2007年02月10日

指揮権を握るチャベス
〔Chávez in charge :Original Article in English/ZNet原文

リチャード・ゴット 〔Richard Gott 〕The Guardian ;2007年2月6日

ウゴ・チャベスは急いでいる。そして彼に補足的な権限を与えるというベネズエラ国民議会による今週〔1月31日〕の決定は、具体化の段階にある急進的な変化の前兆である。過去8年間大統領を務めてきたチャベスは、この先に待つ膨大な革命的計画の表面をなではじめたにすぎない。これまで明白な成功がいくつかあった。教育と保健医療に資金供給され、安価な食糧を提供することで、オイル・ダラーの前例のない総額が国の貧しい大多数に転じられた。結果は既に現れている。新しく結集され用心深い民衆が力のあるところを見せつけ始め、多くのレベルで機能している無数の地方議会や臨時委員会を通して政治的意思決定に参加している。半世紀近く前のキューバ革命以来、この様なことは中南米で起きてこなかった。胸が躍るようなことである。

とはいえ、この活気と興奮の全ては新しい諸制度を通してであり、それらは石油歳入によって直に資金供給されており、基本的に監視されていない。やはり、これは進行中の革命である。それと同時に、古い革命以前のベネズエラの多くが依然として存在している。国の伝統的な下部組織には、スペインの植民時代から引き継いだ双頭の疾患である官僚主義と汚職が蔓延している。官僚、といえば全ての省と古くからの国家機関の公務員を意味するのだが、それは何一つ達成されないことを請け負うために存在し、その一方で汚職は彼らの怠惰という権威を円滑にするために存在する。国家について当てはまることは民間産業についても当てはまる。というわけで、今週の「授権法」可決は、チャベスが必須の変化を成し遂げる望みを伴い、立法〔すなわち議会〕を犠牲にして行政により大きい権限を与えることとなる。ゆくゆくは、新しい制度と古くからの官僚主義は合流しなければならない。

これは独裁政権への道なのか、あるいは理にかなった改革への道なのか? 問題の本質は政治学者にとって聞き慣れたものであり、疑いなく中南米にとって新しいことではない。行政と立法の間のどこに均衡は置かれるべきか? それぞれの国がそれぞれの選択をするのであり、革命がその均衡を変更する機会を提供する。

ベネズエラ大統領に大統領命令を出すことを許すことは何も新しいことではない。それは以前の憲法の下においてと同様、1999年の憲法の下に許されている。チャベスのごく最近の先任者らは類似した処置を時折利用した。特に経済・金融問題に対処する時に。中南米担当の米国外交官トーマス・シャノン〔国務次官補〕ですら、珍しく友好的な見解で授権法が何も目新しいことではないことを認めた。「それは憲法上正当なこと(であり)民主主義の如何なる手段と同様に、それは如何にして用いられるかしだいである。」

このように、ここで重要なことは政府の本質の変化なのであり、大統領命令で私有財産を押収し、富者から金を搾り取り、目に付くもの全てを国有化する軽率な企みではない。おそらく計画された改革で最も意義深いことは、財政の条項及び、国中で数千の単位で勃興している「コミュニティー委員会〔communal councils :Consejos Comunales〕」の効力を強固にすることにある訳注1。将来の「社会主義的民主主義」のベネズエラは、カラカスの国民議会よりも、これらの大衆意志の草の根の表出に掛かっている。野党諸政党が愚かにも議会選挙をボイコットして以来、完全に親チャベスの議会には大分限られた有用性しかない。

過去8年間の大部分において、チャベスは他人の行動に対する反応で前進してきた。2002年のクーデター未遂、2003年の石油ストライキ、そして2004年の罷免国民投票の全てが革命的過程の促進に繋がった。現在彼は独自に物事を進めている。私達が知っていることは、彼が経済の管制高地〔commanding heights〕を保持することを望んでいることである。〔それは〕中南米国粋主義者ら及び昔風の社会民主主義者らの伝統的な野心である。それ〔管制高地〕が意味するのは石油やガス及び電力そして電気通信である。私達が知っていることは、地方開発に向けた必要不可欠な第一歩である土地改革を拡張することを彼が望んでいることである。また私達が知っていることは、税徴収を改善し、キューバを除く中南米全域で取り組まれていない弊害である所得格差をどうにかすることを彼が望んでいることである。更に私達が知っていることは、彼が抑制のない資本主義に対して敵意を持っており、協同組合に関して、又民間部門を組織する他の手段に関して友好的な見解を述べてきたことである。

だが現在のところ、ベネズエラの未来はいまだに興味深いほどに不確かで不明瞭であり、それはチャベスが独裁者ではなく、そうなろうと望んでいるという些細な徴候も見せたことが一度もないという単純な理由による。彼が国に課そうと望むような青写真を彼は持っていない。例えば彼は報道の自由の縮小ではなく拡大を望んでおり、RCTVのマルセル・グラニエルのような無責任な報道界の大実業家らの金を稼ぐ力を制限する一方で、生活共同体のラジオやテレビ局、及び新しい文化チャンネルViveのようなより野心的な事業や国際ニュース・チャンネル・テレスールの開発に国家財源を投入してきた訳注2。これらの新しい情報通信網は既に大衆参加の斬新な機会を生み出しており、〔その大衆参加は〕彼の政権の究極の保護手段であり、将来の計画や政策の全ての源なのである。

訳注:

1.この授権法でチャベス大統領が法律を制定することが許されるのは以下の10分野に限られる。

  1. 国家制度の変換。国家制度がより能率的になり、より広範囲の市民参加を招き、より透明になるためにチャベスはそれらを変更することが許される。
  2. 大衆参加。この分野で大統領は、公共監視〔public oversight 〕における市民参加を可能にする規準を発展させることを許される。さらにこの一部は「大衆主権の直接の実践を可能にすること」である。これが正確に意味することはこれまでのところ説明されていない。
  3. 汚職撲滅のための規準の創設。これには更に公務員制度の変革が伴う。
  4. 新たな社会的及び経済的モデルの構築に、現存する立法を採用するための基準の創設。〔それは〕「社会的公正と経済的独立の理想」の下、富の公正な分配と平等を達成するためである。
  5. 財政と税収。財政・銀行・保険・税部門を近代化する規準の発展。
  6. 市民・司法の安全。公共医療・市民安全・刑務所・身分証明・移住・司法制度を更新する規準の発展。
  7. 科学と技術。教育・医療・環境・生物多様性・産業化・生活水準・防衛の需要を満たすための科学と技術の発展のための規準。
  8. 領土整理。国家活動を最も効果的にするために、国内レベルで新しい領土編成を確立する規準。
  9. 安全保障と防衛。安全保障の制度と国家防衛の新しい働きを確立することで、国家の共同責任及び組織された地域共同体を確立する規準。
  10. インフラストラクチャー、輸送機関とサービス。輸送・交通組織網、公共サービス、住宅建設及び電気通信やその他を改善することで、人的及び工業的可能性と現存するインフラストラクチャーを支援する規準。

英文引用元

2.RCTV問題については「チャベスとRCTV」を、Viveについては「ベネズエラの道」を、テレスール〔Telesur 〕についてはレイバーネット東亞日報赤旗ウィキペディア等を参照せよ。



posted by Agrotous at 22:43 | TrackBack(0) | ベネズエラ
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