2007年05月19日

民主主義に対する米国の戦争
ジョン・ピルジャーとのインタビュー
〔The U.S.’ War on Democracy
Interview with John Pilger:Original Article in English/ZNet原文

ジョン・ピルジャー&パブロ・ナバレッテ〔John Pilger and Pablo Navarrete〕Venezuelanalysis.com;2007年5月2日

〔リンク原文ママ〕

ジョン・ピルジャーは受賞暦のあるジャーナリスト、作家兼ドキュメンタリー映画製作者であり、1958年に彼の母国であるオーストラリアで活動を開始し、その後1960年代にロンドンに移住した。彼は1967年のベトナム戦争以来海外特派員や最前線の戦争報道記者を勤めてきた。彼は西側の諸政府による対外軍事・経済的な危険な企てに対する激しい批評家である。

「それはあまりにも容易なことです」とピルジャーは言う、「西側のジャーナリストが『私達の』利益にとっての有用性という見地から人類を理解し、良い暴君と悪い暴君を、そして価値ある犠牲者と価値なき犠牲者を規定する政府の政策に従い、『私達の』政策が、通例はその逆が真実であるのに、常に慈悲深いと描写することは。ジャーナリストの務めは、まず第一に、彼自身の社会の鏡を凝視することです。」

ピルジャーは更に、ジャーナリストが公的記憶の守護者になるべきであると信じており、頻繁にミラン・クンデラ〔『存在の耐えられない軽さ』で知られるチェコ出身の作家〕を引用する。「権力に対する人間の闘争は、忘却に対する記憶の闘争である」と。

55本以上のテレビドキュメンタリーを生み出したピルジャーの経歴で、初の映画館用のメジャー製作の映画である『The War on Democracy〔民主主義に対する戦争〕』は2007年5月11日に英国で封切られる。ピルジャーは数週間ベネズエラで撮影を行い、『The War on Democracy』にはウゴ・チャベス・ベネズエラ大統領との独占インタビューが含まれている。

PN〔パブロ・ナバレッテ〕:あなたの新作『The War on Democracy』の内容について語ることから始めてくれますか?

JP〔ジョン・ピルジャー〕:私がジョージ・ブッシュの2期目の就任演説を偶然見たとき、彼は「世界に民主主義をもたらす」ことを誓っていました。彼は「民主主義」と「自由」という言葉に21回言及しました。それがとても重要な演説だった理由は、それ以前の(ロナルド・レーガンを除く)大統領の美文長とは異なり、彼が「民主主義」や「自由」という崇高な概念からその真の意味――民衆のための民衆による民衆の統治――を取り除いていた、ということに疑う余地を残さなかったからです。

私はこの隠された真実――米国人及びその他の私達の知性と道徳性を歪曲するために考案されたプロパガンダの見せかけの背後で、米国が長い間民主主義に対する戦争を行ってきた、ということ――を明らかにする映画を作りたかったのです。これを読んでいる多くの人々にとって、このことは知られています。けれども、西洋のその他の人々にとって、米国政府の野心を覆い隠してきたプロパガンダは、ゆるぎないものになってきており、その起源は「善い戦争〔good war〕」、つまり第二次世界大戦の絶え間ない賛美や、冷戦における「勝利」にあります。こうした人々にとって、合衆国の力の「善性」は「私達」を代表しています。ブッシュや彼の陰謀集団、そしてブレア〔英首相〕のおかげで、多数の人々の目から鱗が落ちました。私は『The War on Democracy』がこの覚醒に何か貢献すれば、と思っています。

この映画は帝国のそして人々の力につい語っています。それはベネズエラ、ボリビア、チリと米国で撮影され、更にグアテマラとニカラグアを舞台にしてもいます。それが語るのは、全ての中南米にとって軽蔑的な語句である「米国の裏庭」の物語です。それはまずスペインに対する、そして古くからのエリートを増強したヨーロッパの移民に対する先住民族の闘争をたどります。私達の撮影は主に、その大陸の「目に見えない人々」が暮らすバリオに、丘陵の斜面にある重力を無視する掘っ建て小屋に集中しました。それはとりわけ、とても前向きな物語を語ります。つまり、国家の富を支配するもの達や帝国の支配者に立ち向かうことを約束する諸政府を政権に就かせた大衆社会運動の台頭に関してです。ベネズエラがそれを主導してきており、この映画のハイライトはウゴ・チャベス大統領とのめったにない一対一のインタビューであり、彼自身の発展中の政治意識や歴史感覚(とユーモア)は歴然としています。映画は2002年のチャベスに対するクーデターを調査し、それを現在の情勢に織り込みます。それはまたベネズエラとキューバの間の相違点や、チャベスが初当選して以来の経済・政治的権力の変化を記述します。ボリビアでは、近年の騒然とした過去が、普通の人々の実に顕著な証言を通して語られます。そこには彼らの資源の略奪に対して闘った人たちも含まれます。チリでは、この表向きは現代的で繁栄した「模範的な」民主主義という仮面の裏に目を向け、強大で活発な亡霊を見出します。米国では、この「裏庭」を統轄しているもの達の証言が、もうひとつの裏庭であるイラクを統轄するものたちのそれに呼応します。それは時に同一の人々なのです。クリス・マーティン(この映画の監督)と私は、『The War on Democracy』は時期的にちょうど良いと考えています。私達が望むのは、人々がそれを世界を認識する別の方法として見ることです。民主主義に対するより広範囲な戦争を、またベネズエラからベトナム、パレスチナからグアテマラの普通の人々の普遍的な闘争を理解する比喩として。

〔PN:〕あなたが言うように、中南米は米国の裏庭であると頻繁に言われてきました。世界的な情勢において中南米は米国にとってどれ程重要なのでしょう?

〔JP:〕中南米の戦略的重要性はしばしば退けられます。その理由はそれがとても重要だからです。最近書かれたグレッグ・グランディンの優れた歴史書を読むと(作品上で私は彼にインタビューしています)、その他の地域での自らの帝国の衝動を発展させ、研ぎ澄ませ、報いるために、中南米が米国政府の「実験場〔workshop〕」であり続けてきた、ということを彼は立証しています訳注1。例えば、米国が東南アジアから「撤退」したとき、彼らの「理想」を取り戻すためにその「民主主義の建設者たち」は何処へ行ったのでしょう? 中南米です。その結果は、ニカラグア、エルサルバドルとグアテマラに対する残忍な猛襲や、南米南部地域訳注2における「コンドル作戦」の闇でした。これはロナルド・レーガンの「テロとの戦い」であり、それはもちろん、中東や他の地域でブッシュ・チェイニーの「長い戦争〔long war〕」を現在統轄しているもの達の基本的な訓練になったテロの戦い〔a war of terror〕だったのです。

〔PN:〕ノーム・チョムスキーは、5世紀に亘るヨーロッパによる征服の後、中南米は自らの独立を再主張している、と最近述べました。これに同意しますか?

〔JP:〕ええ、同意します。最も貧しい人たちが自らの人生の手綱を握るのを目の当たりにすることは、裕福なヨーロッパ出身者を慎ましやかな気持ちにさせます。西側の私達が頻繁に「私には何ができるのか?」と訊くようには、彼らは殆ど訊ねることはありません。彼らは何をすればいいのか知っているのです。ボリビアのコチャバンバで、そこの住民たちは彼らの水の管理権を手にし始めるまで彼らの都市をバリケードで塞ぎました。おそらくその大陸で最も貧しい都市であるエルアルトでは、抑圧的な体制が失脚するまで人々は抵抗しました。とはいうものの、完全な独立が勝ち取られたと言っているのではありません。例えばベネズエラの経済は未だに、資本を持つ者に報酬を与え続ける非常に「新自由主義」な経済です。チャベスの下で成された変化――草の根民主主義、保健医療、教育や、人々の生活の完全な底上げ――は並外れたものですが、真の公平さや社会的公正、不正行為からの脱却の達成は未だ遠いのです。ベネズエラの裕福な人たちは、彼らの経済力が減少してきた、と絶えず不満を言います。それは減少してきておらず、経済成長がこれ程高かったことはなく、商況がこれほど良かったことはありません。裕福な者達がもはや手にしていないものは政権です。そして大多数が経済を手にしたとき、真の独立が視界に入ってくるでしょう。それはいかなる場所においても真実です。

〔PN:〕ジョン・ネグロポンテ米国国務副長官は最近、ウゴ・チャベス・ベネズエラ大統領を中南米における「民主主義に対する脅威」と呼びました。これについてのあなたの見解はどのようなものですか?

〔JP:〕これはオーウェルの世界のようです。「戦争は平和」といった風に。中米における米国政府のテロリズムを監督した経歴が、非常に評判の悪いネグロポンテは、ウゴ・チャベスに関してひとつの点で当を得ています。チャベスは「脅威」です――米国政府からの独立が現実に可能であるという、他の者たちに対する模範としての脅威なのです。

〔PN:〕チャベス大統領はベネズエラで「二十一世紀の社会主義」を築き上げることを語ります。どの程度までこの事業は二十世紀における社会主義の経験と異なると考えますか?

〔JP:〕チャベスと過ごした時に私の心を打ったことは、彼が彼自身の発展している政治意識を何と意識せずに示すのだろう、ということでした。教師であると同時に指導者でもある人物を観察することに私は興味をそそられました。彼が地元の人々が集まる学校や、ある水計画に到着するとき、彼は5,6冊の本――オーウェル、チョムスキー、ディケンズ、ヴィクトル・ユゴー等――をわきに抱えています。彼はそれらから引用し始め、聴衆の状況にそれらを結びつけるのです。彼が明確に行っていることは、普通の人々が自らに対する自信を確立するよう促すことです。それと同時に、彼は彼自身の政治的自信や、権力の行使に関する彼自身の理解を確立しています。1998年に政権に就いた時に彼が社会主義者として始めたのではないと思います――そのことは彼の政治的進展をなおさら興味深くさせます。明らかに、彼が常に彼の貧しい出自に敬意を払う改革者であり続けてきた、ということです。疑いなく、現在のベネズエラ経済は社会主義ではありません。おそらくそれは、アトリー労働党政権下〔1945年―1951年〕の英国の社会的経済〔social economy〕のようなものになる途上にあるのでしょう訳注3。彼はおそらく、過去ヨーロッパ人が誇らしげに自らを呼んだもの、社会民主主義者なのでしょう。とはいうものの、このレッテル貼りのゲームはとても無意味です。つまり、彼は独創的で感化します。だからこのボリバル主義の事業が何処へ向かうのかを見守りましょう。永続的な変化のための真の力は草の根においてのみ維持されるのであり、チャベスの強みは古く腐敗した体制に対する代替案を信じることを、庶民に促してきたことにあります。ますます多くの人が、もうわざわざ投票に行く気にもならなくなってる英国にはこの様な精神は全くありません。これは、最低限でも、希望の教訓なのです。

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『The War on Democracy』は英国の映画館で6月15日金曜日に封切される。特別試写会はロンドンで5月11日金曜に行われる。映画はオーストラリアでは2007年9月に封切られる。更に詳しい情報は www.johnpilger.comwww.warondemocracy.net へ。


訳注:

1.ここで言及されているグレッグ・グランディンの著書は『Empire's Workshop: Latin America, the United States, and the Rise of the New Imperialism』(ペーパーバック版近日発売)。ウェブ上でこのタイトルは「帝国の工場:中南米および米国と新帝国主義の台頭」や「帝国のワークショップ:ラテンアメリカ、アメリカ合衆国、そして新帝国主義の勃興」等と訳されている。最近立ち上げられた『デモクラシー・ナウ!日本サイト』の中南米に関する字幕つき動画(「反米すすむラテン・アメリカ」)にグレッグ・グランディンがゲスト出演している。またグランディンの論文「広範囲戦争」は当ブログの翻訳記事を参照のこと。

2.南米南部地域(英語:southern cone、スペイン語:Cono Sur 、サザーン・コーン、円錐形の南の意)。アルゼンチン、チリ、ウルグアイの全地域、及び時にパラグアイと一部のブラジルを含む地域。英語版Wikipediaによれば、地理的にブラジルの国土の多くがSouthern Coneの外に位置するにもかかわらず、ブラジルがそこに完全に含まれるのは20世紀中盤の軍事独裁政権に関して語られる時であるという。

3.   ウィキペディアによればクレメント・アトリーは「第二次世界大戦で疲弊したイギリスの戦後復興を推進、労働党の公約であった基幹産業の国有化と「ゆりかごから墓場まで」と呼ばれる社会保障制度の確立を行い、社会主義政策を矢継ぎ早に実現していった」。

















posted by Agrotous at 22:56 | TrackBack(1) | 中南米全般
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チャベスによる民放TV局閉鎖の報道は注意して見る必要がある(情報操作の疑いアリ)
Excerpt: 民放のTV局閉鎖を発表したチャベスが、「報道の自由を奪う」という単純な切口によって、「独裁色を強めた」とか「強権化した」とかいうトーンで、メディア各紙によって一斉に報じられている。 しかし、過去 h..
Weblog: にほん民族解放戦線^o^
Tracked: 2007-05-30 20:27
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