2007年12月14日

敗北はチャベスの基本計画だったのか?
〔Was Failure Chavez's Masterplan?:Original Article in English/Venezuelanalysis.com原文

カルロス・ルイス〔Carlos Ruiz〕Rebel Resource ;2007年12月6日

1998年のウゴ・チャベス大統領当選以来、ベネズエラの政治は世界で最も能動的で人を引き付けるものになってきており、それと共にその国の急進的で新しい目標には激しい異議が唱えられている。日曜〔12月2日〕にチャベス支持者の多くが、広範囲に及ぶ一連の憲法改正案に対する投票を棄権したことが、その否決に至り、またとても実質的で真っ当な疑問を投げかけた。つまり、負けるのは初めから彼の意図であったのか?

わずか一年前にチャベスは、記録的な63%の得票及び有権者の4分の1の棄権のみで決定的に再選を果たした。それ以来一握りの論争が起きており、その中のどれもが彼の支持層の中の少数派を潜在的に遠ざけ得るものであった。それにもかかわらず日曜の投票が敗北に終わったのは、チャベスを未だ支持しているのではあるが、本格的な「21世紀の社会主義」を成し遂げる急進的で景観を一変させるような変化の数々には準備ができていなかった、極めて重要な階層の棄権によってであった。

ある評論家はこの大規模な棄権を、極度の雄弁や不十分な行動に起因した「倦怠」のためであると批判した。棄権した者たちがチャベス派のより保守・穏健派を代表しているに違いない故に、これは実態ではありえない。それよりも現実的な論点は、反対派による威嚇戦術や偽情報によってその層が特定の個々の案に慎重になった、というものである。もしこれまで知られてきた反対派の得票能力を超えたかなりの数の「反対」票があったのであれば、これはおそらく真実味をおびるのだが、そうではなかった。どうあろうとも、「反対側」からのプロパガンダはまず本気にされない。大規模な棄権が示唆することは、この問題全体の奇妙な状況下、穏健な「チャベス派」が単に理性的に行動した、ということである。

改正案は、チャベスが即座に認めたように、時期尚早であり、野心的でありすぎた。殆どの評論家は更に、あまりにも多くの考慮すべき事柄をあまりにも短い期間に彼らが要求した、と述べるであろう。チャベスの最後となる6年任期が始まってわずか数ヶ月の間に、当初の33項目で構成された一括改正案は〔国民議会が追加したことで〕瞬く間に69項目に膨れ上がった。それらは、チャベスや彼のより急進的な支持層が望みえたこと全てを含む〔宝に満ち溢れた〕アラジンの洞窟そのものであった。だが穏健派は、重要な改正案の内、あったとしても少数が急を要するものであると見なしていた。その多くが単に憲法上の規定を要するものではなく、また一括案全体がひどく行き過ぎであり、従って際どいものである、と。

チャベスは経験豊かな人物であり、これ程極端な誤算あるいは強欲のために、彼がこの選挙戦を危うくさせた(そして彼自身の統治の仕方と矛盾した)とはむしろ信じがたい。わずか一ヶ月強という期間にこの多数の重大な変更を国民投票に掛けるることは、忍耐それ自体の権化となってきており、長期的な成功の鍵は首尾一貫して民衆の賛同を高めることにあるということを知っている指導者の手口に一致していないように思われる。当然ながらチャベスの政治的影響力は高かったとはいえ、民衆の支持の明白な下落が伴っては革命が本格的に進展でき得ないことを彼は十分承知している。

最大限の票を正確に獲得する方法に関してチャベスに助言することは容易かったはずである。つまり、改正案を社会的利益、行政及び人民権力〔popular power〕の混合ですっきりとまとめ上げて簡素化させる。絶対必須ではないものや、別の手段で達成できるもの、あるいは反対派に有権者を威嚇する機会を与えるようなものを避けるよう努める。クリスマス期間が終わってしばらくたってから始まる選挙運動が開始する前の数ヶ月の間その考えを流布させる。選挙運動中に外務がないよう確かにし、公共討論に参加することを確実にする訳注1

同様に重要なことは、昨年彼を再選させたものと同一の、議論を呼ばない方法で選挙運動をするようチャベスは適切に勧告されていたはずである。不思議なことに彼が固執したのは、いかなる「反対」票も彼個人に反対するのみならず、ジョージ・W・ブッシュに賛成することにさえなると断言することによる奇妙な形の恐喝を用いることであった。その結果、もし「賛成」に票を投ずることを望まなかったならば、棄権するしかなかった――さもなければ、あなたは帝国主義者/寡頭勢力の従僕である。驚くなかれ、棄権率は昨年12月の総選挙での25%から約45%へと跳ね上がった。そしてその増加は殆どもっぱらチャベス派の有権者で構成されていた。振り返ってみると、この「恐喝」は、はたして「賛成」票を確実にすることを目指していたのか、あるいは「反対」票を最小限にするためだったのか? 棄権しないよう度々繰り返された呼びかけにもかかわらず、それはその拡大を助長したのみであったはずである。

意図的な選挙敗北の陰謀論をある刑事が調査していたとして(投票終了後の苦しいほどの待ち時間〔選挙結果の公表は定時を大幅に越えた〕にもかかわらず、反対派に有利なように選挙結果が操作された可能性については憶測せずにおこう!訳注2)、動機、手段と機会の全てがぴったり合致する――特に動機が。顕著なことに、これ程の驚くような敗北の唯一の代わりとなる説明は、はなはだしく又らしからぬ誤った判断であり、また選挙戦の初歩的な失策は言うまでもない。チャベスは十分な経験を得ており、これよりも分別がある、と多くが考えるであろう。

トラック一杯の改正案の数々を、仮に55%の得票によって一括で通す試みは――それが多くが予想しており、理論上達成できるとされたものだったのだが――国における増大した怒りや市民の不和を生じさせるだけであったであろう。革命のこの重要な段階において、チャベスの「敗北」は実際にはその正反対を達成したのであり、爆発寸前にあった反対派の学生運動を効果的に沈静化することによって、ベネズエラに平穏と安定を瞬時に確保した。彼ら〔学生ら〕が最もよく口にしたメッセージは、彼らが「ただ平和を望んでいるだけだ」というものであり、今や彼らはそれを手にしたのである。逆に言って、チャベスは何も失っておらず、全てを手に入れた。訳注3

これは特に彼の国際的な印象にとって非常に良い前兆である。独裁者/ペテンという全ての非難を当分の間和らげたことに加えて、威厳のある民主主義者で融和的な政治家としての彼の名声は、その地域のほぼ全ての指導者からの賛美を伴って、10倍拡大した。一方で、彼の現任期の基本的な宣言は完全に表明され、それによってこれから数年でなければ数ヶ月の間継続されるであろう非公式の議論の過程を開始させた。改正案が草の根の選択では殆どなかったとはいえ、その全過程の方法論や様式は民衆に重要な教訓を示した。今彼らにおそらく期待されていることは、彼らの構成的権力〔constitutional power〕を用いて、彼ら自身の改正案に着手することである(十分な発案を与えられた今)訳注4

当然ながらチャベスは革命を深めることを望んでおり、また強調されるべきことは、全有権者のほぼ半数が「21世紀の社会主義」を諸手で受け入れる準備ができていたことである。とはいえ、前進の道のりを決定的に正当化するために必要なことは、極めて重要な「穏健派」を招き入れること、あるいはチャベス自身が選挙翌日に国営テレビへの電話で述べたように「同乗」させることである。この穏健派を見分けて彼らに注意を注ぐために、穏健派が承認しない選挙上の試験を行うこと以上に優れた方策が他にあるであろうか? 徹底的な社会主義事業に関して説得を要する者がどれ程いるのかを、更に推定上は彼らが誰なのか、そして何処に住んでいるのかさえも今やチャベスは正確に知っている。

チャベスは彼の見解や政策に関する総意を築き上げる強力な能力を持った傑出した政治家であり、彼が達成を目指し提案していることは秘密でも何でもない。何千時間ものメディア出演で、社会的公正、真の人民権力や多角化された経済という彼の理想は、これまで十分に説明されてきた。明らかに全ての者が十分に納得してはいない反面、説得のための系統だった過程を可能にする最も重要な段階は、この選挙で負けることによって今や達成された。極めて重要な徴候はチャベスに対する反対の基盤が増大していないということであり、またチャベスに共感する者たちが更なる説得を受け入れる状態にある、ということである。

チャベスの支持者らが思考能力の欠けた羊からは程遠い、ということが今や明確になった。「賛成」票を投じた者たちは情報を完全に得ており、改正案を進める準備ができていた。彼らが資本主義を捨て去り、異なる試みを試すことをいとわないことを仮定できるであろう。同時に、棄権した者たちは、彼の正反対の努力にもかかわらず、改正案をチャベスから分離して考えることができる十分に確固とした気質を備えており、それゆえにベネズエラ社会の現状との関連で彼らが認知した利益及び可能性の落とし穴を基に、中立的な決定を下した。

ベネズエラにおいて社会主義の機運は熟しているのだが、真に実証的な国際的模範になるには、わずかな過半数による支持では十分ではない。「21世紀の社会主義」が人民権力を基にしているかもしれないとはいえ、それすらも民主的な総意なしに達成することはできない。実のところ、政治、経済や社会を真の草の根レベルでの意思決定という革命的な展望へと転換させるためには、行政権の増大が不可欠なのである。可処分所得で満ち溢れ、また急速に発展した社会計画や世界最大の石油埋蔵によって要求が益々満たされている現在の社会において、穏健派はおそらくこう訊ねるであろう。実際にはどれ程より良くなり得るのか? 他の多くを変える必要があるのか? それは危険を冒すことにはならないのか?

チャベスの支持基盤の内、資本主義モデルに伴う本来的な諸問題を、あるいはまた社会主義の本来的な有益を未だ認めていない者たちは、憲法改正案選挙で棄権した人達とぴったり一致する可能性がある。事によると彼らは、行政権の拡大や大統領任期制限撤廃の民主的又は他の利益に関して説得される必要があるのかもしれない。彼らの懸念が如何なるものであろうと、これまでチャベスの過度の雄弁が彼らを安心させるには十分ではなかったことは明らかである――現在の解決策であると思われることは、「疑念を抱いている穏健派」を直接対象にした多様な教育手段であり、またそれと同様に重要なことに、実例による実証である。

明らかに、改憲案の決定的な失敗はどの個々の案にあったのでもなく、特定の状況下での一括案の全体的な強烈さ、範囲や圧力であった。未だチャベスは少なくとも今後6ヶ月の間、〔授権法によって彼に与えられた権限によって〕法令を行使することができ、それを用いて最も急を要する案を達成させることは疑いない。反対派は依然として構成的権力を有しており、選挙的な勢力が彼らを支持すれば如何なる法案も無効にすることができる。とはいえ今回の選挙結果はその勢力が限られた小数派であることを示している。事実上、全ての「反対」票は、執拗に反チャベスで、親資本主義の意見を持った限られた勢力が投じたのであり、それはベネズエラ全人口のわずか3分の1を代表しているであろう。

反体制派が活気付けられているとはいえ、それは幻想的な体験であったと判明するであろうし、5年に及ぶチャベスの残された暫定的な最終任期を伴った社会主義運動の立場はこれまでになく確固としている。国内および国際的な反対勢力の攻撃が弱まり、また「独裁者」という非難が最終的に粉砕されたことはおそらく計り知れないほど貴重であり、そうした状況下、憲法に規定されようとされまいと、意図された改革の殆どは必然的に達成されるであろう(大統領任期制限撤廃を民衆が自発的に成功させるのを想像するといい)。そしてその明白な結果はほぼ確実にどんちゃん騒ぎを保証するであろう。つまり、2012年のチャベスの再選である。「今のところは」とチャベスは述べる。ベネズエラ人は「成熟し、私達の社会主義の構築を継続させて」いかなければならない、と。

カルロス・ルイスの 「Rebel Resource 」サイトはコメントを受け入れており、多数の分類されたオンライン・ビデオを提供している。


訳注:

1.実際には選挙期間中、そのおおよそ半分に当たる期間チャベス大統領は外遊していたという。(英文参照元

2.これまでの選挙とは異なり、米州機構(OAS)や欧州連合(EU)の監視団は、投票の準備期間が短すぎたため今回の国民投票に参加しなかったという。両機関は通常5・6ヶ月の準備期間を要する。とはいえ、監視が成されなかったわけではなく、39カ国からの監視団が監視を行ったという(英文参照元)。また、反対派に属するブロガーも述べるように、選挙不正は容易ではない、という。そのブログ(英語)によれば、その手順は以下:

1.電子投票機で投票

2.電子投票機が投票確認の紙を印刷し、有権者が確認した後に投票箱へ入れる

3.投票終了後、電子投票機が当日の投票記録を印刷する

4.その後に初めて、カラカスの全国選挙評議会(CNE)に記録を配信するべく、機械がネットワークに接続される

5.その後、その場での検査のために抽選で投票結果の54%が選び出される

6.検査員らが選ばれた投票箱を開け、公共の場で、両方の側の立会人の前で、手作業で集計する

その結果、3組の結果が得られる。つまり、検査の記録、CNEの記録、及び投票機の記録である。

3.実際チャベス大統領は敗北を認めた演説の中でこう述べている(英文参照元):

この〔憲法改正案を巡る〕過程の最大の成果は、8年経って反対派がこの〔1999年〕憲法を承認したことにある。今や彼らはそれを承認しており、それを擁護するべく声を上げている! 何と素晴らしいことか! 〔中略〕

それが単に一時的な方策や選挙上の操作ではないと信じたい。そうではなく、それが誠実さであると信じたい。

よろしい! ここ〔現行憲法〕に制定されているベネズエラを共に築いていこうではないか。

4.既に先住民族団体がチャベス大統領の改正案を再び送り出すために戦略会議を開いた。その団体の代表によれば、憲法改正国民投票の結果から、98パーセント以上の先住民が改正案に賛成票を投じたという。また、ベネズエラ憲法下、大統領が1任期中に同一の改正案を2度提出することは禁止されているのだが、有権者の15%によって署名された請求を提示し、国民議会が承認した場合、国民が国民投票を召集することができる。(英文参照元

posted by Agrotous at 23:19 | TrackBack(2) | ベネズエラ
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<ベネズエラ>大統領:“現憲法内で社会主義めざす”/慎重な改革を求める世論反映【しんぶん赤旗】
Excerpt: ベネズエラの国民投票結果を伝える昨日のエントリーで、「一見強権的に見えるチャベス大統領の政権運営が実は民主的なものであることが逆に、明らかになった」と書いておいたが、こうした見方がひとり gataro..
Weblog: どこへ行く、日本。(福田は国民羊化計画と構造改革(=政財癒着推進→格差拡大)をやめられるのか)
Tracked: 2007-12-15 09:13

チャベス大統領の政策、敗れる...
Excerpt: チャベス大統領敗北...。しかし活動は続ける!!
Weblog: Kashiroman's BLOG "ブログの王子様"
Tracked: 2007-12-15 11:13
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