2006年10月06日

米州ボリバル代替構想(ALBA)の定義
〔Defining the Bolivarian Alternative for the Americas - ALBA:Original Article in English/ZNet原文

マイケル・フォックス〔Michael Fox〕Venezuelanalysis.com;2006年8月25日

2001年12月、マルガリータ島におけるカリブ諸国連合の第3回首脳会議において、チャベス大統領が、その構想を初めて提案して以来、米州ボリーバル代替構想(ALBA)に関して多くのことが書かれ、また理論が立てられてきた。

ALBAは、米国が支持する米州自由貿易協定〔FTAA〕への対抗策として既によく知られている。協力と連帯を基にしながら、経済的持続可能性も忘れない代替案である。それぞれの国が自らの主権を維持し、また国をそれ自体の必要性と要求に応じて発展させることが出来るようにするべく、多国籍の競争や、新自由主義の自由貿易から袂を分かつ新しい道を作るために構築された。中南米に更なる負債を抱えさせ、既に重度であった不平等の割合を拡大させた民営化や自由貿易協定や構造調整政策の波を通して、90年代に中南米全域に広まった経済的植民地化との関係を断つことに基礎を置いている。

だが依然として多くの疑問があり、議論は続いている。「ボリーバルの代替案」を構成するものは正確には何なのか、ALBAの壮大な傘下には如何なる計画、協定や合弁が含まれるのか、そしてこの「代替案」を区別するものは厳密に言って如何なるものなのか。ALBA自体、進行中の事業である。それに向けてキューバやベネズエラ、ボリビアや他の中南米が、ALBA専門家の言に拠れば、「第一歩を踏み出している。」

ALBAの枠組みでの最初の公式宣言と、それに続く合意は、2004年12月14日、ハバナでキューバとベネズエラの間で交わされた(2006年4月にボリビアも加わった)。宣言は「FTAAの内容と目標の確固とした拒絶」に、また「ALBAを導く大原則は、ボリーバルやマルティやその他〔の英雄達〕が掲げたように、中南米とカリブ諸国の人々の間の強い連帯であるべきである[という主張に]」ALBAの基本原則を築き上げた。

宣言において強調された(下記に付された)12の指針の中に、「ボリーバルの代替案」に包含された協力、連帯や統合の青写真がある。多数の計画案の中に含まれるものは、大陸の識字計画、無料の保健医療のための中南米計画、教育奨学金制度、社会的緊急基金、南の開発銀行、地域石油会社のペトロアメリカ、地域テレビ局のテレスルや、その他多数である。計画案の内いくつかは、既に最初の創設記念日を迎えたテレスルのように、その他よりも早く進行している。

同日に調印された合意は、共同宣言の目標を達成するよう試みる更なる特殊計画を整えているのだが、歴史家、専門家兼、「Asociación por la Unidad de Nuestra América〔我らのアメリカの統合のための協会〕(AUNA)」の理事を務めるカルロス・オリバ〔Carlos Oliva 〕によれば、「2004年に調印された宣言はALBAではない...[のだが]キューバ・ベネズエラ間の二国間合意であり、それはALBAの最初の実質的で効果的な一歩である、と判断されている。」それは同様に、単なる孤立した二国間協定以上のものであり、それ以前にこの2つの政府が結んだ条約を連結するものなのである。

この出発点から築き上げ、4ヵ月後にキューバとベネズエラは更なる合意に調印し、「ALBA適用のための戦略的計画」における条約を履行するために取るべき諸段階を整えた。それは「一方あるいは他方に現存する利点を利用し、資源を節約し、有用な雇用、市場へのアクセス権や、真の連帯において支持され、両国の国力を促進するその他のいかなる用件をも拡大することで、合理性を基にした最も有益で生産的な相互関税引き下げ〔complementation 〕を保証する」[]ためのものである。

これらの条約には、様々な社会事業及び教育ミッションへの言及が含まれており、それ以前の数年間にキューバとベネズエラの間で既に確立された協同と統合という重要な形態のための戦略的な目標を整えた。そこで言及されるのは、ベネズエラの患者を看護する「3万人に上るキューバ人医師」、ベネズエラの教育諸ミッションである、ロビンソン、リバス、スクレとブエルバン・カラスに対するキューバの支援。「合弁企業の確立と二国間の経済的相互関税引き下げ協力の他の方法のための11の計画」の帰属化やエネルギー統合である。

この二国間の協同は発展していき、戦略計画の一周年に迫った今年4月、キューバとベネズエラは再びハバナで会談した。今回はボリビア大統領エボ・モラレスも同席し、三カ国は互恵的な人民貿易協定(TCP)を締結し、ボリビアは2004年キューバとベネズエラの間で調印された共同宣言に合意した。[

TCPにおいて三カ国は、ALBAの教義に基づいて、拡張された貿易・交流・連帯のための更なる計画を強調した。西半球問題評議会〔Council on Hemispheric Affairs 〕の最近の報告が強調したように、コロンビア(伝統的にボリビア産大豆の市場)が米国との自由貿易協定を推し進める決定を下した後に、キューバとベネズエラはALBAの枠組みで、ボリビアの大豆輸出の全てを購入あるいは交易することに合意した。ある程度の生産品の代わりに、キューバは医師と教師を、国〔ボリビア〕全域の貧しい地域で働くために、送り出すことを約束した。この三カ国の間の「社会のための貿易」においては一般的な事柄である。

ALBAの枠組みで、キューバ、ベネズエラと、現在ではボリビアとの間で結ばれた、これらの協定は「ボリーバルの代替案」が、この三カ国とその相互発展のみに限られているという印象を与えるかもしれないが、実際には、これらのALBA協定は単なる手始めの枠組みでしかなく、ALBAの壮大な傘下に収まるであろうと多くが考えているものの小さな一部分でしかない。

ALBA運営審議会のカルメン・ハケリーネ・ヒメネス・テジェリア〔Carmen Jaqueline Giménez Tellería 〕会長によれば、ALBAにはベネズエラがウルグアイ、またはアルゼンチンと結んだ二国間協定から、ハイチへの基金、更には米国の低所得地域共同体のための低価格灯油計画までの全てが含まれる。とはいえ彼女自身、これまでの所これらの協定はそれ自体でALBAではなく、むしろそれは「ALBAの枠組みで調印された協定」であると区別している。

だが、ALBA専門家の間のALBAの枠組みに実際に収まるものは何であるのか、あるいはベネズエラとアルゼンチン、ウルグアイあるいはブラジルとの二国間協定やペトロカリブが含まれるのか、あるいは含まれるべきなのかという議論を無視することはできない。

ハバナを本拠地とするNGOのAUNAの理事カルロス・オリバもヒメネス・テジェリアに同意するのだが、それほど寛大ではない。彼はこれらの事業が「柔軟な論理、地域的焦点、そして何よりも...連帯の諸構成要素」を含んでいる限りは、ALBAの枠組みに収まると見なされるべきだと考えている。「一連の抑圧的な構造を通して自由貿易協定に調印するよう迫り、またいかなる形の経済発展も支援しないFTAAのように、事業が条件を押し付けない限り、私は、ALBAの一部である国と共に働いている」と、彼はハバナの彼の事務所で述べた。

とはいえこのことは、左派政権によって統治されてはいるのだが、今もなお米国との良好な関係を保ち、新自由主義的な習慣をまだ終わらせていないブラジル、アルゼンチンやウルグアイのような諸国とは難しいことである、ともオリバは考えている。「彼らが[以前のモデルと袂を分かつ]のか、あるいはそうしないのかということを私は言っているのではなく、」「私は彼らが今現在そうしていない、と言っているのである」と彼は最近述べた。

このことは、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、そして7月上旬現在ベネズエラによって構成された南米貿易圏であるメルコスール〔Mercosur 〕との、ALBAの関係についての複雑な問題を提起する。メルコスールが南米の経済活動の75%を形成し、大陸人口の65%を有し、水と炭化水素の地球上最大の資源のいくつかを含んでいるという事実故に、米国に対抗する経済的前線としての貿易圏の地政学的な重要性は疑いがない。だが協同と連帯の側面は進行過程に入ったばかりである。メルコスールが最近ベネズエラの加盟や、キューバとの経済条約の調印、そして残りの諸国とキューバの社会事業や教育上の経験を共有するというカストロの申し出と共に、以前よりも社会事業に焦点を置くようになったとはいえ、この貿易圏は今なお本質的には経済的であり、新自由主義的性質によって築かれており、それに基づいている。樹立15年の貿易圏へのベネズエラ加盟もまた、協同と連帯というALBAの教義ではなく、逆に「重要品目」も含めた全ての輸出入商品に対する関税の2014年以内の完全な撤廃に基づいているようにみえる。

それにもかかわらず、ベネズエラのチャベス大統領はメルコスールを、アメリカ大陸統合とALBA形成に向かう不可欠な段階であると度々述べてきた。ボリーバル〔ベネズエラ〕政府によって発行された、ベネズエラの貿易圏加盟についての新しいパンフレットは、政治目標の第一をこう記述する。「ALBAの原則に基づいた統合の新しいモデルを促進する:相補性、連帯、協同、そして人民の主権の尊重。」メルコスール諸国によってなされた政治意思の現在の共時性を前に、そして複数の協同インフラストラクチャー事業や、開発銀行、議会を検討しているこの貿易圏内の拡大する社会的・統合運動的アプローチを考慮すると、ALBAの枠組みが支持を得ることはありそうだが、それは構築段階にある。ヒメネス・テジェリアはそのことを認めるのをいとわない。

「もし私達が人間的感性を達成し、文化の変革を成し遂げ、競争ではなく調和の可能性によって共有することができなければ、」と彼女はカラカスで最近語った、「もし私達が世界は連帯を基にするべきであるということを理解できないとしたら、この推移過程はとても困難なものになるでしょう。」

だが、意見が一致した多くの事もある。主流報道機関によってCNNに対する平衡錘として宣伝され、また米州全域に特派員を有する中南米テレビ・ネットワークのテレスルは、1年ほど前にアルゼンチン、キューバ、ウルグアイと(51%所有国の)ベネズエラの間で結成された。ネットワークは「中南米の新しい情報伝達戦略の発展」の目標を伴った、ALBAの枠組みで設立された中心的な情報通信の計画である。

合弁企業のペトロカリベ〔Petrocaribe 〕は、昨年6月にベネズエラの国営石油会社PDVSAと、14のカリブ海諸国との間で結成され、以来カリブ海諸国が40%の融資と、25年の返済期間及び非通貨の商品やサービスによる部分返済の可能性を伴い、特恵価格で石油を受け取る扉を開いた。ペトロカリベ以来、他の複数の合弁企業が結成されており、そこにはPDVSAとニカラグアのサンディニスタ党の市長たちの団体との間の合弁企業の4月の結成が含まれる。2004年のALBA共同宣言の下に略述されたペトロアメリカの目標は、未だに現実の物となってはいないが、1年半という短い期間に多くが達成されてきた。

当然のことながら、ALBAの枠組みでの合意や合弁企業に問題がないわけではない。連帯と協同に対する多様な諸国の参加は一様ではなく、同時に特定の諸国の関与の主要な動機は、単に利己主義な経済的観点による、と多くが論じている。ベネズエラが僅かな見返りで関係国や、僅かしか提供できないものに、連帯と莫大な石油歳入を貸し付けていると見受けられる、PDVSA合弁企業の多くがこの事例に入るであろう。

だが同様のことが、釣り合いがあまりにも取れていないようにみえる他の関係にも当てはまるであろう。2000年のキューバ・ベネズエラ協定の一環として、過去5年間に医療のためこの島国に旅した数千のベネズエラ人患者の高い費用の代わりに、キューバはベネズエラの「親善」のみを受け取っている。いまこの協定は同様にALBAの枠組みに入ると見なされている。

しかし上記の説明にあるように、ALBAの枠組みの範囲内の資源、医師、学生、医療患者や他の支援の交換・交流における、キューバ・ベネズエラ(と現在はボリビア)間の統合・協同・連帯の経験は、独特で特別なものであり、そのなかで三カ国は米州の統合への道を開くことを望んでいるように思われる。

ALBAに関しては、成り行きを見守らなければならないとオリバが述べたとき、おそらく彼は正しいのであろう。

「これは発展途上の過程であると私は考えている。統合に向かう容易な道はない」と彼は言う。「[けれども]統合の力学をまとめ上げることが次第に可能になると思う。」その全ては米国の反応、ベネズエラとボリビアにおける過程の強化、ニカラグア、ブラジル、メキシコとベネズエラの選挙結果、そしてどの程度までメルコスール加盟諸国が「FTAAに対抗する姿勢」を伴ったメルコスール、「南米諸国の共同体において更に前進することに同意したメルコスール」を築くことを望んでいるのかに懸かっている、とオリバは信じている。

去る11月、中南米とカリブ諸国支援のデモ行進の頂点における演説でチャベス大統領が述べたように、「ALBAは単なる一つの計画案ではない...これら全てがALBAである。[ALBAは]統合である。」

そしてこれは疑いなく、南米の多くが目指している方向であり、北の帝国主義――それが米国軍事介入であろうと米州自由貿易地域であろうと――に対するチャベスのスローガンなのである。チャベス自身の言葉では、それは「歴史的な瞬間」であり、それが最も旨く記述されているのは、2004年12月にキューバとベネズエラが調印したALBA共同宣言の最終段落である。

「アヤクチョの戦い訳注1の輝かしい勝利の、そして我らの国々の統合の真の過程に対する道を切り開こうと試み――以来挫折してきた――パナマの条約締結会議の180周年を記念する今年、ついにボリーバル共和国の整理統合と、我らの国々に課せられてきた新自由主義政策の明白な失敗が相俟った今、中南米とカリブ海の人々は第2の、そして真の独立を、米州ボリーバル代替統合構想の誕生への道を見出した、という確信を我々は表明する...」

これはALBA、キューバ、ベネズエラと中南米間の統合と協同に関する4回シリーズの1回目である。

補遺:

〔1〕2004年12月14日のキューバ・ベネズエラによって調印された、ALBAに向けた共同宣言の要約。2006年4月29日にハバナでボリビアは宣言に付属的に合意し、それは下記のALBAの原則と主な基盤を提示する。

  • 「貿易と投資はそれ自体が目的ではなく、公正で維持可能な発展を達成する手段であるべきである。」
  • 「多様な諸国の発展のレベルや経済の規模を考慮する特殊で特異な処置。」
  • 「諸国と諸生産の間の競争ではなく、参加国の間の経済上の相補性と協同。」
  • 「地域で最も発展していない諸国のための特別計画に表された協同と連帯。」大陸の識字計画、それを必要としている者のための無料の医療や、「経済・社会発展」にとって最も重要な分野における奨学金計画。
  • 「社会緊急基金の設立」
  • 「中南米とカリブ海諸国の間の通信機関と交通機関の統合された開発」主要道路、列車、海運と航空路線、電気通信やその他を含む。
  • 「環境を保護する規範を通して、維持可能な発展を後援する活動。」
  • 「中南米とカリブ海社会に有益となる、安定したエネルギー製品の供給を保証するべく、地域の諸国間のエネルギー統合。」ペトロアメリカの創設というベネズエラの提案が含まれる。
  • 「外国投資に対するこの地域の諸国の依存を縮小させる目的を伴った、中南米とカリブ海自体における中南米資本に対する資本投資の促進。」そうするための、中南米投資基金、南の開発銀行、中南米相互保証協会やその他の創設。
  • 「自治と先住民文化に対する特別な尊重と促進を伴う、中南米とカリブ海の文化や、地域の人々の独自性の防衛。」テレスルの創設が含まれる。
  • 「多国籍企業の貪欲さから中南米・カリブ海諸国の伝統的遺産を保護する一方、知的財産権の規準のための尺度。」
  • 「多国的な領域における各々の立場や、他地域の諸国や勢力圏との全ての交渉の過程の調整。国際機関、特に国際連合における民主化と透明性のための努力を含む。」

2)  ALBA適用のための第一回キューバ・ベネズエラ会議の最終宣言〔英文〕

3)  我らのアメリカの人々と人民貿易のためのボリーバル代替案適用についての合意〔英文〕


訳注1:1824年12月9日のアヤクチョの戦いはペルーの独立戦争の最終段階に起きた。この戦いはペルーの独立を決定付けると共に、残る南米の独立をも確実にした勝利である、と歴史家によって見なされている。(英文参照元

posted by Agrotous at 23:01 | TrackBack(1) | ベネズエラ
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