2007年01月02日

中南米;もうひとつの世界は可能。その兆しは見える、21世紀に
〔Latin America: Another World Possible, Over the Horizon, in the 21st Century:Original Article in English/ZNet原文

クリス・スパノス〔Chris Spannos〕;2006年11月19日

[当記事の別バージョンは、〔ワシントンポスト・ウェブ版の1コーナー〕「Post Global」のためにWashington Post.comの編集者らによって要請された。先日のニカラグアのオルテガ勝利に関する、グレッグ・グランディン、セルヒオ・ラミレスやマーク・ウェイスブロートによる記事と共に次の数週間に亘って掲載される。これはZNetのために改訂された。]

中南米では何が起きているのか? 先週〔2006年11月第2週〕のニカラグアでのダニエル・オルテガの勝利は、変革に対する願望と期待の、大衆のもう一つの表明であったのか? 南米において左傾化の潮流は前進しているのか? 残りの世界にとっての帰結は如何なるものなのか? スペインの植民地主義の長い歴史や、自由市場政策によって課せられた数十年の貧困の後、中南米の人々は新自由主義の重圧を断ち切ろうと努力している。

ワシントンが反対派団体を支援し、辛辣なプロパガンダ攻勢を仕掛け、オルテガの立候補に苦々しく反対したとはいえ、オルテガの勝利のみが懸念の主な理由ではありそうにない。彼が更に右派にあるいは左派に揺れるのかについて、彼は明確でない合図を出してきた。彼は国を荒廃させた「野蛮な資本主義」を酷評すると同時に、財産権を尊重し、新たに施行された米国との中米自由貿易協定〔CAFTA〕を支持し、国際通貨基金〔IMF〕と新しい経済的な一括協定を協議すると約束して、国の企業家指導者らの機嫌を取ってきた。彼がニカラグア人の貧困と福利に誠実に取り組む方向へ国を進めるのか、あるいは国を更に新自由主義の処方箋に委ねるのかを見定めるには時期尚早である。

ワシントンにとってより由々しいのは、この地域における変化する潮流を示す周囲の勢力である。ワシントンの悩みの種であるベネズエラのチャベスは、12月3日に大統領再選を目指している。他にも中道左派の政府や大衆社会運動や先住民運動があり、エクアドルの11月26日の決選投票もあり、ラファエル・コレアが当選した場合、大陸の左翼への更なる前進となる。オルテガの当選は単に、北と南の間のみならず、南それ自体の内部の不平等に対する中南米大衆の不満及び、それをどうにかするべく活動する意識と願望が存在する、という更なる証明なのである。

中南米の地域的統一と統合は、ワシントンから独立した発展の道に目標を向けている。更なる懸念の理由は、似たような独立の動きがアジアでも起きており、その一方でイランや、イラクのシーア派勢力、シリア、ヒズボラや、パレスチナのハマスで構成された中東の反米国同盟が同様にある。その結果、第三の脅威は、米国の覇権及び、共和党か民主党かに関わらない、その帝国主義の計画から遠ざかる多極化世界に向けた動きである。

オルテガの勝利を受け、エリアス・アントニオ・サカ(エルサルバドル)、ウゴ・チャベス(ベネズエラ)、エボ・モラレス(ボリビア)とオスカル・アリアス(コスタリカ)諸大統領が、地域統合に貢献するべく彼と共に働くと述べ、オルテガを歓迎した。チャベスは、オルテガの勝利は、中南米で形作られている統合の枢軸の一部であり、「もう一つの世界は可能であり、地平線の向こうに見えてきた」とまで述べた。その声明は、米国のエリートの頭上を越えて、中南米と世界の人々に訴える狙いがあった。それは、改革された世界的な経済構造を伴い、また米国が国際法に従わなければならない単なる多極化世界ではなく、「もうひとつの世界」なのである。チャベスは彼が勝利できることを信じている故に希望を喚起することを目指している。

彼の勝利直後、オルテガとの電話会談をベネズエラの国営テレビで放送し、チャベスは「私達は貴方のことを誇りに思う」そして「未来を、21世紀の社会主義を築くべく、サンディニスタ革命とボリバル革命は、未だかつてない程に結びついた」と述べた。オルテガが何処へ向かうかは分からないとはいえ、21世紀に社会主義を構築するというチャベスの談話は真剣である。

ボリバル主義の事業は、米国からの独立を獲得するべく中南米に地域勢力を生み出すというものである。チャベス自身、この決意を率直に述べる。更に、「21世紀の社会主義」を追求しているとはいえ、チャベスは彼がマルクス主義者ではないと述べてきた。しかし、彼は同様に、資本主義は本質的に搾取的であり、人間的にすることはできない、とも述べてきた。60年代と70年代の新左翼や多大陸の運動を逃した30歳〔の筆者〕にとって、21世紀に資本主義を越えた(又、人種差別、性差別、企業支配や差し迫る経済崩壊を越えた)「もうひとつの世界」を心に描くことは、希望、想像力や願望をかき立てる。いずれにしても、ひとつの大陸全域が奮起するのを目撃することは、可能性という刺激を喚起する――この世紀に、私の一生の内に。そして私は望みを持っている故に、この可能性を真剣に精査するべきであると思う。

資本主義に対する21世紀の代替案としてチャベスは何を計画しているのか? 20世紀の集権的計画の恐ろしい失敗よりも上手く彼は取り組んでいるのであろうか? もしそうであれば、如何にして? 彼は我々が知らない経済モデルや試みを知っているのであろうか? もしそうであれば、それらは如何なるものなのか? 彼は単に、照明が消えた大邸宅に入った人のように、前進する道をゆっくりと慎重に探っているのであろうか? しかしチャベス政権はゆっくりと進んではいない。彼らは急進的な構造変革を成し、残りのベネズエラよりも2歩先を行っているように思われる。実際チャベス政権は、残りの大陸よりも早く進歩しているようである。彼らが向かっている場所や、ベネズエラ内及び残りの中南米における今日の彼の統率が将来国とその地域に如何なる影響を及ぼすのか、という明確な実態をチャベスは把握しているのであろうか?

チャベスはとても聡明な人のようであり、同様に良い指導者のようだ。前世紀の教訓と失敗に留意する上で、20世紀で一番長く行われた集権的計画経済の試みである元ソビエト連邦の指導者であり、グラスノスチとペレストロイカを始めた責任があるミハイル・ゴルバチョフが、ある「多作な米国経済学者」に報いる声明に署名したことに、チャベスは関心を持つかもしれない。〔その経済学者〕は、「経済分野で利己主義の競争を平等主義の概念に取って代えることを目指した、想像力に富み、革新的な経済理論の創始者であり」〔その論理は〕「参加型経済として知られる急進的な経済モデルであり、それは資本主義及び、かつて現存社会主義のソビエト式モデルであったものの両方に対する対案を構成する。」

その書状は更に続けた...

「参加型経済学においては、連帯が競争に取って代わり、労働の時間や熱心さや重責に対する報酬が、資産、権力や生産量に対する報酬に取って代わる。更に、自己管理の方式が権威主義的な意思決定に取って代わり、参加型計画〔participatory planning 〕と呼ばれる新しい配分の方法論が市場に取って代わる。

経済的非能率を引き起こす民間企業の生産方式を徹底的に改める彼の計画を達成するために、マイケル・アルバートは、参加型の自己管理の原則に則った評議会に携わる労働者と消費者に期待している。」

ピオ・マンズ・センター訳注1は、この米国人経済学者の急進的で新しい理論が、現在の社会経済上の思考に対する最も強力で十分に明確な挑戦を形成していること及び、アルバートの傑出した功績が、実現可能な提案として経済制度に新しい主要な道を示した事実にあることを認知する。」

署名
ミハイル・ゴルバチョフ、委員長
リミニ〔イタリア〕、2004年10月17日

資本主義と集権的計画に対する、「実現可能な提案」としての代替案を見出したというゴルバチョフの主張を、資本主義に対する21世紀の代替案の構築を望む者なら誰もが真剣に考察するべきである。ソビエト圏の失敗に終わった改革に続き、マイケル・アルバートとロビン・ハーネルは同時に2冊の相補的な文書を発表した。彼らの考えの包括的で詳細な大要である『Looking Forward: Participatory Economics for the Twenty First Century 〔先を見つめて:21世紀の参加型経済〕』(South End Press、1991年 )及び、次いで、同一の考えの技術的な、経済学者向けの詳述である『The Political Economy of Participatory Economics 〔参加型経済の政治経済学〕』(Princeton University Press、1991年)である。この2冊の本は、「資本主義の勝利」の宣言および、「歴史の終焉」に達したという断定に対する異議申し立てをした。彼らは更に、「他に選択の余地はない〔there is no alternative 〕」(TINA)というサッチャー主義の観念的な主張に対抗した。これらの著書は、21世紀に目を向けた参加型経済の理想を推進した。それ以来、参加型経済の理想に関する書籍が著されてきた。アルバートによる『ParEcon: Life After Capitalism 〔参加型経済:資本主義後の生活〕』(Verso, 2003年 )、ハーネルによる『Economic Justice & Democracy 〔経済的公正と民主主義〕』(Routledge 、2005年)や、同様にアルバートによる『Realizing Hope 〔希望の実現〕』(Zed Books 、2006年)である訳注2。この最後の本は、参加型経済モデルから引き出された洞察を、人生の主要な分野の全てに拡張し、未来の良き社会がどの様なものになり得るかについて光を投げかけている。15年以上に亘り、アルバートとハーネルは参加型経済モデルの基盤を慎重に深めてきた。ここで、手短な解説が適切であろう。

参加型経済を構成するのは、労働者と消費者の評議会の連合体や、社会的に所有された生産的資産や、様々な促進委員会によって調整された一連の規準と手続きに従い、どの商品やサービスが生産されるのかを決定する参加型計画である。誰もが、好ましい仕事と、権利を与える仕事の両方の平等な配分のための均衡のとれた仕事の複合体で働き、努力と犠牲に従って報酬を得る。

労働者評議会の労働者らは、彼らが何を生産したいのか、どれだけ生産したいのか、また必要な資源および、彼らが選択した生産の人的な影響を提案する。消費者は、彼らが何を消費したいのか、どれだけ消費したいのか、そして彼らが選択した消費の人的な影響を提案する。促進委員会を通じて、労働者と消費者は来る年に実行される選ばれた計画を協議する。

参加型計画は、社会労働の負担と利益を公正に割り当てる実行可能で望ましい選択である。それには彼らが影響を受ける度合いに比例した、参加者の意思決定の労働力が伴う。人的および天然の資源は、多様な結果をもたらすよう能率的に利用される。

参加型経済が提供するものは、理想や希望、将来我々が追求するものによって、現在の我々の社会運動を評価する方法である。その欠点を指摘・強調し、その利点を賞賛しながら、公正に精査されるべきである。チャベスと、ベネズエラ及び中南米の人々は、彼らの地域において希望と実践的な運動の進歩を提供すると同時に、米国の覇権に挑戦している。この動きに希望を見出す者誰もが同様に、「21世紀の社会主義」の構築の呼びかけを吟味すべきである。20世紀の集権的計画の失敗によって一度痛みつけられた人々は、再び痛みつけられるのを望みはせず、その代わりに勝利を望むべきである。精査と希望が勝利には必要である――そして、我々は勝利できる。もうひとつの世界は可能である。その兆しは見える。この世紀に。

クリス・スパノスはZNetのスタッフであり、AK Pressから近々出版される2冊の本、『Parecon & the Good Society〔参加型経済と良き社会〕 』と『Hope, Reason & Revolution〔希望、理由、革命〕 』の編集者。彼のEメールアドレスはchris.spannos@zmag.org


訳注:

1.ピオ・マンズ・センター〔Pio Manzù Centre〕は、そのウェブサイトによれば、「地政学及び環境構造に関する研究のための国際センターであり、それ故に国際連合の顧問的地位を享受している。センターは60年代後半以来、マクロ経済学や、社会・政治的両立可能性の傾向と国際レベルの分野において現れた様々な共力作用に関する研究や養成活動の調整と促進のためのネットワークとして、運営してきた。」ゴルバチョフはピオ・マンズ・センターの科学委員会の委員長を務めている。

2.以上原書へのリンクは訳者による


関連日本語記事:

ユートピアを論じ合う国際セミナーにて(ル・モンド・ディプロマティーク)

ベネズエラの道 (マイケル・アルバート )

参与型経済(Wikipedia)

posted by Agrotous at 23:40 | TrackBack(0) | 中南米全般
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