2007年08月11日

異なる帝国の衰退――ホンジュラスとミランダ
〔Varieties of imperial decline - Honduras and Miranda :Original Article in English/ZNet原文

トニ・ソロ〔toni solo 〕;2007年7月30日

ことによると、ジョージ・W・ブッシュ大統領をハーマン・ウォークの架空の狂った駆逐艦艦長、クイーグ艦長になぞらえるのは常に不公平であったのかもしれない。ブッシュの状態が実際に反映しているは、真に王室の血を引く猛烈な速さの痴呆である。10年足らずで、彼の統治は百年以上かけて展開したスペインの植民地支配の衰退と、専制政治から独裁政治への転変を再演してみせた。違いは共和国を破壊しようとするカルロス・アルフォンソ〔現スペイン王の名〕・ブッシュ王の決意が未だ内戦を誘発させていないことである。喩えの的確さを判断するには、中南米植民地という過去の裏庭におけるアメリカ合衆国の影響力の紛れもない急激な衰えや、いくつかの破滅的な外国での植民地戦争、その殆ど価値を失くした通貨による経済〔funny-money economy〕や、アメリカ合衆国国内で現在実施されている大規模な行政上の暴政を考慮するのがいいだろう。

きちんとした独立記念日の数々にもかかわらず、スペインが中南米で植民地支配的な統率力を失くした正確な時点を確認することは殆ど不可能である。同様のことは現在のアメリカ合衆国にも言える。それは2004年ベネズエラ〔大統領〕罷免国民投票という選挙上のディエンビエンフー〔ベトナム北西部のディエンビエン省の省都。1954年第一次インドシナ戦争でフランスのベトナム撤退へと至った戦いへの言及〕であったのか? あるいはボリビアでエボ・モラレスが権力を握り、エクアドルでラファエル・コレアが勝利し、ニカラグアでダニエル・オルテガが再選した2005年から2006年の一連の選挙であったのか? 又はそれは、この7月にベネズエラがニカラグアとエクアドルとの、総計でほぼ100億米ドルに達する2つの巨大精油所協定を取り決めた時であったのか? あるいはマヌエル・セラヤ〔ホンジュラス大統領〕がALBA〔米州ボリバル代替統合構想〕に調印した時であったのか?

現実世界の歴史:見せ掛け企業メディアの鏡

上述の最後の出来事は未だ起きていない。それについては後述する。まずは精油所に関して。7月17日に、エクアドルのホルヘ・アルバン〔Jorge Alban〕・エネルギー大臣は、55億米ドルに値する、一日最大で30万バレルの石油を処理可能な精油所をエクアドルに建設するというベネズエラとの協定を公表した。その事業は、自らの原油を精製する能力のない主要石油輸出国というエクアドルの屈辱的な新植民地的な地位の終わりを告げるであろう。アルバン大臣は「エクアドル・ベネズエラ間の関係は強固であり、そこに欠けているのは手続きの段取りをつけることのみである」と述べた。(1)

7月20日にベネズエラのウゴ・チャベス・フリアス及びニカラグアのダニエル・オルテガ・サアベドラ両大統領は、「El Sueño Supremo de Bolívar」、「ボリバルの至高の夢」と呼ばれる40億米ドルに値する石油精製工場のための礎を築いた。ニカラグアの太平洋沿岸、大学都市レオン近くに位置したその精油所は、一日15万バレルの石油を処理することが可能になる。総計でその事業は、三千以上の地元雇用を創出し、年間7億米ドルの利益をもたらすであろうと見積もられている。ベネズエラとニカラグアの国営石油会社によって、それぞれ55%と45%の持ち株で組織された合弁事業会社ALBANISA 〔ALBA de Nicaragua S.A.〕がその事業を運営する。(2)

中南米の歴史におけるこの画期的な出来事は、米国とその同盟諸国の卑劣で利己主義の負債プラス援助という開発協力モデルを全体的にとらえることを可能にする。多くの現実世界のニュースと同様に、これは多数の国際企業メディアによって黙殺された。例えばフォックス・ニュースやCBSによって報道された様な例では、習慣的な反チャベス的解釈が加えられ、その本当の重要性は曖昧にされた。英国のガーディアン紙やBBCのようなメディアは、精油所の歴史的な開始を無視した。それらのメディアは代わりに、生ける屍RCTV〔ラジオ・カラカス・テレビ〕メディア大河小説から、鼻につく親米的な耳にたこができる衝撃的な戦慄を更に搾り出した。

それらの報道はチャベスの6時間〔放映時間は一定ではない〕テレビ番組「アロー・プレシデンテ〔こんにちわ大統領〕」のひとつの回での発言を隔離〔して報告〕した。〔その発言は〕メキシコのPAN〔国民行動党〕のマヌエル・エスピノ党首のような訪問中の外国政治家らに、ベネズエラ政府に対する干渉主義の政治的攻撃をするために、ベネズエラの民主主義を利用しないよう警告したものである。(3)ガーディアン紙とBBCの両方とも、メキシコにおいてエスピノのPAN党役人らが、彼らが嫌っているメディアに対して公式の広告ボイコットを適用していることに触れなかった。例えば、グアナファト州の「A.M」紙や、広く尊敬されている時事問題ラジオ番組「Monitor」が対象になり、後者は閉鎖を余儀なくされた。(4)

進展するALBA

企業メディアの知覚管理人らによって売り込まれた機械的な親米的な自動操縦プロパガンダとは関係なく、キューバ、ベネズエラ、ボリビアとニカラグアによって率いられたALBA(米州ボリバル代替案)という統合の第一歩は引き続き弾みをつけている。その潜在的な勢力範囲の最新の表れは、ニカラグアのソモサ独裁打倒とサンディニスタ革命の勝利28周年を祝う7月19日の式典におけるマヌエル・セラヤ・ホンジュラス大統領とマルティン・トリホス・パナマ大統領の参列であった。彼らはダニエル・オルテガとウゴ・チャベスと共に演壇に立った。

パナマは既にベネズエラのマラカイボ・ガス湖からパナマ運河へと流れるよう計画されたガス・パイプラインに関する協定をベネズエラと結んでいる。マヌエル・セラヤ・ホンジュラス大統領のALBAとの親善は、2006年のオルテガの大統領二期目選挙勝利に直接起因している。オルテガの大統領就任に続いたニカラグアのALBAへの即座の統合は、中米にALBAの21世紀の社会主義への門戸を開いた。それは米国国務省及び当時の米国通商代表ロバート・ゼーリック――現世界銀行総裁――が2005年末にその地域を中米自由貿易協定(CAFTA)にまとめ上げたと思った後に起きた。

マヌエル・セラヤがベネズエラとのより良い関係に興味を持っている自明の理由は、単に高価な石油価格という見地のみならず、電気供給能力という見地からの中米の切迫した緊急のエネルギー問題を誰が解決するのかと問えば明白である。米国政府は連帯に基づいた特恵石油取引や、電気供給に対する援助を申し出ているであろうか? 否。それに反してベネズエラはそうしている。以下は2006年9月のブッシュ大統領とマヌエル・セラヤの会談後に配布されたプレスリリースである。

「セラヤとブッシュは更にホンジュラスにおけるエネルギー情勢についても話し合った。ホンジュラスは電気を起こすための石油を含め、輸入石油に最も依存している西半球諸国のひとつである、と(ダン・)フィスクは述べた。『これはセラヤ大統領とホンジュラスにとって大変な懸念となるものである』と彼は説明した、『セラヤ大統領はそれに如何にして取り掛かるのかという彼の考えについての概要を〔ブッシュ〕大統領に提示し、エネルギー・コストを削減するよう試みる仕組みを作り出す(セラヤ大統領の)案を申し出たいと望んでいた。』ホワイトハウス高官は、ホンジュラス指導者に対するブッシュの返答は市場の仕組みに対する信頼及び、政府の干渉に対する制限の重要性を強調した、と述べた。ブッシュは更に燃料とエネルギーの代替的な源を検討することに対する彼の強い興味を再主張し、エタノールや他の燃料の代替を話題にし、又サトウキビをエタノールへと変える仕方を調査するよう中米人達に奨励した。」(5)

翻訳すると、「ブッシュはセラヤにこう述べた、『あなたのエネルギー問題に対する米国の援助は忘れなさい。あなたのトウモロコシや砂糖を燃料に変えなさい。人々にはケーキを食べさせればいい訳注1(米国の遺伝子組み換え穀物から焼かれた〔ケーキを〕)。』」

という訳で今年1月にセラヤ政権がシェブロンとエッソ所有の石油ターミナルを一時的に掌握したのも驚くに足らない。(6)その措置は、規制廃止された「自由市場」のためホンジュラスに年間6千万米ドル以上費やさせていたガソリンスタンド企業連合を解体した。今年3月、ホンジュラスはキューバとの外交関係を回復させた。(7)セラヤ大統領は8月にキューバを訪問する見込みがあり、そうなればここ数十年で始めてそうするホンジュラス大統領となる。(8)ブッシュ政権の望みに反し、セラヤは更に中道左派政党の指導的政治家ホルヘ・アルトゥロ・レイナ〔Jorge Arturo Reina〕をホンジュラス国連大使に任命した。

テグシガルパにおけるいくつかの立腹

親ブッシュ政権の元ホンジュラス国連大使、エンリケ・オルテス・コリンドレス〔Enrique Ortez Colindres〕は、〔ニカラグア首都〕マナグアを訪問することでセラヤ「が反ヤンキー政府を樹立させており、中米に分裂を引き起こしている」と言明した。現ホンジュラス米国大使・総督のチャールズ・フォードは、マナグアでサンディニスタ革命の記念日のためにウゴ・チャベスと同席したセラヤ大統領の参席を非難し、こう述べた:「(ホンジュラス)政府はとても明快な仕方で、その利益を明確にし、またそれが共にいたいと望む相手を明らかにした、と私は考える。」(9)

単にエネルギー問題のみがセラヤ大統領をALBA陣営へ向かわせているのではない。同報告は米国が今年のみで4万人のホンジュラス人――本国の家族を支えるために米国でのより良い生活を追い求めている女性や男性――を国外追放してきたというセラヤ大統領の主張に言及している。セラヤとチャベスは米国大使によるものの他に別の批判も受けている。影響力のあるホンジュラスのカトリック枢機卿ロドリゲス・マラディアガは最近、「チャベスは彼が皆の権利を踏みにじる権利を持った神であると考えている。歴史上の他の独裁者達に既に見られた傲慢を伴って」という意見を述べた。

ロドリゲス・マラディアガはチャベス大統領から例によって辛辣な返答を受けた。彼は枢機卿を「帝国主義者のオウム」と呼んだ。それにもかかわらず、マヌエル・セラヤはロドリゲス・マラディアガに陳謝するようウゴ・チャベス大統領を説得することに成功した――もっとも、彼が偏見のある意見を表明する前にいくつかの事実を学べるよう、枢機卿をベネズエラに招くことをチャベスは強く主張した。(10)チャベスの謝罪に対する枢機卿の黙認をマヌエル・セラヤが公表したのは、ホンジュラス政府とベネズエラの協力計画の一環である無料の医療を受けるべくカラカスへと向かう100人以上のホンジュラス人を見送った空港においてであった。

ミランダのモチーフ

いくつかの徴候から見ると、ホンジュラス政府が直ちにALBAの下キューバ、ボリビア、ベネズエラとニカラグアに加わらなかったとしても、少なくとも特恵エネルギー取引をベネズエラと結ぶであろう。これは、「フィンランド化した訳注2」中央アメリカ全域の議会で、それぞれの米国傀儡政権によってCAFTAが強行採決されて以来、起こる可能性があった。貿易協定の振りをした、叩き売り投資条約であるCAFTAを承認していないのは唯一コスタリカのみである。それは米国企業に圧倒的に恩恵を施す。中米の商業や農業にとっての利益はこれまでのところ微細、あるいは消極的な結果になっており、その地域の根本的なエネルギー問題に対する解決策を全く呈していない。それ故に、ALBAの統合された貿易、エネルギー及び社会的投資モデルが適切なのである。

カルロス・アルフォンソ・ブッシュ王と彼の巡察吏、より平凡には西半球担当国務副次官補として知られるトーマス・シャノンは、スペインのカルロス主義の先人らと全く同じ役割を間抜けにも演じているようである。ベネズエラのウゴ・チャベス・フリアス大統領は、スペイン王カルロス三世やカルロス四世に対抗したフランシスコ・デ・ミランダの役割を継承し、また超越している。これらの君主らは、彼らの帝国に対抗し中南米で共和国革命を引き起こそうと努力したミランダにつきまとった。ベネズエラのカトリック教会大祭司らやロドリゲス・マラディアガの様な外国大司教達からの攻撃は、異端審問によるミランダに対する迫害を繰り返している。

1785年11月、在パリ・スペイン大使のアランダ伯爵は当時のスペイン首相にミランダについて書き記している。「彼は世界をこれ程の状況に至らせており、またアメリカにおいて多数の火花がおこっているようである故に、もし注意が払われなければ、この様な人物は自力でおびただしい数を遥かに越えた損害を引き起こすこともあり得る。」(11)220年以上経った後も、物事は殆ど変わっていない。かつて忠誠であった帝国の地方総督のホンジュラス――ジョン・ネグロポンテの過去の死の部隊テロのたまり場――は、帝国の闇を手探りで進み、ALBAの新しい夜明けへと向かっている訳注3。米国帝国の衰退におけるもうひとつの下降の印である。

トニ・ソロは中米を拠点に活躍する活動家―toni.tortillaconsal.com

Notes
1. "Ecuador y Venezuela acuerdan construir refinería", Agencia Bolivariana de Noticias,17/07/07
2. "Un megaproyecto para salir de la megamiseria en que nos dejó el neoliberalismo" Radio La Primerisima, Managua 21/7/2007
3. "Criticise me and you're out, Chávez warns foreigners" Rory Carroll, Guardian, 24/7/2007 - and - "Chavez to expel foreign critics", bbc.co.uk, 23/7/2007
4. "Periódico mexicano, víctima de boicot publicitario", CERIGUA, Argenpress.info, 20/07/2007 - and - "Se cierra 'Monitor', otro golpe a la libertad" Julio Pomar, Argenpress.info, 01/07/2007
5. "Bush Meets with Salvadoran, Honduran Presidents in New York" Scott Miller, Washington File Staff Writer, September 19th 2006, http://useu.usmission.gov Brussels, Belgium
6. "Honduras temporarily grabs Exxon, Chevron terminals", Reuters, January 14th 2007
7. "Honduras sends first ambassador to Cuba in decades" Caribbean Net News, March 02, 2007
8. "Presidente Honduras irá a Cuba por primera vez en casi 50 años", www.cubaverdad.net, July 20th, 2007
9. "Bush molesto con Zelaya" El Nuevo Diario, Managua, 22/7/2007
10. "Honduran church protests against Chavez insult to cardinal" http://english.eluniversal.com/2007/07/24/en_pol_art_honduran-church-prot_24A905039.shtml - and - "Cardenal acepta disculpas de Hugo Chávez", http://www.laprensahn.com/ediciones/2007/07/27/cardenal_acepta_disculpas_de_hugo_chavez_dice_presidente_zelaya - and - "Chávez ofrece disculpas a Card. Rodríguez Maradiaga pero pide que se rectifique" http://www.aciprensa.com/noticia.php?n=17787
11. Note to p.131of "Francisco de Miranda : precursor de las independencias de America Latina" by Carmen L. Bohórquez Morán. Fundación Editorial El Perro y la Rana. Caracas. 2006. ISBN 980-396-238-8 taken from A. Grisanti, "Miranda juzgado por los funcionarios españoles de su tiempo. Grisanti Editores. Caracas. 1954


訳注:

1.食べるパンが民衆にはないと聞かされ、マリー・アントワネットが述べたとされる「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」のパラフレーズ。

2.フィンランド化とは、議会民主制と資本主義経済を維持しつつも、共産国(フィンランドの場合はソビエト連邦)の勢力下におかれる状態を意味した言葉(参照元)。ひるがえってそうした姿勢や政策を採ることを指す。

3.米州自由貿易地域(FTAA)はスペイン語でALCAと表記され、その対案である米州ボリバル代替統合構想の頭文字ALBAはスペイン語で「夜明け」を意味する(英文参照元)。

posted by Agrotous at 23:08 | TrackBack(0) | 中南米全般
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