2007年09月08日

ベネズエラの軍備増強:事実か虚構か?
〔The Venezuelan Arms Build Up: Fact or Fiction?:Original Article in English/Venezuelanalysis原文

ビクター・フィゲロア=クラーク〔Victor Figueroa-Clark〕Red Pepper Venezuela Blog;2007年8月26日

過去1年程の間のベネズエラ軍に関する主流報道の記事に目を通すと、それが大規模で不穏な軍備増強に従事しているように思わせるものがある[1]。「権威主義的」で「大衆迎合主義」であるというチャベス政権に対する広く普及した非難と結びつけて考えると、これは多くの者に懸念をもよおさせる。一般の人たちがベネズエラについてあまり多くを知らない一方、「チャベスは少し怪しげ」であり、また彼の政権はその地域の安定を脅かす軍事機器に莫大な額を費やしている、という印象を彼らは受けている。

チャベスの「権威主義」という無知な主張の数々は容易に論破することが可能なのだが、潜水艦や航空機の購入を説明するのはより困難である。軍事機器は何処から見ても軍事機器であり、ベネズエラの様な国がジェット戦闘機や潜水艦、あるいはヘリコプターを必要とする理由を理解することは一見したところ容易ではない。こうした軍備が数十億ドル掛かることを考慮に入れると、これらの購入がこの国家の需要との釣り合いを欠いた、莫大な増強の一端であると解釈するのは容易いことである。

全ての国は軍事ドクトリンを有している。それがその国軍の武装や構成の様式を、そしてその目的を明確にする。ベネズエラの事例では、このドクトリンはボリバル主義運動の到来をもってある程度変化してきた[2]。ベネズエラは今その運動に対する脅威の出所を分析しており、また彼らはそれらの脅威に対処するべく国軍の構造改革に着手している。

ベネズエラが直面している脅威は、近代史を考慮すると明白になる。全ての中南米の革命運動は、政治・経済・軍事的領域において米国による攻撃の対象になってきた。それはベネズエラも変わらない。2002年のクーデター未遂は米国の後援をもって実行されたのであり、また国内の騒々しい反対は部分的に米国によって後援され、資金供給されている[3、4]。米国はベネズエラ沖合いに位置するキュラソー島にある秘密情報収集所を含め、その地域に複数の常設基地を有している。そして2006年に米国は「Operation Partnership of the Americas 〔米州パートナーシップ作戦〕」という名のもと、カリブ海で大規模な海軍演習を実施した。それよりも厄介なことに、2002年クーデターの11ヶ月前に、スペイン軍は「バルボア作戦〔Operation Balboa〕」の名で演習を実施し、複数のNATO〔北大西洋条約機構〕諸国が参加した。その演習は、ベネズエラ(「パープル〔Purple〕」と称された)に対する侵略をシミュレートした。それは国の石油生産地域における強力な反乱軍に直面したパープル政府の要請に応える形で成された[5]。スペインがNATO加盟国であり、当時のアスナール政権によるクーデターの積極的な支持を考慮に入れると、2002年クーデター時、国の西部で武装抵抗が生じた場合の非常事態対策にこの演習が関連していなかったということを信じるのは、演習がそれらとは何の関係もないという米国の否認にもかかわらず、困難である。米国が実際に侵略をし得るという事実は、イラクとアフガニスタンに対する侵略のみならず、それ以前のパナマ、グレナダやサント・ドミンゴに対する侵略によっても証明されている。1980年代のニカラグアにおけるサンディニスタ政権に対する攻撃は、革命政権を打倒する米国の別の戦術を指し示してもいる。

これらの歴史的前例を前に、ベネズエラ国軍は軍の構造を、国内あるいは地域的脅威に対処するべく構築されたものから、彼らが最大の脅威と理解するものに対処するべく設備されたものへと改めている。その脅威とは、海からの侵略、またはニカラグアの事例で起きたような隣国における「コントラ」軍の結成である[6]。この二重の脅威に対抗するうえで必要なことは、一定の種類の設備であり、その内のいくつか、例えばF-16戦闘機などを以前ベネズエラは所有していた。しかしながら、チャベスが政権に就いて以来、米国はその戦闘機の予備部品の供給を拒んできており、事実上それらを離陸できなくさせた[7]。また米国はスペイン等の第三国が米国の技術を伴う備品をベネズエラに売却することを差し止めてきた[8]。このことがベネズエラに新たな軍事設備の供給源を模索し、また独立した対外政策を有する諸国との関係を築く以外の選択の余地を与えなかった。

これまでに購入されてきた設備――汎用ヘリコプター、スホーイ戦闘機、輸送機や海防艦――は、コロンビアとの国境に潜伏する武装集団がもたらす脅威にベネズエラ国軍が対処することを許す類の設備である[9]。それは更にベネズエラが自国の領海を、麻薬密売人や外国の漁業船から防衛することを容易にする(ベネズエラの領海では流し網漁は不法である)。ライフルAK-103、地対空ミサイル等のような他の購入は、全て明らかに仮想の侵略国を防止するために設計された防衛用の武器である。これらの設備のどれ一つとしてベネズエラの近隣諸国に対して脅威になるものではない。単刀直入に言えば米国に対しても。

大規模な予備軍を組み入れるための国軍の再構築は、その戦略の一環である。この予備軍はその役割が自衛であるために、多数の戦車や精巧な装備で武装されることはない。予備軍は、あらゆる侵略の事態において実戦に対応できるゲリラ部隊の編成を確保するために存在する[10]。これが軍備増強に対して抗議してるものたちが、ベネズエラの近隣諸国であるコロンビア、ブラジルやガイアナではない理由である。これらの諸国はそれが全く脅威ではないことを承知しているのである。

ここで数値に目を向けると明らかになることは、2006年の軍事費がチリとコロンビアでのほうがベネズエラでよりも著しく高かったこと、そして実際のところベネズエラの軍事費、年間14億4500万ドルが、チャベス政権下のほうが以前の諸政権下(16億1900万ドル)よりも平均して低いことである。チャベス政権は更に以前の諸政権よりも少ない割合のGDP〔国内総生産〕を軍備に費やしてきた(1.3〜1.4%対1.6〜1.8%)[11]。これを社会計画に費やされる14.69%のGDPと比較するとよい[12]。それに加えて、近隣諸国を懸念させるに足る量で潜水艦、戦車、駆逐艦や戦闘機を購入してきたチリの歳出とは異なり、ベネズエラによって購入されてきた武器の種類は近隣諸国に対してほとんど脅威にはならない[13]。「Brazilian Military Power Review」は潜在的軍事力の表においてベネズエラをブラジル、ペルー、チリ、そしてアルゼンチンの次の第五位につけている[14]。このように、ベネズエラがある種の地域的軍事超大国になるには程遠いことが明らかになるのである。

これらの事実は、チャベスが地域的な平和と安定を脅かすような軍備増強にベネズエラを携わらせている、という主張の完全な誤りを証明する。それらはまた、主流メディアに達している反チャベス・プロパガンダの懸念をもよおす度合いを暴露することにも役立つ[15]。ベネズエラは近隣諸国との良好な関係を維持することに専念してきており、軍備よりも遥かに多く投資や社会計画に出資している。その証拠に、ベネズエラは如何なる戦争を行うことよりも遥かに、本国や中南米において貧困、飢餓や疾患に立ち向かおうと努力している。

典拠:

1. For examples see: Jeremy Page “Putin's billion-dollar arms sale risks souring Western détente” The Times, July 25th 2006; or Andy Webb-Vidal “Venezuela seeks arms edge over Colombia” FT.com, May 25th 2004; or Sophie Arie “Chavez prepares his people’s army to confront US” Telegraph.co.uk, March 4th  2006.

2. See Gobierno Bolivariano de Venezuela “Presidente Chávez llama a depurar influencia estadounidense de la formación militar nacional

3. Mark Weisbrot and Robert Naiman “Correct the Facts on US-Venezuela Relations: Remember the Attempted Coup?” The Huffington Post, October 13th 2006.

4. Interview with Eva Golinger “Eva Golinger: Washington's 'three fronts of attack' on Venezuela” Green Left Online, November 17th 2006.

5. VHeadline.com's Philip Stinard writes: Extracts from a longer article by Eleazar Díaz Rangel “Operation Balboa: NATO war games simulated attack on Venezuela

6.  Noam Chomsky “Teaching Nicaragua a lesson” zmag.org.

7.  Defense Industry Daily “US Roadblocks re: the Venezuela-Israel F-16 Upgrade: Politics or Protectionism?” October 26th 2006; or Cleto A. Sojo “Venezuela's Chavez Accuses U.S. of Delaying Parts for Ageing F-16 Fleet” Venezuela Analysis, February 14th 2005.

8. CNN.com “U.S. blocks Spain warplane sale” January 15th 2006.

9.  James Petras “The US / Colombia Plot Against Venezuela” Counterpunch, January 25th 2005.

10. Humberto Marquez “Reserva militar contra invasión virtual” IPS, 10th August 2007 and Republica Bolivariana de Venezuela “LEY ORGÁNICA DE SEGURIDAD DE LA NACIÓN” December 18th 2002.

11. Oilwars.com “Venezuelan military spending – busting another anti-Chavez myth” June 11th 2007.

12. Lee Sustar “Where is Venezuela going?” Venezuela Analysis, July 16th 2007.

13. Council on Hemispheric Affairs “Chile’s Aggressive Military Arm Purchases Are Ruffling the Region, Alarming in Particular Bolivia, Peru and Argentina” August 7th 2007.

14. Military Power Review “Ranking do Poder Militar na América do Sul - 2006 / 2007” August 10th 2007.

15. Medialens “CHAVEZ AND RCTV - TILTING THE BALANCE AGAINST 'THE BAD GUY'” June 13th 2007.

posted by Agrotous at 22:12 | TrackBack(1) | ベネズエラ
この記事へのTrackBack URL


アメリカが世界から収奪する仕掛けはこうして構築された
Excerpt: アメリカの巨大資本が、どのようにして世界中に自分達だけが利益を搾り取る構造を構築してきたか、そのプロセスを紹介している映像を見つけた。 サイト“Democracy Now! JAPAN” である。 ..
Weblog: にほん民族解放戦線^o^
Tracked: 2007-09-11 03:49
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。