2007年07月07日

未来の都市?
ベネズエラの都市カロラにおける民衆の力の構築
〔The City of the Future?
Building Popular Power in the Venezuelan Town of Carora :Original Article in English/Venezuelanalysis原文

ジェイ・ハートリング〔Jay Hartling〕;2007年4月26日

カロラの街路は他の中南米都市によく似ている――せわしない商取引があらゆる街角で行われ、往来、喧騒、人々が日々の日課をこなしている……だが、私が訪問したことのある中南米の他のどの地方自治体、特にベネズエラのその他のどれとも区分する何かが、ベネズエラ、ララ州のカロラとペドロ・レオン・トレス〔Municipio Pedro Leon Torres〕地方自治体にはある。つまり、この都市は地方自治体の行政制度全体を、下から〔from the bottom up〕民主化し変えていく道を歩みだしている――現市長フリオ・チャベス(ウゴ・チャベス大統領との血縁関係はない)によって率いられて。

カロラは人口約10万人の都市であり、ベネズエラ北西部の農業が盛んなララ州に位置している。それはララ州の地形の40%を占めるペドロ・レオン・トレス地方自治体の所在地であり、その州で面積からみると最大の地方自治体となっている。そこは暑い――4月の温度は平均でセ氏約35度あるいはそれ以上になる――とはいえ、本当に熱いのは、これ程の短期間に市長がこの美しい都市を民衆の力の小宇宙へと変化させたその燃えるような速度である。

40代前半のフリオ・チャベスは控えめ――とても友好的で率直――な人物であり「フリオ」として皆に知られている。国の革命的政府を支持する多くの政党のひとつPPT(皆のための祖国党)の連立候補として彼は2004年に市長選に勝利した。チャベスはトレスの住民の大多数から多大な信頼を得ている――彼は彼らの仲間であるとみなされており、長い社会闘争に関わってきている。とはいえ革命の過程に反対する者たちにとって、彼は悪魔の化身であり、死の脅迫や激しい憎悪の対象になっている。このことがチャベスにとって多大な問題を引き起こしており、また寡頭政治勢力が地元メディアの全てを支配している故に、地方自治体政府の注目に値する業績の真実を住民が知ることを困難にしている。

チャベスは唯一の目標を持って公職に就いた――地方自治体を民主化し、それを住民に譲渡することである。これはベネズエラ・ボリバル共和国の憲法における参加型で主役型の民主主義という条項や原理に一致している。他の地方自治体が参加型民主主義の制度のいくつかを履行してきたとはいえ、フリオ・チャベスは彼の同僚の遥か先を行っている。

チャベスが公職に就いたとき、彼が引き継いだのは数世紀の間少数の地元寡頭政治勢力が運営してきた典型的な代議政体であった。この同一の一族らがこの地方自治体や地元の農業関連産業、そして他の補助的な産業を運営してきた(未だにかなりの程度そうしている)。前任の市長は地方自治体の歳出に関する全ての決定を下しており、金になる地方自治体の契約を彼の友人や家族に与えていた。第四共和国〔ウゴ・チャベス政権以前の政治体制〕の他の統治機関の多くと同様、彼らは地方自治体の住民の大多数が直面していた社会問題の数々を実質的にないがしろにした。それらの企業や個人の多くが税金を払っていなかった――つまりチャベスが舞台に現れるまでの間は。わずか2年の間に、この地方自治体政府は逸脱した企業から税を徴収することで運用可能な課税標準を4倍に拡大させた。それらの企業には、有名な全国及び多国籍企業も含まれていた――その中のいくつかは何年も帳簿をごまかしてきた。支払いを拒み続けた場合直面する多額な罰金ゆえに、これらの企業や個人は税金を支払い始めた。

これに加え、この都市は中央政府の非中央集権化基金(FIDES〔Fondo Intergubernamental para la Descentralización〕)や、LAEE――石油を生産しない州に均一化のための支払いをもたらす法、カナダの州の平衡交付金に似ている――を通して財源を受け取っている。注目すべきことは、その利用方を彼らが決定するよう、これらの基金を地域共同体にチャベスが譲渡したことである。だが責任はそれに留まらず、住民は管理や評価を含めた公共基金の運営に関わっている。

フリオ・チャベスは、国の憲法で述べられた参加型計画の全てを迅速に履行することで任期を開始した。そこには参加型予算、地方公共計画評議会〔Consejos Locales de Planificación Pública :CLPP〕や、ごく最近では地域住民委員会〔consejos comunales:訳注1が含まれる。

チャベスや市議会議員たちや地元住民にとって、参加型制度を旧第四共和国の地域法令の上に履行することは理にかなっていなかったゆえに、彼らは地方自治体の条例を国の進歩的な憲法に一致させるため、それらについて議論し、精査し、改革するべく大規模な地方自治体の住民集会を開いた。3ヶ月の間、討論と議論は市長と市議会議員全員の出席を伴い17の行政区全てにおいて行われた。その成果は新しく革命的な地方自治体法令であり、それは「生命、自由、公正、平等、連帯、民主主義、社会的責任、及び人権、倫理と政治的多元主義の優位」の基本原則を基にしている。チャベスは地方自治体政府を2つの目的をもった暫定政府であると見なしている。すなわち、1)地方自治体寡頭政治勢力機構の解体。そして、2)腐敗し非能率的な官僚制を廃止し、民主的な意志決定を人々へと譲渡する暫定政府の導入である。革命的市長とされている他の者達が同様のことを行ってきていない理由を訊かれ、チャベスは失礼ではない仕方で肩をすくめ、「私も同じ質問を彼らにしました」と述べた。このことがウゴ・チャベス大統領に気付かれずにはすまなかった。彼はフリオ・チャベスを大統領委員会に任命した――そのうちのひとつは大衆参加と地域住民委員会に関して、もうひとつは他の地方自治体が条例を再編成することを助けるものである。

トレス地方自治体における最初の参加型予算は2005年に行政区を基にした地方公共計画評議会(CLPP)を通して始まった――その翌年議論は住民にとってより身近になり、全ての住民が支出の優先順位をつける機会を与えられた。だが参加はそれに留まらない。それは公共事業(実際の事業と財務管理の両方)の運営を地域共同体の手に委ねることによって更に先に行っている。任期1年目に市長は、残念ながら地域共同体は例えば道路工事のようないくつかの包括的な問題を見過ごした、と述べた。チャベスは彼が各地域共同体に訪れて、道を舗装するために地方自治体に資金を返すよう納得させなければならなかった、と言う。

とはいえ、大衆革命の力の本当の原動力は地域住民委員会にある。現在トレス地方自治体の17の行政区で317の地域住民委員会が活動している。その多くは1年目を数えたばかりで、新しいものが週単位で形成されている。委員会は田舎では最大で200世帯、それよりも大きい町や都市では400から500世帯で構成される。委員会は、ベネズエラでゆっくりと現れている新たな社会主義体制の民衆の力の基礎を成している。全住民による共同体評議会は、地域共同体の優先事項や支出について共同の決定を下す。代弁者らが選任されるとはいえ、彼らが地域共同体を代表して決定を下すことはない――全ての決定、発案や支出は共同体の集まりが全体として承認する。驚くことに、女性による参加の割合は80から90%であり、委員会の大多数がより貧しい共同体において作られている。同様に意外なことは、公共資金の運営に関する透明度の度合いである――全ての支出報告は一連の帳簿にまとめられており、それを見たいと望む者は(筆者を含め)誰でも見ることが可能であり、これらの支出報告は地域住民委員会及び政府に公に提出される。

エル・オンソ〔El Onzo 〕地域住民委員会の代弁者のひとり、リリアン・バジェステロスの言では、彼女の地域共同体は旧諸政府によって完全に無視された一方で、この地域住民委員会制度をもって、送水設備を改善し、「小屋」と言及される最も悲惨な状況で暮らす家族のための新しい住宅を建築するための財源を手にすることができ、いま彼らは更なる地域共同体の改善のための継続可能な職や収入をもたらす社会生産計画に取り掛かり始めている。何時でも約束なしに彼女がフリオの事務所に立ち寄り地域共同体の問題を論ずるのは何の問題もない、と彼女は言う。エル・オンソ地域住民委員会は市町村連合〔mancomunidad〕と呼ばれる多数の地域共同体――5つの地域共同体が互いに共同して地域共同体銀行を運営する――の一部でもある。地域共同体の事業のための財源は中央政府の財源から直接共同体へと渡り、地域共同体銀行を通して管理される。これが意味することは、地域共同体の一員が地域共同体事業に着手するために以前は必要であった文書処理や手続きを努力して行うために、地方自治体や州の首都へ赴く交通手段を探す必要がもはやなくなったということである。 リリアンにとって、地域住民委員会は人々が公共財源や事業を専門的な訓練なしに管理できることを証明している――フリオ・チャベスはこれらの地域共同体を信用しており、そのことが成果をあげてきている。

最も重要なことは、地域住民委員会が相互の社会的責任という地域的な絆を築いており、それが去り行く資本主義体制のとても重要な一部である個人主義にゆっくりと取って代わっているということである。ラス・パルミタス〔Las Palmitas〕地域住民委員会のロサ・ロドリゲスは、地域住民委員会に関わる以前は彼女の地域共同体の人の多くをほとんど知らなかった、ましてや彼らが直面している問題の種類を知らなかったと言う。とはいえ、地域共同体にどのような資産が存在し、何が欠けているのかを知るために各地域住民委員会の形成過程の始めに行われる社会経済的な人口調査の最中に、彼女は他人の問題を深く認識するようになった――共通の分野で地域共同体を結びつけることである。人口調査は地域共同体がどの家族が最も困っているのかを理解する助けになる――そしてそれらの家族がまず住宅供給や他の計画の候補になる。

というわけでこの先何が、ベネズエラの地域住民委員会、参加型・主役型民主主義や21世紀の社会主義を待ち受けているのであろうか? フリオ・チャベスによれば、次の段階は地域住民委員会を土台に地方の行政制度を再設計することであるという。そうすることは、地方自治体の以前の地理的な境界線や、選任された役員と公務員の権力、そして州及び国家の統治制度に多大な影響を与えることになるであろう。さしあたり、委員会はとても新しいのであり、革命の第5の原動力訳注2である大衆の力が円滑に動き出すまえに、多くの些細な問題を解決する必要がある。それができたならば、ベネズエラは真の「民主主義」(民衆による統治)が栄える、この惑星で数少ない地域になるであろう。

ジェイ・ハートリングはベネスエラで地域住民委員会を研究している、カナダ・ビクトリア大学の大学院生。


訳注:

1.consejos comunales:地域住民委員会の他の日本語表記はコミュニティー委員会、共同体評議会、地方議会(Consejo Comunal) 、住民委員会、地域共同体会議、等。

2.ベネズエラ社会主義達成に向けた5つの原動力への言及。第一は1年余りの期間の間法令の形でチャベス大統領が特定の問題に関する法案を通すことが許された授権法(ley habilitante )。第二は憲法改正。第三は大衆教育を通した道徳の向上。第四は地方自治体の再編を含めた新しい「権力の幾何学」の構築。第五が記事中で言及されている原動力であり、地域住民委員会を通した地域共同体社会権限の爆発的増加(引用元)。

posted by Agrotous at 23:01 | TrackBack(0) | ベネズエラ
この記事へのTrackBack URL
http://blog.seesaa.jp/tb/47050297
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。