2007年11月24日

南の銀行:IMF・世銀支配に対する代替案
〔The Bank of the South:An Alternative to IMF and World Bank Dominance:Original Article in English/ZNet原文

スティーブン・レンドマン〔Stephen Lendman 〕;2007年10月30日

2004年7月、IMF〔国際通貨基金〕と世界銀行は創設60周年を祝った。ドイツと日本の予想されていた敗北後の戦後世界のための金融援助の枠組みを提供するため諸機関は〔米国〕ニューハンプシャー州のブレトンウッズで創設された。息を呑むような偽善を伴い、2004年10月の開発委員会コミュニケはこう言明した。「ブレトンウッズ機関60周年を迎え……持続可能な成長、安定したマクロ経済政策、債務の持続可能性、自由貿易、雇用の創出、貧困削減及び良い統治に向けた開発途上国による取り組みを支援していくことを改めてここに誓う。 」何ともはや。

実のところ、地獄の様な63年間に両機関は上記の意見で述べられた全てにおいて正反対の結果を達成した。創設以来、それらの任務は世界的な先進国〔global North〕が支配する世界経済に開発途上国を統合すること、そして富を貧しい諸国から裕福な諸国の強大な銀行家らに移転させる手段として債務返済を用いるというものであった。

この施策が債務奴隷〔debt slavery〕と呼ばれる理由は、これまでの債務の利息を支払うためには新しい貸付が必要であり、負債額が増大し、また過酷で一方的な「構造調整」条項を債務条件が要求するからである。それらの条項には以下が含まれる。

――国営事業の民営化

――行政の規制撤廃

――社会的支出の極度の引き下げ

――賃金の凍結、または削減

――外国企業に自由市場を無制限に開放すること

――企業にやさしい減税

――労働組合員の取り締まり

――社会民主主義と相容れない体制下において、従わない者に対する残忍な弾圧

あらゆる場所でこの施策は同一である。つまり、エリートの民間所有への公有財産の大規模な移譲、超金持ちと絶望的な貧乏人との間の拡大し続ける不釣合い、そして攻撃的な監視、大量投獄や社会統制のための拷問といった安全保障に対する莫大な支出を正当化する攻撃的な愛国主義である。

債務奴隷に対する代替案――南の銀行

昨年12月、ウゴ・チャベスは南の銀行〔Banco del Sur〕の創設を提唱した。彼が「米国政府の手先」と呼ぶ国際資本家の諸機関に対する撲滅運動の一環としてである。この銀行はその本部が置かれるカラカス〔ベネズエラ首都〕における11月3日の首脳会談で正式に発足する〔それはその後2007年12月5日に延期された〕。原加盟国であるベネズエラ、アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイ、ボリビア、そしてエクアドルの7カ国が出席する。

10月12日、コロンビアのアルバロ・ウリベ大統領は彼の国が8番目の加盟国になることに合意すると発表した一方、「この決定は世界銀行や米州開発銀行〔IDB〕の拒絶ではなく、南米共同体に向けた連帯と友愛の表れである」と述べた。現時点で南米のわずか4カ国のみが加盟していない――チリ、ペルー、ガイアナ及びスリナムである。とはいえチリはコロンビアの手本にならって加盟しそうであり、その他もまた加盟を決定する可能性がある。

原加盟国の経済相らは銀行の設立文書の仕上げのため、10月8日にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで会談した。多くの主要な経営上の問題の解決が未だ待たれているとはいえ、非公式の情報では各国が外貨準備の10%を充てることになり、この新機関に関する同格の監督権を有する、という。締めくくりの記者会見で、ブラジルのギド・マンテガ財務相は次のように明言した。加盟諸国は「南の銀行の成立に関する合意を妨げるあらゆる障害を克服することができた。今、(銀行)の現実化は目前である、と述べることができる」たとえ、ブラジル(中南米最大の経済国家)が未だに参加を正式のものにしていないとはいえ。

ベネズエラのロドリゴ・カベサス財務大臣は、より多くのクレジットを南米人に提供することによって、この銀行がこの地域の開発に手を貸すことになると説明した。それは「銀行の改善された関係を、また加盟国の人々にクレジットを提供するその能力を前提とする新たな構造を構築するために設立」された。さらにそれが目指していることは、加盟国における流動性を拡大させること、社会経済的な発展や経済基盤への投資を復興させること、そして急激に影響力を失っており、その地域から段階的に離れていっているIMFと世界銀行の拘束的な統制から諸国を遠ざけておくことである。

2005年にIMFの810億ドルの貸付残高の内80%が中南米に貸し付けられていた。現在それは1%になっており、170億ドルの未決済の貸付ほぼ全てがトルコとパキスタンで占められている。世界銀行もまた拒絶されている。ベネズエラは既に前倒しでIMFと世界銀行に債務を完済し終わっている。その時、4月30日にウゴ・チャベスは象徴的にこう宣言した。「私達はもはや米国政府にも、IMFにも、世界銀行にも、あるいは誰にも出向く必要はない。」エクアドルのラファエル・コレアはその後に続いている。彼はIMFに対する彼の国の負債を清算し、世界銀行の貸付を保留し、2005年に彼が経済財務大臣であった時に彼から金を奪い取ろうとしたことで世銀を非難し、そして今年4月にエクアドル駐在世銀代表を望ましからぬ人物であると宣言し〔国外追放することで〕、驚くべき外交上の平手打ちをくらわせた。

2008年に運営開始する時、70億ドルの当初資本金を伴い南の銀行は上記の抑圧的な機関に取って代わる。それは地域投資のための「新たな金融構造」になる。現在の状況では、運営に関する同等の権限を持って、各加盟国の財務大臣が銀行の経営協議会に就くようである。ベネズエラのロドリゴ・カベサス総務大臣は次のように述べて銀行の中南米起源を強調した。「この構想は、私達が率いる私達のための開発機関に頼るというものである。」公共及び民間の発展や地域統合の事業に出資するために。彼はこう付け加えた。「経済政策に縛られたクレジットは行われない。私達の民族に惨事をもたらすクレジットは成されない、そしてその結果それは支配の手段にはならない。」数々の国際金融機関の様には。

ウゴ・チャベスの理想は、融資の常套手段によって無数の人々に貧困を余儀なくさせるIMF、世界銀行や米州開発銀行(IBD)の支配からその地域の諸国を解放することである。棚ぼたの石油収益に助けられ、彼の政権は既にそれを行っている。財政上の援助や市場価格以下の石油をその地域や他の諸国に提供するという前例のない専心と共に。今年これまでのところ、それ〔援助〕はおよそ90億ドルに上り、そして米国政府に監督された類とは異なり、それは低価格や善意、共同の精神、そしてあったとしても僅かばかりの付帯条件の下行われている。

10月10日にカラカスを訪れた時、ノーベル賞を受賞した経済学者のジョセフ・スティグリッツはチャベスの尽力を是認し、南の銀行への支持を表明した。彼は「南の銀行を持つ利点の一つは、それが南半球の発展途上諸国の視点を反映するということであり、(その一方でそれとは対照的にIMFや世界銀行の諸条件)は(地域的)発展の有効性を妨げる」と述べた。

この訪問時にスティグリッツはウゴ・チャベスと面会し、彼の再分配の社会政策を賞賛した。彼は更にその地域の人々を搾取するワシントン・コンセンサスの新自由主義的政策を非難した。それは「アンデスの協調を弱めるのであり、それは分割して統治する米国の戦略の一環である。米国企業のために出来うる限りの利益を獲得することを試みる戦略の。」それはその地域とその人々を犠牲にして行われる。

国連代表部臨時大使のアウラ・マウアンピ・ロドリゲス・デ・オルティスは、10月のマクロ経済政策に関する一般討論参加時に、中南米の債務に関してその世界的機関に告知した。彼女はこう強調した。「発展途上諸国の対外債務の永続性は、その発展の過程に悪影響を及ぼす。貧しい諸国の発展のために資源を向けることには価値がない。」国内的な経済発展に用いられる代わりに、「もしその資源が結局は対外債務返済に注がれるのだとしたら。」さらに彼女は新しい南の銀行についても語り、如何にしてそれが地域統合を強めるのか、また貧困や社会的排除を低減するべく投資や融資計画を公正に割り当てるのかを語った。

それよりも宣伝されていないALBA(米州ボリバル代替統合構想)銀行もまた、その四カ国同盟――ベネズエラ、キューバ、ボリビア及びニカラグア――に「財政上の資源を注ぐ新しい形態をもたらす行動指針に基づいた、新しい地域的金融構造」の下、年末までに操業を開始する。

チャベスは2001年にALBAを米州自由貿易地域(FTAA)に対する代替案として初めて提唱し、2004年12月にベネズエラ、キューバ及びボリビアが原加盟国となった。その後2007年1月に、ニカラグアが同盟に加わった。当選したばかりのダニエル・オルテガ大統領が公職に就いて始めての仕事として調印した。ALBAの目標は意欲的である。それは地域の包括的な統合であり、また加盟国の人々全てのための「社会国家」の発展である。それが明確に基礎を置いている事柄は、競争ではなく、加盟国の相補性であり、支配ではなく連帯であり、搾取ではなく協調であり、そして他国や巨大企業の掌握に囚われない各加盟国の主権的権利の尊重である。

同盟を強固なものにする方策を検討するべく、4月に第5回ALBAサミットがカラカスで開催された。重要企画に含まれたものは、ALBA加盟国によって共同経営される12の公共企業創立の計画や、常設(調整)事務局である。その目標はエネルギー、農業、電気通信、基幹施設、産業供給やセメント生産などの分野における主要経済部門の強化である。その後、ALBA加盟国外相らは、安価なクレジットでそれらの事業に出資するべく、ALBA開発銀行を6月に創設することに合意した。それは南の銀行を補完し、同様にカラカスに本部を置くことになる。

不確かな将来の展望

上記で論じられたような社会的に責任のある地域銀行は、それが約束を果たした場合、支配的な金融資本機関に挑戦することになるであろう。とはいえ、そこに問題がある。これらの新しい機関はあらゆる問題の解決策ではなく、資本大企業が彼ら自身の利益のためにそれらを食い物にすることを結局は許すことも有り得る。さらに、より大規模な変化なくして、財政上の自律のみでは米国政府の支配からその地域を開放することはない。求められていることは、数々の基本産業の全面的な国営化、一方的なWTO〔世界貿易機関〕式の貿易協定の終結、国資の社会的再分配、地方経済の開発、そして25年に亘る新自由主義の悪夢を終わらせる決意である。1960年から1980年にその地域の一人当たりの収入の伸びは82%であった。その反面1980年から2000年にそれは9%であり、2000年から2005年にはわずか4%であった。その地域にとって、それは圧倒的な貧困、不平等、そして超金持ちと貧しい者の間の、世界で最も極端な格差という結果をもたらした。

変革が望まれており、ウゴ・チャベス政権下のベネズエラがその地域で最も多くを達成してきた。ロドリゴ・カベサス財務大臣は2008年の政府予算を国民議会に提出したばかりである。その46%が社会支出に計上された。それは医療と教育に特別注意を払っているのだが、国民の需要に取り組むべくチャベスが国の資源を用い続けているように、助成・無料の食糧、土地改革、住宅供給、マイクロ・クレジット、職業訓練、協同組合やその他にも専念している。彼が公職に就いて以来、一人当たり社会支出は3倍以上増加し、2006年にはGDP〔国内総生産〕の20.9%であった。

いまやチャベスはエクアドルに同盟者がいる。初期の尽力が有望なラファエル・コレアである。事がうまく運べば、次の6ヶ月で草案され、来年国民投票に掛けられる新しい憲法の下彼らは〔改革を〕継続していくであろう。しかしながら、ブラジル、アルゼンチンやボリビアといった南の銀行創設国は、中道左派であると主張するのだが、実際には1990年代の新自由主義を受け入れており、財政上の自律がそれを変えることはない。南の銀行は、企業のそれではなく地方の需要や発展を優先する為政権を成就して初めて機能する。それはとても困難な仕事であり、最有力な加盟国であるルラ政権下のブラジルが米国政府と緊密であり、その統制下にある状況でそれを達成することは容易ではない。

それにもかかわらず、変化の微細な徴候が現れている。南の銀行がそのひとつであるということは有り得る。そして新しい世代の左派の指導者らが最終的にはその地域に対する米国政府の減退する(とはいえ未だ強靭な)支配を終わらせることも有り得る。それが望みであり、あらゆる前進は民衆への更なる力を、そしてもうひとつの可能な世界を意味する。


スティーブン・レンドマンはシカゴに在住しており、lendmanstephen@sbcglobal.netから連絡可。

posted by Agrotous at 21:00 | TrackBack(1) | 中南米全般
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