2007年02月03日

ウゴ・チャベスとRCTV
検閲か、あるいは正当な決定か?
〔Hugo Chávez and RCTV
Censorship or a legitimate decision?:Original Article in English/ZNet原文

サリーム・ラムラニ〔Salim Lamrani〕;2007年1月27日

ウーゴ・チャベス大統領のベネズエラ政府は、2007年5月28日に失効するラディオ・カラカス・テレビシオン(RCTV)視聴覚メディアグループの免許を更新しないことを決定した。全く合法的なこの決定は国際報道界に論争を引き起こした。〔国際報道界〕はベネズエラ反対派の伝達機関になってきており、即座に「検閲」の事例を非難した。[1]

RCTVは民間企業グループであり、その主要な活動は〔ベネズエラ〕ボリバル政府の諸政策を中傷することにある。チャベスは度々、国の主要テレビ局4社(グローボビシオン、テレベン、ベネビシオンとRCTV、これらは約90パーセントの市場を支配し、事実上のメディア独占を手にしている)を、彼の政権に対する「心理戦争」を実行していると、正当な理由によって非難してきた。

これらのメディアは1999年に彼が政権に就いて以来、ベネズエラ大統領に向けた狂信的なほどの敵意を公に示してきた。彼らはこの政府の正当性を疑い、彼が必然的に得ている大衆の支持に疑問を投げかけることを決して止めてこなかった。民間メディアは番組に、憲法秩序の打倒と転覆を公言する寡頭勢力の反対陣営の人々や、反乱に加担する軍人らを絶えず招いている。[2]

RCTVを所有し、約40のラジオ・テレビ局を国中で管理する1BCメディアグループ〔grupo 1BC〕の社長マルセル・グラニエル〔Marcel Granier〕は、局の権利の侵害と称して非難した。「この〔政府の〕姿勢は違法であり、権利を侵害し、言論の自由と人権への攻撃である」と彼は訴えた。それにもかかわらずベネズエラの法律には、放送電波は国家に属し、〔国家〕が免許の権利を有する一方で、基本的施設、資料素材やチャンネルの所在地は私有財産である、と明記されている。[3]

ベネズエラ政府はRCTV社長の非難に直ちに返答した。「マルセル・グラニエルは視聴者の権利を踏みにじることに専念してきている[...]彼が法の支配に縛られないと信じ。それが彼が公共電波テレビ・ネットワークを操業するのに不適任である理由である。」政府によれば、チャンネル2〔RCTV〕は今後、「メディア寡頭勢力」の小集団のみではなく、国民全体の財産になる。[4]

だが、国の最古参のチャンネルの免許を更新しないという決定にベネズエラ政府を至らせたのはRCTVの御しがたい敵対ではない。主な理由はこうである。すなわち、RCTVが2002年4月11日のチャベス大統領に対するクーデーターに関与したことである。「2002年のクーデターにおけるRCTVの決定的役割は記憶に留めなければならない」とウィリアン・ララ通信・情報大臣は強調した。彼は「RCTVのその無責任な態度は変わっていない」と付け加えた。[5]

2002年4月の憲法の崩壊へのRCTVの関与が非常に甚だしかったゆえに、クーデターに反対した局の製作担当者アンドレス・イサーラ〔Andrés Izarra:現テレスル会長〕は、共犯者にならないよう即座に辞任した。国民議会〔AN〕での証言でイサーラは、クーデター当日及びその後の数日、「チャベス、彼の支持者、大臣らや、彼と関係がある者全てに関する如何なる情報も放送するな」という正式の命令をグラニエルから受けたことを明言した。[6]

ウィリアン・ララは政府の決定は「覆すことが出来ない事実〔であり〕その立憲的、法的および規制上の根拠は確実に議論の余地がない」と述べた。如何なる脅威も報道の自由を脅かしていないことを大臣は強調した。「ラジオ・テレビ局、新聞、雑誌、インターネット・ページの総数やこれらの政治的信条の多様性の拡大は、ベネズエラ人が多元的な情報を享受し続けることを最も適切に保証する。」[7]

チャベス大統領は「真剣で責任を果たし、人々に専心した国家から、新規に免許を受領する」条件をRCTVが満たしていないことを力説した。彼によれば、「良きジャーナリズムと表現の自由」はRCTVのようなメディアによって脅かされていた。チャンネルの放送電波は地域共同体メディアのグループに与えられる可能性があり、それはテレビの多様性の民主化を許し、何よりも、チャベスによれば、「人々に権限を与え、未だかつて殆ど発言権を持たなかった者たちに情報伝達の力を与える。」[8]

ベネズエラの人々はこのニュースを肯定的に受け入れた。彼らは民間メディアが、民主的に政権に就き、12の連続した選挙と国民投票で人々の信頼を受けてきた大統領を転覆しようとしたことを決して許していない。大多数の人々は、2002年4月14日のチャベスの政権復帰を報道する代わりに、映画や漫画を途絶えることなく放映した民間テレビ局の態度を満場一致で非難している。

情報伝達利用の委員会〔Comité de Usuarios de Medios de Comunicación〕(Cumeco)のバルバラ・ベクシ〔Bárbara Vecci 〕によれば、この放送電波は「独立したジャーナリストと全国製作者の諸協同組合に開かれなければならない。」彼女にとって、民間メディア「は表現の自由を抑圧している。」国の市民が広く共有する意見である。[9]

ワシントンからの激しい圧力の後、米州機構(OAS)はメディア産業の側に付いた。〔OAS〕はホセ・ミゲル・インスルサ事務総長を通してベネズエラ政府の決定を批判し、従ってベネズエラの国内問題に干渉し、OAS憲章第2条に違反した訳注1。「情報チャンネルを閉鎖する行政手段の採用は、表現の自由に対するある種の検閲という印象を与える」と公式声明は述べた。[10]

ベネズエラ外務大臣はインスルサ事務総長の発言を糾弾し、チャベス大統領に抵抗する国内外の勢力の要求と圧力に彼が屈したことを非難した。彼はインスルサが政府の適法の決断により敬意を表するよう要求し、RCTV問題の現実を歪曲したことで事務総長を叱責した。

「事務総長は米州機構の加盟国を不適切に批判した。適切な権利を行使し、表現の自由や、正確に告げられる人々の権利及び民主主義それ自体の真の敵の恐喝にへつらうのを拒んだとして。その〔敵の〕中に含まれるのは、その企業の所有者であり、彼は合法の政府を転覆する無駄な努力を助長し、且つ人々を憎悪や暴力へと扇動し、経済的サボタージュを助長した」と大臣は述べた。

「ベネズエラの政府の様な合法で民主的な政府を擁護する代わりに、ジャーナリズムの倫理を破り、ベネズエラの民主的な制度に絶えず挑むことによって社会的務めに明らかに背を向けたマスコミによる根拠のない告発をOAS事務総長が繰り返した、ということは懸念を催す。」[11]

チャベス大統領も干渉を非難した。「今になって彼は、ベネズエラ政府がRCTVの免許を更新しないという決定を施行するべきではない、と言う」と彼はインスルサに言及して述べた。チャベスはOASの間接的な脅しを嘆いた。その中には、決定は「政治的な影響」をもたらすであろうという警告が含まれる。

「このレベルに達する事務総長は尊厳をもって辞職するべきである...[ダニエル・オルテガ大統領の就任式が開かれる]マナグアで彼と会えることを望んでいる。全ての大統領と世界を前に騒擾〔そうじょう〕取締法〔Riot Act〕を彼に読んで聞かせよう」とチャベスは述べ、ベネズエラが自由な主権国家であることを思い起こさせた。[12]

反対派に繋がっている教会の聖職者上層部の勢力も同様に政府の決定を非難した。チャベスはその非難にも返答した。「国家は教会を尊重する。教会も国家を尊重すべきである。ベネズエラの司教らとの対決の日々に戻ることを私は望まないが、それは私にかかっているではない。それはベネズエラの司教らにかかっている。」[13]

大統領はその機会を利用し教会の矛盾を強調した。「2002年4月のクーデターを非難することが出来ないこの教会上層部をどの様にして私達は理解することができるのであろうか? 
」と彼は訊ねた。「彼らはそれを決して非難せず、これらのチャンネルがしたことを非難もしない。彼らはそれを決して非難していない。クーデターを非難するベネズエラの司教を私は一人も見たことがない。」[14]

〔ベネズエラ〕ボリバル政府が報道の自由を踏みにじるという非難は、ベネズエラの現実と国の民間メディアが担う有害な役割を知っている者に笑いを誘う。チャベスが政権に就いて以来、ただひとつのチャンネルが政治的理由によって一時的に閉鎖された。それはチャンネル8〔国営テレビ〕であり、2002年4月11から13日の有名な47時間のクーデターに責任があるファシスト軍事政府によって閉鎖された。その閉鎖は当時熱心に賞賛された――RCTVによって。

2006年大統領選挙の最中、チャベスは民間チャンネルの免許更新を国民投票に掛けるという考えを発表した。この民主的な計画が賞賛される代わりに、提案は営利メディア所有者ら、国際報道界やワシントンを不安がらせたようである。ひょっとして彼らは大衆の意志を恐れているのであろうか? その名に値する如何なる民主主義においても、国民は主権者ではないのか?

真の問題は、事実を考慮すると、その非難には拠り所がないゆえに、RCTV論争が検閲の事例である(あるいはない)のかと疑問に付すことではない。全ての国際メディアの一面を飾るべきであった問いはこうである。すなわち、チャベス大統領に対するクーデターに関与したグロボビシオン、テレベン、ベネビシオンとRCTVが未だに反乱参画者らの管理下にある状況はどの様にしたら可能なのか? 例えばフランスのテレビ局TF1、Canal+とM6がジャック・シラク大統領の打倒を公然と支持したとしたら、彼らに何が起こるであろうか?

注釈

[1] Simón Romero, «A debate over censorship begins in Venezuela,» El Nuevo Herald/New York Times, Jan. 4, 2007.

[2] Ibid.

[3] Fabiola Sánchez, «Government is asked to heed OAS plea in issue over [TV] channel,» Associated Press, Jan. 5, 2007.

[4] Bolivarian News Agency, «Minister Lara says Granier stomps on the rights of users,» Jan. 6, 2007.

[5] Simón Romero, op. cit.

[6] Eva Golinger, The Chávez Code (Havana: Social Sciences Publishing House, 2005), pg. 125.

[7] Bolivarian News Agency, «Decision to not renew RCTV's concession is irreversible,» Jan. 2, 2007.

[8] Associated Press, «President Chávez rules out renewing TV channel's concession,» Jan. 4, 2007.

[9] Bolivarian News Agency, «Users propose public television for the air space occupied by RCTV,» Jan. 4, 2007.

[10] Chris Kraul, «Chavez Denounced for Canceling TV License,» Los Angeles Times, Jan. 6, 2007.

[11] Bolivarian News Agency, «Government urged Insulza to retract his words for falsifying reality in the RCTV affair,» Jan. 6, 2007.

[12] Bolivarian News Agency, «Chávez announced he will denounce to the world Insulza's interference,» Jan. 8, 2007.

[13] Associated Press, «Chávez asks Venezuelan Church to respect the State,» Jan. 10, 2007.

[14] Bolivarian News Agency, «Chávez invited Catholic Church officials to stand in his shoes,» Jan. 8, 2007.

フランス人のサリーム・ラムラニはパリのドゥニ・ディドロ大学の米・キューバ関係専門の研究員。彼はレベリオン誌の定期的な寄稿者。この記事はProgreso Weekly によって英訳された。


訳注

1.OAS憲章第2条(b)To promote and consolidate representative democracy, with due respect for the principle of nonintervention(不干渉の原則を十分に尊重しつつ、代議制民主主義を促進し且つ強化すること)。日本語訳は「米州機構憲章 1993年マナグア議定書」(PDFファイル)、p85(ファイル・ページ5)より。



posted by Agrotous at 22:55 | TrackBack(0) | ベネズエラ
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