2006年07月06日

中南米の安保理議席をめぐる競争
〔The Race for Latin America's Security Council Seat:Original Article in English/ZNet原文

シリル・ミカレイコ〔Cyril Mychalejko〕Upside Down World;2006年6月25日

2年の任期である国連安全保障理事会理事国の議席獲得を目指すベネズエラを阻止するべく、米国は外交攻勢に着手した。アルゼンチンが退く議席をグアテマラが引き継ぐよう、米国は働きかけている。

米国高官らは、ベネズエラのウゴ・チャベス大統領は中南米における民主主義に対する脅威であり、安保理理事国内における彼の存在は国連にとって非生産的になるであろうと主張している。

「多国間会議における、多くの場合破壊的で無責任な行動で示されているように、ベネズエラが安保理の効果的な運営に貢献しないであろう、と我々が信ずることは驚くべきことではない」と国務省のスポークスマン、エリック・ワトニックは述べた。

対照的に、ワシントンはグアテマラが「発展しうる候補」であると信じている。国務省高官らは、国連でのグアテマラの功績と平和維持活動への貢献をその適性として言及する。

グアテマラの適性

昨月のグアテマラへの公式訪問後、ルイーズ・アルブール国連人権高等弁務官は、民主的改革の「緩やかな進展」について懸念を表明した。20万人以上の(多くが先住民の)人々を死亡させた、あるいは失踪させた36年に亘る内戦を終結させた1996年の和平合意から、グアテマラは10年隔たっている。

「公正と補償の獲得を求めている武力闘争の被害者が遭遇する遅れ以上に、このことを例示できるものはない」とアルブールは述べた。「過去の侵害に対する規則が刑罰を免れることである場合、現在起きている犯罪についてもそれが普及することは驚くべきことではない。」

アルブールはその国を苦しめている問題の一覧に言及した。そこに含まれるのは、人権活動家達に向けられた進行中の脅迫や暴力、社会福祉に対する政府の乏しい出資(地域で最下位)、先住民族に対する継続する差別や周縁化、そして止まることのない殺人件数の増加である。更に、10年の間グアテマラは「先住民のアイデンティティと権利に関する合意」の採用と実施を達成できずに来た。

グアテマラ政府が差別や暴力や免責に取り組み損ねてきたことについて、批判し懸念しているのは国連のみではない。2006年4月アムネスティー・インターナショナルは、グアテマラによる国連拷問等禁止条約の実施を検討した報告書を発表した。

「現在侵されている人権侵害の大部分は、[その侵害の]大部分が綿密な調査を欠いたまま、罰せられないままである」とアムネスティーの報告書は提示した。

グアテマラの女性に対する殺人率の急激な増加に懸念し、アムネスティーの報告書は女性に対する暴力と、加害者を裁きにかけることのできない政府に焦点を合わせる。殺害の多くの割合に性暴力や切断行為が結びついている。それにもかかわらず、またこのような陰惨な犯罪の急激な増加にもかかわらず、国家による起訴手続きの増加は見られないのである。「2001年から2005年の間に、1、897件の内わずか6件のみが法廷で解決された」ことを明かすある報告をアムネスティーは引用する。

この失策をアムネスティーは性差別に起因すると考え、検事や警察がしばしば被害者を非難し、被害者らを娼婦やギャングの一味であると誤って責める、と報告する。迅速に殺人犯を起訴できない政府と、そのことが被害者の家族に科す更なる苦しみは国連条約の侵害に等しい。

これに加えて、土地紛争を処理する方法としての、住宅破壊やカンペシーノ(貧しい農民)の暴力的な強制立ち退きというグアテマラ政府の政策について、アムネスティーは懸念を表明した。2005年12月の時点で、グアテマラで1、052件の土地に関する争いが報告された。この中央アメリカの小国で、2パーセント以下の人口が60パーセントの土地を所有している。土地所有権の格差は、内戦中の一連の独裁政権が実行した土地保有政策の結果であり、グアテマラの地方の貧者の広範囲に及ぶ国内避難民に繋がった。紛争により誘発された国内避難民を監視する国際機関である、「国内避難民監視センター〔IDMC〕」は、グアテマラにおいて100万人に及ぶ人々――その多くが先住民族――が避難民になったと見積もっている。

元実業家で裕福な地主のオスカル・ベルシェ現大統領の下、暴力を伴う強制立ち退き、住居の焼き討ちや破壊が紛争の解決に利用されてきた。このことは拷問禁止条約の侵害に等しいだけではなく、土地の再分配と、内戦中に追い立てられた貧しい人々の再定住を補償する和平条約の責務不履行でもある。これに加えて、人権・先住民活動家らは脅迫、攻撃、処刑の対象となってきた。

紛争解決として暴力を利用するベルシェの性向は、2005年1月に論争の的となっていた世界銀行の鉱山事業で再び露出した。抗議する先住民族の人々は、カナダのグラミス・ゴールド社が採鉱設備を運び込むのを妨害するために封鎖を行った。ベルシェは軍と警察を送り込み、彼らは抗議者らに発砲し、1人が死亡、数十人が負傷した。

国連人権高等弁務官が指摘したように、免罪が過去の犯罪を裁決するのであるから、グアテマラの現在の状況は驚きではない。

アムネスティー・インターナショナルによれば、「系統だった拷問、強制的な『失踪』や大量虐殺の政策を含めた過去の人権侵害に関与した者の多くが、彼らの行動の責任をとっておらず、なかには現在のグアテマラでかなりの政治影響力を持つものもいる。」

特筆すべき例は、1982年に軍事クーデターを起こして大統領となった軍人のエフライン・リオス・モント〔Efraín Ríos Montt 〕である。権力を握ると、モントはワシントンの承認を受け、マヤ族の人口に対する焦土作戦に着手し、その結果数千の先住民が殺害され「失踪」した。近年、モントは議会の議長を務め、2004年ベルシェに負けるまで大統領に立候補した。

レトリックと現実

〔理事国入りを目指す〕ベネズエラの努力に対する米国の懸念は、民主主義や国際法の尊重とは何の関係もない。危険にさらされているものは、この地域に対するワシントンの衰える影響力や、地球規模で指図する能力、そして――グアテマラにおいてと同様に――暴力・差別・免罪で特徴付けられた地球規模のヒエラルキーを維持する国連の機関的な黙認である。

この地域の最近の選挙は、ワシントンの(企業と政治両方の)指導者らに古き良き時代を回想させてきた。当時は、新自由主義改革の強引な促進や、米国対外政策の支持を、中南米の国家元首らに頼ることが出来た。それがその同じ指導者らが暴力や圧制を使用しなければならないことを意味したとしてもである。チリの元独裁者アウグスト・ピノチェトや前述のモントは代表例である。

ベネズエラのチャベスやボリビアのエボ・モラレス、また程度は劣るがアルゼンチンのネストル・キルチネルやブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバの様な、新しい中南米を代表する指導者達は、ワシントンにより先導され、国連により支援された現在の地球規模のヒエラルキーに対する脅威なのである。ウルグアイとパラグアイとともに、これらの諸国は空き議席に対するベネズエラの試みを支持するであろうと予測されている。米国は外交圧力を利用し、重要な票であるとされるチリにグアテマラを通過させるよう働きかけている。しかし、チリのホセ・ミゲル・インスルサに米国後援の候補が負けたOAS〔米州機構〕の2005年の選挙が指標となるならば、ワシントンはもう一度失望を、現実という苦い薬とともに経験することもあり得る。

同様に、安保理がワシントンの政策全てに賛成しない――例えばイラク戦争――とはいえ、その戦争は(国連憲章に違反して)開始され、10万人以上のイラク人が死亡し、米国政府は未だに責任を負っていない。思い浮かぶ他の国連による犯罪は、50万人のイラク人の子供たちを殺害した経済制裁であり、更に最近ではハイチにおけるクーデターとその国での死の部隊の利用に対する支持である。

安保理へのベネズエラの選出は、複数の小国が餌食となっってきた非人道的な機構や地球規模のヒエラルキーに対する挑戦となることも大いにありうる。恐れられていることは、米国対外政策に向けられたベネズエラ政府の率直で厳しい批判が伝染しやすいということを証明することである。チャベスは国連を制度上の失敗と呼びすらした。

2005年9月、彼は国連で演説し、この機構の「再創設」を要求した訳注1。彼が提案した制度上の修正の一部は拒否権の終結や、安全保障理事会を拡大させ新たな先進・発展途上国を含めることである。

これがワシントンがベネズエラの立候補に異議を唱える理由である。


シリル・ミカレイコはwww.UpsideDownWorld.org の編集助手で、現在エクアドルに拠点を置いている。


訳注:

1:この演説の日本語訳は日刊ベリタの無料記事で閲覧可

posted by Agrotous at 22:09 | TrackBack(0) | 中南米全般
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