2006年11月05日

中南米:右翼の圧制到来
〔Latin America: the heavy hand of the Right arrives:Original Article in English/ZNet原文

ヘナーロ・カロテヌート〔Gennaro Carotenuto〕Rebelión;2006年10月28日

人々の失踪、偽の書類、動き始めた秘密諜報機関、選挙不正、国連での戦い、ボリビアにおける一触即発のクーデター、闘争者や政治指導者らの生命に対する脅迫。中南米の春〔Latin American Spring:primavera latinoamericana 〕にとって、反動に対抗する力量を示すときである。

少数以上の者にって、中南米の春はパーティーのようであった。いくつもの社会運動があまりにも容易に政権へと変わったので、なぜそれが以前にも起こらなかったのか人は不思議に思った。アルゼンチンのネストル・キルチネルのような、はからずも選出された大統領らは、合意をかき集め、免責を一掃する手腕を見せた。ブラジルの土地なし農民の様な急進的な諸運動――先代の犠牲者の子供達――は慎重に政治に関与している。

2002年4月11日に、通常の構成要素の全てを伴い計画されたクーデターですら、ボリバル革命の参加型民主主義によって一掃された。2005年末の〔アルゼンチンの〕マルデルプラタにおいて、大衆運動や新しい種類の指導者らは、米州自由貿易地域〔FTAA〕とジョージ・ブッシュに対して、前代未聞の「No!」を叫んだ。アルゼンチンとブラジルは、IMFに〔負債を〕清算した。彼らはこれ以上偏った勧告を望んでいない。地域統合はようやく、社会的包摂〔social inclusion〕を最優先する大陸を構想している。

着実に有意義になってきている抗争において、世代を越えた右翼は、その特権と免責に打撃を受けてきた。しかし、重要な選挙の年2006年は、新たな汚い戦争という形態での系統立った反動の徴候を示している。新たなコンドル作戦訳注1を語ることはできないし、おそらくそれは現在不可能であろうが、不吉な徴候はおびただしく在り、修正されてはいるが、にもかかわらず同質であり、過小評価してはならない。

最も深刻な事例はボリビアのそれである。軍の武力や他国の干渉――ペトロブラス〔ブラジル国営石油公社〕の「友人達」及び、英国石油〔BP〕のエージェントとしてボリビアへのボイコットを公然と持ち出すトニー・ブレアのような敵たちのそれ――の風評は、モラレス大統領が政略する余地を制限する。とはいえ、今週アルゼンチンと合意に達したガス譲渡の協定が緊張状態を緩和させた。ボリビアの情勢が反転するのでは、と人を恐れさせるのは、政府の――鉱業政策におけるそれのような――失策に限らない。

8ヶ月間エボ・モラレスの内務副大臣を務めるラファエル・プエンテ〔Rafael Puente〕はこう記した。「大統領の命そのものが敵の手にある。ボリビアは実のところ、それ自体の諜報を持っておらず、その一方でチリから始まる多数の諜報機関が活動している。大統領は何時にも、狙撃手により暗殺される、あるいは誰かより身近な者による背信によって投獄される可能性がある。彼の命は随時危険にさらされている。我々はその様な件について、ベネズエラとキューバの諜報機関から絶え間ない報告を受けているのだが、彼らは我々の欠陥を埋め合わせることはできない。」ボリビアのドラマは、脆い国家がそれ自体よりも脆くない政府を生み出すことが殆どできない、というものである。彼の懸念に気を取られたラファエル・プエンテはこう締めくくった。「我々の春は非常に、はかないのかもしれない」

ボリビアからアルゼンチンまで、状況は異なっている。だが、この新たな時代の最初の失踪者、ナンバー30,001訳注2の捜索は一ヶ月が経過した。彼はホルヘ・ロペス、77歳。サディズム、倒錯、そして特に妊娠した女性の拷問や、火あぶりや、束縛された人を海へと投下する残虐性の生きた象徴であるミゲル・エチェコラツ〔Miguel Etchecolatz:アルゼンチン国家警察元幹部〕に無期懲役を言い渡した「大量虐殺に対する」裁判の重要な証人である。ロペスの誘拐によって、アルゼンチンの何万人の人々や、進行中の数百の裁判の全ての証人らは、彼らの人生が30年前に引き戻された。背後に注意を払い、自宅へ帰る道順を変更し、恐れを抱く生活に。

ロペスの誘拐が重要な理由は、それがエチェコラツや彼の様な人物による自暴自棄の復讐ではなく、民主主義の中に存続している平行国家による、キルチネル大統領の人権政策に対する露骨な挑戦だからである。2千人以上の拷問者らや、彼らの親類や政治経済上のパトロンらは、裁判の中止を求めブエノス・アイレスを行進した。議員兼作家のミゲル・ボナッソ〔Miguel Bonasso〕はこう語る。「もっともらしく、また憂慮すべき身体的脅迫は、キルチネル大統領に対してさえ行われてきた。このことは、マフィアやファシスト諸組織の国家がアルゼンチンに存在し、未だに活動しており、如何なることにも準備が出来ていることを示している。」同様に、ためらいがちなタバレ・バスケスのウルグアイにおいても、似たような徴候は顕著である。

ブラジルでは、ルラ・ダシルバが大統領に再選される。彼は、オプス・デイ訳注3の候補で経済上の極右、ことによるとそれが理由で欧州メディアが社会民主主義者であると力説するジェラルド・アルキミンに対抗する選挙で勝利する見通しである。しかし、初回選挙での勝利にあと一歩の49.85パーセントのルラの得票率に反し、また彼よりもより左派の候補によって取られた8%を伴い、ある調査書類は大統領のPT政党〔労働者党〕が決定的に重要であった、と誤って述べた。それが常軌を逸した外国諜報の活動――最もあり得るのがボリビアのそれ――であるという、あらゆる徴候を伴い、またルラのイメージを損なわせるマスメディア編成の共謀を伴い、ある物は本物ある物は操作された4年間のスキャンダルによって、彼自身弱体化されるのではなく逆説的に強固になった。

中南米における進歩的な動向に、細部にわたり欠くことのできない影響を与えるルラを現在打倒することが出来ない右翼には、彼の弱点を曝け出し、彼がより信頼できないように見せる力がある。もはや国家構造を掌握しておらず、従って大規模な不正を働くことが出来ないとはいえ、彼らは今もなお、旧体制の支配権にある国家機構の稀な利用を用い、起こる必要のなかった選挙を彼に余儀なくさせることに成功した。

ルラの立場よりも堅固なのはウゴ・チャベスのそれである。とはいえ、国連安全保障理事会の中南米議席を巡る戦いが最終的に展開する中、グアテマラ――法の支配を基にせず、20万以上の生命が犠牲となった大量殺戮の張本人らが全く罰せられずに暮らす国家――の立候補が新植民地主義の戦略であることは明らかである。これとともに、ジョン・ボルトン米国国連大使はこう主張している。「安全保障理事会でどの国が中南米を代表するかを決めるのは我々である」と。従来どおりである。

グアテマラ(米国と読む)がベネズエラに勝とうが負けようが、多極化世界を目指す理由は明白となり、その全てがチャベスの側にある。それが示しているのは、全中南米に対する米国の軽蔑と、最も重要な抗争――ウゴ・チャベスの大統領職を再承認する12月3日のベネズエラ選挙――で手に入る如何なる武器も利用する〔米国の〕心構えである。ベネズエラの文化大臣フランシスコ・セスト〔Francisco Sesto 〕は打ち明ける。「全ての予測と民間の世論調査によると、反対派連合の候補者マヌエル・ロサレスは、チャベスがほぼ確実に得るであろう票の半分を獲得するであろう。」ロサレスは投票の3分の1、ことによるとそれよりも1ポイント多く獲得する可能性があるのだが、それでもなお彼は敗北する。

しかし、2002年4月11日にクーデターを共に起こしたベネズエラの右翼および、米国とIMFを頂点とした勢力にとって、敗北する候補はどの様な役に立つのであろうか? 中南米では、それは多くの理由で役に立つ。例えば、ルイス・ドナルド・コロシオはメキシコのPRI〔制度的革命党〕の敗北する候補として、大いに役に立った。〔彼は〕1994年にティフアナで彼自身の仲間に殺害され、最終的に左翼候補のクアウテモク・カルデナス〔Cuauhtemoc Cardenas〕の政権就任を回避することを成し遂げたエルネスト・セディージョに道を譲った。ロサレスが生きたままチャベスに対する確実な敗北者となるのではなく、ロサレスが――彼に勝利を与える偽りの世論調査の極端な熱意と共に――暗殺される可能性を複数の機密情報源が、ここ数週間警告してきている。チャベスを弱体化させ、彼を確実に世界ののけ者に結びつける世界的なキャンペーンが開始され、コロンビアの助力と共にベネズエラのバルカン化への道を切り開く理想的な計略である。

メキシコの新ファランヘ〔ネオファシズムとほぼ同意〕であるフェリペ・カルデロン(コカコーラ幹部ビセンテ・フォックスとは完全に異なる類)に規範的な教訓がある。つまり、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール及び、おそらくペルーのオジャンタ・ウマラやエクアドルのラファエル・コレアが大統領に成るのを阻止した、右翼の実行された〔選挙〕不正を回避するには、国家機構の統制が不可欠である、ということである。しかしメキシコでは、国家機構は変化中の存在である。キエフのオレンジ色っぽい抗議――同一ではあるが正反対の状況――には大いに嘆いた国際報道によって精密に黙殺された数百万人のメキシコ人による2ヶ月の抗議の重要な瞬間を日刊紙ラ・ホルナダの編集長カルメン・リラは詳述する。「ビセンテ・フォックスが弾圧を加えるよう軍に命令した時――それはもう一つのトラテロルコになるところであった――、軍の最高司令部が大統領に命令を文書に記すよう要求したことは証明されている。彼がそうしなかったとき、歴史上初めて軍は従うことを拒否した。」

それは既にベネズエラの2002年のクーデターの時に起きていた。軍は分裂し憲法を擁護した。新自由主義の冬を通じ、彼らの社会的背景によって大いに変化した、大陸の他の軍隊の忠誠心の複数の徴候も現れている。反動は中南米に近づいており、厳しくなるであろう。だが、ことによると中南米の春は依然として、晩冬が凍てつかせ得るよりも多くの花々を咲かせているのかもしれない。


言語的多様性のための翻訳者のネットワークであるTlaxcala(www.tlaxcala.es )の一員のトニ・ソロによって、スペイン語から英語へ翻訳された。この翻訳はコピーレフト〔Copyleft〕

〔英文〕翻訳者による注釈

1.http://www.gennarocarotenuto.it〔注釈対象箇所不明〕

2.トラテロルコ――1968年〔10月2日、メキシコ・オリンピック直前に〕、抗議する学生に対する軍による武装襲撃の現場。数百人の学生を死亡させた。


訳注:

1.コンドル作戦――英語版wikipediaによれば「1950年代から1980年代に中南米の南部地域〔サザンコーンSouthern Cone:アルゼンチン、チリ、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジルを含む地域〕で、独裁的な右翼諸政府によって実行された、おびただしい暗殺に頼った対テロリズム及び諜報作戦。系統立った対テロリズムは、その地域で流布したマルクス主義の影響と概念を妨げること、及び諸政府に対する活動中あるいは潜在的な危険分子を統制することの両方を目指した。この組織された対テロリズムは、関与した諸政府による隠蔽のために、未知数の死者を生じさせた。」(訳者による訳)

2.ナンバー30,001(el n. 30.001)――1976年から1983年の間にアルゼンチンで拷問され失踪した行方不明者の数が3万人と言われるため、その次に来る犠牲者であるホルヘ・ロペスに言及した数字。彼は2006年9月18日以来失踪中(英文参照元)。また、ある人権団体所在地の近辺では、「ホルヘ・ロペス、失踪者30,001:ナンバー30,002は誰に?〔Jorge López: desaparecido 30.001. ¿Quién será el 30.002 〕」と書かれた作者不明のビラが配られたという(英文参照元)。

3.オプス・デイ(Opus Dei)――キリスト教のローマ・カトリック教会の国際的組織。「ラテンアメリカにおける活動が活発で、各国に支部があり、特に「解放の神学」派が勢いを増して以来、カトリック保守派の牙城として、政治的にもさまざまな影響力を行使」してきた(参照元)。

posted by Agrotous at 23:33 | TrackBack(0) | 中南米全般
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