2007年06月11日

RCTVとベネズエラにおける言論の自由
〔RCTV and Freedom of Speech in Venezuela:Original Article in English/ZNet原文

グレゴリー・ウィルパート〔Gregory Wilpert〕Venezuelanalysis.com;2007年6月4日

国際メディアや表現の自由関連団体、及び多種多様な政府の見解に反映された国際世論に関する限り、ベネズエラはついに反体制派が正しかったことを示す決定的な措置をとった。すなわちベネズエラは独裁政権へと向かっている。こういった見解から判断すると、反政府系テレビネットワークであるRCTV〔ラジオ・カラカス・テレビジョン〕の放送免許更新拒否の結果、言論の自由はベネズエラにおいてますます制限されている。5月27日夜12時のRCTV放送終了と共に、国で最も有力な反体制派の意見が抑圧されたことになっている。

いかなる仕方でも反体制派の意見を抑圧することは言論の自由に反している、と一般的には当然視されている。だが反体制派の意見は本当に抑圧されたのか? これは正しい比喩なのであろうか? RCTV取締役マルセル・グラニエルは、実際に黙らされたのか? 否、より適当な比喩は、グラニエル(及びその他)が彼の表現の自由を行使するために利用していた拡声器――彼が借りてはいたが決して所有していなかった拡声器――が実際の所有者に返還された、というものである。それどころか、彼は未だにそれよりも小規模の拡声器(ケーブルテレビ及び衛生テレビ)を利用することを許されている。

言い換えれば、RCTVが半世紀以上利用してきた周波数は、民主的に選ばれた指導部の管理の下その本来の所有者――ベネズエラの人々――に返却された、ということである。とはいえ、放送電波の利用法に関する決定が(多くの批判する者たちが容認するように)政府の特権であろうとも、一方で放送電波を利用する自由がもっぱら多数決原理の問題ではありえない、と彼らが訴えるとき、この措置を批判する者たちにも一理ある。結局のところ、少数派(この例ではおおかた相対的に裕福な少数派)にも、自らの意見を多数派に納得させるため使用することができるよう、拡声器を利用する機会が与えられるべきではないのであろうか? 少なくとも、公民権を伝統的に奪われた少数派を擁護する進歩主義者らは、少数派にメディアに対する利用機会が常に与えられるべきであると論じるであろう。[1]マルセル・グラニエルと彼の支持者達が公民権を奪われた少数派であると見なすことはできないとはいえ、多元主義の名の下に、確かにこの少数派もほんの僅かでもメディアで意見を述べる資格がある。

チャベス支持者達は反体制派が意見を表明するために十分な放送周波数を未だに所有していることを指摘し反駁する点で、この主張の正当性を認めている。RCTVの免許期限が切れるにまかせるという決定の正当性を論じる彼らの主張は、第一に、反体制派が自らの見解を放送する多数の別のメディア媒体を未だに所有しており、第二に、RCTVは破壊的で法律違反的な放送局であり(その根拠はクーデターや石油産業閉鎖やその他への局の関与)、そして第三に、憲法によって規定された新しい公共サービステレビ局のためにそれは退かなければならない、というものである。ここでこれらの主張それぞれを、まずはベネズエラのメディア状況から簡潔に検討してみよう。

ベネズエラのメディア状況

ベネズエラに関する問題の多くと同様に、ベネズエラのメディア状況がいかなるものかについてほぼ完全な意見の衝突がある。反体制派によれば、チャベスは既に大部分の放送メディアを掌握している。国家の所有又は後援を通し直接、あるいは抑制的といわれるメディア法によって間接的に。だがチャベス支持者達によれば、反体制派が全メディアの95%を支配しているという。

問題は、複数の異なる観点からメディア状況を検討することができることであり、それがこの状況の様相について全く異なる結論に至ることが可能な理由である。まず、誰が異なるメディア媒体を所有あるいは支配しているのかという視点のみから検討することができる。次に、どの種類のメディア媒体が国民に届くのかということに注目することができる。そして最後に、最終的に人々が見るあるいは聞くものが何かを調べることができる。

誰がメディア媒体を所有しているのか、という一番目の例――チャベス支持者が利用する傾向のある分析――では、大多数のテレビ局、ラジオ局及び新聞社が民営であることは明白である。ここで、全メディア媒体(テレビ、ラジオと活字)の95%が民間所有であり、これらのうち大多数がチャベスや彼の政権よりも反体制派を支持している、と彼らが主張する時、チャベス支持者らは確かに正しい。[2]

反体制派支持者が選ぶ傾向がある二番目の類の分析では、どの種類の局が最もベネズエラ人に届く可能性があるのかを検討する。ここでは概して、最大の全国的な視聴範囲を持つ2局はチャンネル2(元RCTV、現TVes〔ベネズエラ社会テレビ〕)及びチャンネル8(政府に管理されたVTV)である。民営全国ネットのベネビシオン、テレベンおよびグロボビシオンは、主に人口が密集する地域で放送している故に、それよりも遥かに限られた放送範囲を有している。[3]明らかに、民営地方局や地域共同体チャンネルはその地域を越えることはないのだが、地域共同体テレビ局はその数において民間テレビ局に匹敵し始めている。こうして見てみると、テレビ放送に関していえば、RCTVの放送中止や、 TVesがそれに取って代わったこと、政府放送局の威力、そして大部分は政府に同調する20局ほどの地域共同体テレビチャンネルを伴い、政府は明らかな優勢を獲得してきている。

けれどもこの見方は、人々が実際に何を視聴するのかを検討すると、著しく変化する。異なる種類のテレビチャンネルの視聴者の割合を調査した複数の研究によれば、おおよそ5局のテレビ局、一握りのラジオ局、そして少数の新聞紙のみが大多数のベネズエラ人によって見られ、聞かれ、また読まれているという。すなわち、テレビ放送では、RCTVとベネビシオンが60%の視聴者によって視聴されている(RCTVは約35から40%、ベネビシオン約20から25%)。残りの40%の分配は、政府テレビ局VTV(約15から20%)、テレベン(約10%)、グロボビシオン(約10%)、ケーブルテレビ、そして複数の地元放送局である。[4]

異なるメディア放送局の政治的見解、そして相対的な視聴者の割合を考慮すると、ベネズエラのメディア状況を3つの区分に分けることができる。反体制派、中立あるいは公平、そして政府支持である。RCTVの終了以前は以下の様相を呈していた。

反体制派:50から55%

           RCTV:35から40%

           グロボビシオン:10%

           地方民間:5%

中立あるいは公平:30から40%

           ベネビシオン:20から25%

           テレベン:10から15%

政府支持:20から25%

           VTV:15から20%

           その他(テレスール〔中南米を対象としたテレビ局〕、Vive、地域共同体):5%

さて、RCTV後の時代には著しい変化が確かにあり、約束されたとおりTVes (RCTVの後継局)が親政府のチャンネルではなく中立になった場合、メディア状況は以下のようになる。

反体制派:15%

           グロボビジョン:10%

           地方民間:5%

中立あるいは公平:30から40%あるいはそれ以上

           ベネビシオン:20から25%

           テレベン:10から15%

           TVes:??%

政府支持:20から25%

           VTV:15から20%

           その他:5%

言い換えれば、反体制派志向と政府志向の比率は視聴者の割合の上で、反体制派に有利な50:25(あるいは2:1)から政府に有利な15:25(あるいは1:1.7)に変化した。民主的にメディアが管理されていない世界の大部分の諸国において、如何なる反体制派もこの様な比率を獲得することによって歓喜するであろう。当然ながら、反体制派が40年間国を支配することに慣れきったベネズエラでは、この様な不利な立場は彼らの「言論の自由」に対する耐えられない侵害なのである。

しかし、そこにはこの比率を反体制派にとって有利に変え得る3つの不確定要素がある。第一に、RCTVを視聴していた人達がより多くグロボビシオンを見るようになり、従ってその視聴者の割合を上げる可能性である。第二に、多くの反体制派支持者らがいま新たな拠点を追い求めているために、ベネビシオンがより反体制の立場を採るようになることも大いにあり得る。週刊紙Quinto Diaの最近のニュース報告によれば、これが起こり得るという最初の徴候が既にある。[5]そして第三に、継続してそれを視聴することを望んでいるのだがケーブルを利用出来ないRCTV愛好者の多くが、もし金銭的な余裕があれば、RCTVを見るためにケーブルに移行する可能性がある。従って、もしグロボビシオンの視聴者の割合が拡大し、もしベネビシオンが反体制派の側に戻った場合、そしてもしRCTVがケーブルで多数の視聴者を引き付けたとしたら、[6]テレビ放送メディアにおける反体制派と親政府派の均衡は少なくとも1:1に容易に揺れ動く可能性がある。

新聞市場あるいはラジオの読者/聴取者の割合に目を向けると、それがはるかに政府よりも反体制派に有利なことが分かる。チャベス支持者の多くは、国で最大の新聞ウルティマス・ノティシアス紙がチャベス派の新聞であると言うのだが、この新聞の内容やコラムニストに注目すると、それが実際には政府の批判と賞賛が等しく見られるベネズエラで最も中立の新聞であることが分かる。二番目と三番目に大きい新聞社(エル・ウニベルサル紙とエル・ナシオナル紙)、及びそれよりも小規模な数々の新聞社の大多数を含めた全ては一致して反対派陣営についている。この状況はラジオ局の間では更に偏っている。ラジオ聴取者のうち親政府派の割合(RNV、YVKE、及び地域共同体ラジオ)は、反体制派志向のラジオ局よりも遥かに小さい割合で成り立っている。

従って、RCTV放送中止によってベネズエラにおける意見の多元主義が減少したと議論することは、ベネズエラのメディア状況の現実を完全に理解しそこなっている。それどころか、RCTVの放送する権利を擁護することは、その国の少数派がメディア状況における特権的な立場を継続する権利を実際には擁護することなのである。

RCTVの権利と責務

RCTV放送中止がメディアの多元主義に対する、従って表現の自由に対する脅威であるのか否かを論じた複数の主張を検討し終えた今、RCTVに賛成・反対する2つの議論に取り掛かることができる。つまり、過去の活動のゆえにRCTVがその免許を失うに値した、というものと、それが新しい公共テレビ局のために席を譲る必要がある、というものである。

政府によって成されてきたRCTVに対するおびただしい非難の数々――2002年クーデター未遂に対するRCTVの関与、2002年から03年の石油産業閉鎖や、国の放送規則違反等――をここでは詳述しない。[7]これらの事実は概して論争の余地がない。むしろ異議が唱えられていることは、これらの活動が放送免許の更新拒否を正当化するのかということである。特に他の放送局、例えばベネビシオンが同一の違反をしたのにもかかわらず、その免許が5月27日に更新された事実を前に。言い換えれば、両社が同一の違反を犯した状況下で、如何なる法的根拠をもってRCTVの免許は更新されず、その一方でベネビシオンの免許は更新されたのか? RCTVによれば政治的差別が唯一の答えであり、その理由は政府に対するRCTVの強硬路線の反対が継続した一方で、ベネビシオンはベネズエラの政治的衝突において中立になったからである。[8]

差別に対する非難、そして決して法廷で立証されていない複数の犯罪のためにRCTVが処罰されたという非難をかわすために、政府はRCTVの免許更新拒否は処罰などでは全くないと論じている。むしろRCTVの免許満了は政府が憲法の規定に従い、公共サービステレビ局に着手するまたとない機会をもたらす。[9]後にジェシー・チャコン〔Jesse Chacón〕通信情報大臣は(ベネビシオンではなく)RCTVが更新拒否のため選ばれた理由は、RCTVのVHF〔超短波を用いた〕チャンネル2が公共サービス放送により適しており、国全域でチャンネル2がより適当に受信されるからである、と説明した。

とはいえ理論上では、ひと度最高裁判所公判が、差別待遇あるいは法の適正手続きが破られたことのどちらかに基づいて、RCTVに有利な裁決を下した場合、RCTVが免許更新〔拒否〕を覆す可能性が未だに存在する。そうなった場合、政府は公聴会を開かなければならなくなるかもしれず、その場で免許更新対象になっている3局(RCTV、ベネビシオン及びVTV)のどれがTVesのために席を譲らなければならないのかに関して客観的な検討がなされる。

どうあろうとも、RCTVと反体制派はまた再び政治状況で失策を犯した。政治の舞台でチャベスに挑戦する代わりに、彼らはもっぱら法的な異議や、国際社会に向けた懇願、そして衝突に集中した。彼らは、チャベスがRCTVの免許を更新しないことが明らかになった直後の今年一月に(拘束力のない)諮問の国民投票を計画することもできた。世論調査は、最大で70%のベネズエラ人がRCTVの放送中止を望んでいないことを示していた。わずか10%の有権者の署名を前に、選挙委員会はその問題に関する国民投票を召集せざるをえなかったであろう。もし世論調査が正確であれば、反体制派はその国民投票に容易に勝利し、それによってチャベスを苦境に陥れ、ことによると彼がRCTVの免許を更新することを余儀なくさせることもできた。反体制派の誰ひとりとしてこの手順を思いつかなかったこともあり得るのだが、それよりもありそうなことは、ベネズエラの民主的な手続きを用いることは、反体制派が独裁政権であるとひっきりなしに公然と非難する政治体制を正当化しかねなく、彼らの最終的な目標はそれを非正当化することであるゆえに、彼らが政治的にではなく、法的・国際的な舞台や街頭でチャベスに挑戦することを望んでいる、ということである。

メディアの多様化及び民主化?

RCTV免許の更新拒否に対する法的な異議にはいくつかの長所――特にベネビシオンと比較してRCTVは差別されているという非難――があり得る一方で、国のメディア状況を多様化させ民主化させるという政府の目標はどうなのであろうか? 政府のメディア政策はメディアの多様化と民主化に貢献するのか?

多様化と民主化に関し、チャベス政権はほぼ間違いなくベネズエラの歴史及び世界の多くの諸国の歴史上のいかなる政府よりも多くを達成してきた。数百もの地域共同体ラジオ局や数十の地域共同体テレビ局を開始させたことは、前例のない方法で普通の市民にメディアを利用する手段を与えている。当然ながら反体制派はそれらの地域共同体メディア媒体を「チャベスに統制された」と呼ぶのだが、その証拠はない。確かにそれらのメディア媒体の多く(決して全てではない)は、チャベス支持が強固な貧しい地域に位置している。とはいえ国・州・地方の諸政府に対する批判はごくありふれた事であり、これらの媒体はより良い統治に貢献することができる市民の責務〔citizen accountability〕の一形態を提供している。

更に、複数の新しい確実に親政府のテレビ媒体の設立はメディア状況の多様化に寄与する。この点で重要なことは、地域共同体の関心事や国全域の問題に焦点を合わせるVive〔Visión Venezuela 〕 TV 、そして国民議会〔AN〕のテレビ・チャンネルであるANTVの設立である。ANTVは(ケーブルを受信する)ベネズエラ人が国民議会での討論を見ることを許し、従って国の政治過程に対する民主的監視を更に増進させている。

ベネズエラの「ラジオとテレビの社会的責任に関する法律 〔Resorte〕」は、反体制派の批判にもかかわらず、メディア状況の多様化に同様に貢献している。一日5時間(午前5時から午前11時の間)が国の独立プロデューサーによって製作されること、及びプロデューサーの誰一人としてその内20%以上に寄与しないことを〔その法〕が命じているという点で。[10]数千の独立プロデューサーが参加するため、国家登録に既に登録を済ませている。

反体制派の批評家らはこの社会的責任法は特定のメッセージ、差別的なもの、暴力を助長するもの、法律違反を促進するもの、あるいは「秘密のメッセージ」を放送することを罰する故に、表現の自由を制限すると述べる。[11]しかしながら、この法律が実施されて以来行われてきた反政府的な放送の全てにもかかわらず、これらの条項に違反したことで、とがめられた放送局はひとつもない。更に、これらの条項の大部分は世界のほぼ全ての国での標準の放送規定である。

最後に、ベネズエラ社会テレビ(TVes、「テ・ベス」と発音され、「あなた自身で見る」〔という意味〕)を設立した政府のごく最近の処置は、このチャンネルが政府から真に独立すれば、ベネズエラの放送メディアの民主化と多様化に向けた措置に実際なり得る。けれども、これまでのところ、〔局の〕理事会は大統領によって任命されてきており、チャンネルの財源は中央政府から出資されている。理事会が大統領から指示を全く受けなかったとしても、それが大統領によって任命される限り、それが独立していると見なすことはできない。とはいえ政府はそれが単に一時的な手続きであり、後には理事会とチャンネルの財源は完全に独立する、と約束した。この問題にもかかわらず、ベネズエラの独立したテレビ・プロデューサーらはこの新しいチャンネルを賞賛してきた。なぜなら、それがほぼ完全に独立した全国向けの番組を放送するからである――ベネズエラ人が全国的なレベルで意見を述べる機会を、他のどのテレビ局が提供するよりも遥かに多く与える重要な措置である。

結論

RCTVの免許を更新しないという決定が、法の適正手続きと法の下の平等な扱いに違反した可能性があるために、未だ法廷で争われている一方で、[12]疑い余地なくこの決定は

  • 放送電波を利用する免許をどの放送局が受け取るのかを決定するのは国家の大権であるという限りにおいて合法であり、
  • ベネズエラのメディア状況の多元主義を維持し、
  • ベネズエラ人にとっての言論の自由の原理を侵害せず、そして
  • 新しいテレビ局TVesを通して、より多くのベネズエラ人に以前よりも利用機会を与えることで、国の放送電波の民主化に寄与する。

それ故に、「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」、「ラテンアメリカ問題に関するワシントン・オフィス〔WOLA〕」、「カーター・センター」や「ジャーナリスト保護委員会〔CPJ〕」といった国際人権団体が政府の決定を非難したことは実に遺憾なことである。これらの団体はベネズエラの反体制派と同様に、この決定が言論の自由に対してぞっとするような影響を与える、と主張している。けれどもこの想定されたぞっとするような影響は事あるごとに政府の批評家によって訴えられてきたのだが、この想定された影響のために放送されなかったニュースや批評という事例を彼らは一度たりとも示したことがない。グロボビシオンは相変わらず政府に対して批判的であり続けており、それは国で最も重要な新聞紙やラジオ番組の数々――ほぼ間違いなく西半球で最も批判的なものに入る――も同様である。ケーブルを通して再開するときRCTVも疑いなく、以前と同様に批判的であり続けるであろう。事実上、自らの放送電波の利用手段を変更するというベネズエラの自主的な決定を非難する諸団体は、企業メディアが放送電波を使用する権利を擁護しているのであり、それはチャベス以前には企業に支配されたメディア複合体を利用する機会を決して持たなかった貧しい大多数にとって損害なのである。理想的には、全ての放送周波は民間ではなく、共同の民主的な管理下に置かれるべきである。しかしながらそれは更なる時間を要し、世界の権力機構による遥かに激しい非難を受けるであろう。

補遺:誰がどのチャンネルを支配し、何を放映しているのか

かなりの数の人々が見るチャンネルのみを考察するとき、それらの最も広く見られている媒体の政治的傾向を検討することは理にかなっている。RCTVは明らかに最も受けがよく、同時に最も反チャベスのテレビ局である/であった。2002年クーデター、2002年・03年の石油産業閉鎖、そして2004年8月の〔チャベス大統領〕罷免国民投票の最中とそれらに至る日々、RCTVはほぼ不断の反チャベス的なニュース報道や広告を放映した。しかしながらそれぞれの期間の間や罷免国民投票の後に、RCTVは自らの中核的な仕事に集中した。ハリウッドとベネズエラ製の娯楽番組(大部分がゲーム番組やメロドラマ)である。その明確に政治的な番組は毎晩のニュース番組や、朝の政治的トークショー(ミゲル・アンヘル・ロドリゲス〔Miguel Angel Rodriguez〕の「La Entrevista」)ひとつに限られていた。

RCTVは明らかにベネズエラの古くからのエリートの一部であり、国の最も裕福な一族のひとつ、フェルプス家によって所有されており、一族は更に石鹸と食糧生産及び建築関連諸企業を所有している。RCTV社長エラディオ・ラレス〔Eladio Lares〕は、旧支配政党の民主行動(AD)党のエンリ・ラモス・アルプ〔Henry Ramos Allup〕書記長と親類関係にある。ラレスは1987年にRCTVの免許が更新されることを確保する上で重要な役割を担った。ハイメ・ルシンチ政権下にあったその当時、RCTV取締役マルセル・グラニエルとルシンチの間の抗争によって、それは免許をすんでの所で失うとこであった。グラニエル彼自身は、フェルプス家の財産の相続人のひとりドロシー・フェルプスとの結婚により、RCTVとその親会社1BCを監督するようになった。[13]

二番目に多く視聴されているチャンネルはベネビシオンであり、それはキューバ系ベネズエラ人のメディア王であるグスタボ・シスネロスが所有している。彼は世界で最も裕福な人物のひとりであり、米国のスペイン語テレビ局ウニビシオン〔Univisión〕を含めた70のメディア媒体を39の諸国で所有している。更に彼は無数の食品物流会社も所有している。グラニエルとシスネロスの間には常に激しい対抗意識があり、それは両者とも大統領になる野心を持っていると言われているゆえである。皮肉にも、両者の各々の一族は婚姻を通じて密接に結びついている。グラニエルの妻ドロシーの姉妹であるパトリシア・フェルプスとシスネロスは結婚しているからである。

ベネビシオン自体は〔RCTV〕以上でないとしても、同程度に2002年4月のクーデター未遂に関与した。それはクーデター陰謀者らとの独占インタビューを行ったからであり、更にチャベス支持者らが丸腰の反体制派デモ隊に発砲したと偽って主張するために後に利用された重大な映像のいくつかを実際に撮影したからである。更にそれはRCTVがそうしたように、幾千もの公共奉仕告知を通してゼネストに参加するよう人々をせき立てることで、石油産業閉鎖にも活発に関与した。

とはいえ、このチャンネルは2004年8月15日のチャベスに対する罷免国民投票2ヶ月前の2004年6月に態度を一変させた。ジミー・カーター元米国大統領に仲介され、チャベスとシスネロスはメディア上の停戦に合意したのである。公式には、両者は「憲法上の手続きを尊重し、ベネズエラ政府とメディアの間の将来の対話を支援する……」ことに同意したことになっている。[14]いくつかの報道によれば、シスネロスが反チャベス宣伝活動を和らげることに同意した本当の理由は、シスネロスをブラジルのルラ大統領に引き合わせるチャベスの仲介の見返りであったという。[15]だがチャベスは公式声明にあるものの他には、如何なる約束もなされなかった、と否定した。それにもかかわらずベネビシオンは、テレビで最も執拗な反チャベス派のナポレオン・ブラボ〔Napoleon Bravo〕による政治トークショー「24」を打ち切り、局のニュース番組はより公平になった。

国民に届くという見地から見て二番目に重要なチャンネルは政府のVTV局であり、それはベネズエラの民主的な時代の大部分で国営チャンネルであり続けた。その番組制作は取締役を任命する経営陣にかなりの部分直接的に管理されている。そうしたものとして、それは多くのヨーロッパ諸国で政府から比較的独立する傾向にあるもののような公共放送チャンネルではない。VTVの番組の大部分はかなり政治的であり、多数の親政府公共サービスの告知や、政府代表らや支持者らが圧倒的に多く出演する政治トークショーを伴う。

テレベンは国の新しいチャンネルのひとつであり、1988年から放送している。大部分の他のチャンネルとは異なり、それはベネズエラのメディア戦争において常にわずかばかり中立であり続けた。例外は朝のトークショーに、ナポレオン・ブラボの次に国で最も執拗な反チャベス派のひとりマルタ・コロミナ〔Marta Colomina〕を起用した時である。とはいえ彼女の番組は2004年罷免国民投票後に放送が中止され、このチャンネルは遥かに中立になり、現在その数々の政治トークショーに反対者と同じだけ多くの政府支持者らを招くよう努めている。局の経済的利権がRCTV、ベネビシオンやグロボビシオンほどには明確になっていない理由は、上記の3局とは異なり、それ程大規模な民間の経済的利益集団と提携していないからである。

最後に、グロボビシオンがあり、それは24時間ニュース兼世論チャンネルとして、その視聴者の規模と潜在的な放送範囲を遥かに越えた政治的重要性を有している。ベネズエラの新しいチャンネルのひとつとして、それはアルベルト・フェデリコ・ラベル〔Alberto Federico Ravell〕(代表)、ギジェルモ・スロアガ〔Guillermo Zuloaga〕及びネルソン・メセルアネ〔Nelson Mezerhane〕によって1994年に設立された。彼らは全員ベネズエラの上流階級に属しており、スロアガはベネズエラの最も裕福な一族のひとつの出自である(彼は更に、反体制派NGO〔非政府組織〕スマテの幹部の一人アナ・コリナ・マチャドと親類関係にある)。グロボビシオンのUHF範囲が限られており、3つの主要都市のみにしか及んでいない一方で、非常に多い地方民放局と提携合意を結んでいるため、放送電波でほとんどの大規模な人口密集地域に及んでいる。政治的にいってグロボビシオンはテレビ局として可能な限り反体制派志向であり、反政府的な意見や分析を1日24時間放送している。

他の親政府系チャンネル、例えば大多数(だが決して全てではない)の地域共同体テレビ局、Vive、テレスールやANTV(国民議会テレビ)の全ては、複数の視聴率調査によれば非常に限られた視聴者数を有している故に、この分析の趣旨のため支障なく退けてよいであろう。同様のことが反体制派志向の地方民放局にも言える。


[1] とはいえ、多くの進歩主義者らは、たとえ過半数によるものであったとしても、極右の人種差別的あるいはファシスト的な見解は放送電波に乗るべきではないと論じるであろう。多くの地域で、いかなる状況下でもその様な見解を放送することは実際に不法である。これがRCTVが免許に値しない、とある者達が述べる理由のひとつである。

[2] より明確には、200以上のアンテナ経由で放送するテレビ局の内わずか3局が国営であり(VTV、Vive、及びAvila TV)、426のラジオ局のわずか2局、そして日刊紙では該当なし。各部類で、民営の媒体は圧倒的に(おそらく80%前後)反体制派支持で、反チャベスである。

[3] 更に、そこには少数の全国的な専門放送局がある。例えば教育チャンネルのVale TV、スポーツチャンネルの Meridiano、音楽チャンネルのPumaや、娯楽チャンネルの La Tele である。

[4] El Nacional紙の2007年5月27日付け記事中の視聴者の割合。割合に幅があるのは異なる研究が僅かに異なる結果を示すからである。

[5] 「これが起きたのは[ベネビジョンの]ジャーナリストや俳優によってである。彼らは〔ベネビシオン所有者グスタボ・ 〕シスネロスのチャンネルの編集方針に苦情を言う決心をし、デモにでたり、他の如何なるチャンネルでも[RCTV従業員との]連帯を表明したりするのみならず、彼ら自身の番組でそうする許可を得た。」J.A. Almenar, “Exclusivas de última pagina,” Quinto Día, June 1-8, 2007.

[6] どれだけの数の世帯がケーブルあるいは衛星テレビを受信しているのかという情報を手にすることは困難である。しかし、存在すると言われている違法のケーブルの数や、 バリオ〔貧困層居住区〕におけるDirecTV のパラボラアンテナ(多くが違法のデコーダーを伴う)の数から判断すると、半数近くのベネズエラの世帯がケーブル又は衛星テレビを受信していると確実に推測できるであろう。

[7] これらのRCTVの活動に関する情報は以下参照:Cartoon Coup D’Etat , Venezuela, RCTV, And Media Freedom: Just The Facts, Please , そして通信情報省によって発行されている the Libro Blanco (スペイン語PDFファイル)

[8] ベネズエラ最高裁判所の5月23日の決定において、免許更新拒否を取り消すことを求めたRCTVの訴訟手続きは却下された一方で、その問題に関する公判は許可された。〔裁判所〕はこの点では異議の余地を残すこともあり得る。裁判所は単に公正でない待遇に対する証拠をRCTVが提出しなかったと述べるにとどまり、公正でない待遇がなかったとは述べなかった。裁決の要約はSupreme Tribunal of Justice Decision of May 23, 2007(スペイン語)又はSupreme Court Allows RCTV Case to Proceed, but Station Must Go off Airを参照せよ。

[9] 5月23日最高裁判所裁決第4項第2号(スペイン語)を参照せよ

[10] ラジオとテレビの社会的責任に関する法律Ley de responsabilidad social en radio y televisión(スペイン語)〕〔Ley〕Resorte)第14条

[11] Ley Resorte、第28条第4号u)からz)

[12] この決定は、ベネズエラの最高裁判所で異議申し立てされているのみならず、米州人権裁判所でも審理される。

[13]  http://www.aporrea.org/medios/a34490.html を参照せよ

[14] 会合の後公表されたカーター・センターの声明による。 http://www.aporrealos.org/actualidad/n17674.html

[15]  “Venezuela’s Murdoch” by Richard Gott, New Left Review, May-June 2006、を参照。該当記事(英文)



posted by Agrotous at 00:59 | TrackBack(2) | ベネズエラ
この記事へのTrackBack URL


チャベスによる民放TV局閉鎖の報道は注意して見る必要がある(情報操作の疑いアリ)
Excerpt: 民放のTV局閉鎖を発表したチャベスが、「報道の自由を奪ったから」という単純な斬り口から、「独裁色を強めた」とか「強権化した」とかいうトーンで、メディア各紙によって一斉にタタかれている。 しかし、過去..
Weblog: にほん民族解放戦線^o^
Tracked: 2007-06-11 13:23

日本のメディアの「チャベスによるTV局閉鎖」報道は、あまりに一方的過ぎるのではないか?
Excerpt: 民放のTV局閉鎖を発表したチャベスが、「報道の自由を奪う」という単純な切口によって、「独裁色を強めた」とか「強権化した」というトーンで、メディア各紙で一斉に報じられている。 しかし、過去http..
Weblog: tanvool
Tracked: 2007-06-11 13:29
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。