼を歓迎する中、抗議する人々が彼の側近らを、「ラムズフェルド、ファシスト、お前がテロリストだ!」等のスローガンで迎えた。(18)



ベンジャミン・ダングルはパラグアイとボリビアを旅し、またそれらの地でジャーナリストとして働いた。彼は、世界の出来事についての進歩的な視点を持つwww.TowardFreedom.comと、中南米における実践主義と政治についてのオンライン雑誌であるwww.UpsideDownWorld.orgの編集長である。


出典:

(1) Benjamin Dangl, "What is the US Doing in Paraguay?" Upside Down World, 8-01-05 http://upsidedownworld.org/US-in-Paraguay.htm〔米軍はパラグアイで何をしているのか?(日本語訳。パラグアイとボリビア周辺の地図あり)http://www.asyura.com/0505/war73/msg/288.html
(2) Alejandro Sciscioli, "U.S. Military Presence in Paraguay Stirs Speculation", Inter Press Service, 8-4-05 http://www.oneworld.net/article/view/116435/1/
(3) Claudio Aliscioni, "Los marines de EE.UU. ponen un pie en Paraguay"
〔(4)〕Clarin, 9-11-05
http://www.clarin.com/suplementos/zona/2005/09/11/z-03615.htm
(5) Sciscioli
(6) Mary Donohue and Melissa Nepomiachi, "Washington Secures Long Sought Hemispheric Outpost," Council on Hemispheric Affairs, 7-20-2005 http://www.informationclearinghouse.info/article9541.htm
(7) Sciscioli
(8) Dangl
(9) US Encouraging Military Coup in Bolivia, Prensa Latina 9-13-05 http://www.plenglish.com.mx/article.asp?ID={5FC4E7C4-49A3-4BCD-A796-08441FD72BEE}&language=EN
(10) US Encouraging Military Coup in Bolivia, Prensa Latina 9-13-05
(11) Josh White, Rumsfeld, in Latin America, Voices Democracy Concerns, Washington Post 8-17-05 http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2005/08/16/AR2005081601288_pf.html
Joe Pappalardo, South America Hotspot Garners U.S. Attention, National Defense Magazine, 6-05 http://www.nationaldefensemagazine.org/issues/2005/Jun/uf-south_america.htm
(12) Raul Zibechi, South America's New Militarism, Foreign Policy in Focus, 7-18-05
http://www.fpif.org/fpiftxt/165
Juan Alfaro El Pentagono Logro Instalarse en el Cono Sur, Portal Alba,
7-15-05
http://www.alternativabolivariana.org/modules.php?name=News&file=article&sid=257
(13) Duarte: There will be no U.S. military base in Paraguay, EFE,
8-30-05 http://www.mexico.com/notimexico/?method=una&id=4459&lang=eng
(14) Jim Shultz, Bush Brings the False Intelligence Game to South America, Upside Down World, 9-6-05 http://www.upsidedownworld.org/shultz-bolivia.htm
(15) Bureau of Political-Military Affairs, Foreign Military Training, US Department of State, 5-05 http://www.state.gov/t/pm/rls/rpt/fmtrpt/2005/45677.htm
(16) Donna Miles, Rumsfeld Wraps Up Paraguayan Visit, American Forces Press Service 8-17-05 http://www.defenselink.mil/news/Aug2005/20050817_2471.html
(16) Sciscioli
(17) Chileans Demand Duarte Cancel Dangerous US Military Agreements, Prensa Latina, 8-30-05 http://www.plenglish.com/article.asp?ID=%7B383AA974-DB73-4300-B170-E36511639F13%7D)&language=EN
(18) Bill Weinberg, Paraguayans Protest Rumsfeld, World War 4 Report,
8-23-05 http://www.ww4report.com/node/971
Al Giordano, Rumsfeld Booed in Paraguay, Narco News, 8-17-05 http://narcosphere.narconews.com/story/2005/8/17/18316/7090



posted by Agrotous at 23:25 | TrackBack(0) | パラグアイ
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