2006年06月16日

過酷な清算
中南米のエネルギー
〔Rough Reckoning
Energy in Latin America :Original Article in English/ZNet原文

トニ・ソロ〔toni solo〕;2006年6月10日

近頃、ボリビア政府による炭化水素資源の国有化に多くの注目が向けられている。ボリビアの政策転換は、ベネズエラ政府の外国石油企業との間の系統だった再交渉に続いて起きた。それはベネズエラの人々の利益に役立つ収入を拡大させた。エクアドルは米国石油多国籍企業のオクシデンタル石油による、43の契約違反の疑いに応じて、その企業との合意を終了させることにより、この地域の動向を増進させた。この措置すべてがエネルギー資源の最も効果的な管理についての中南米政府による再考を示している。

この地域の政治について、また諸政府が影響し合う更に広範囲な国際関係についての洞察を得るうえで、エネルギーは検討すべき根本的な主題である。エネルギー関係は貿易関係とは切っても切れない関係にある――これは「自由貿易」や「グローバリゼーション」、国家主権の侵害についての引き続き行われている議論のうえで曖昧になっていることである。この関係を理解するためには、天然ガスと石油生産の持続可能性に目を向けることは重要である。持続可能性を考察する時、主として石油のことを考慮するのが一般的である。だが天然ガスは類似した形で重要な役割を、発電から全般的な産業や一般家庭のエネルギー消費の分野で担っている。

下記の表は、米国政府のエネルギー情報局(http://www.eia.doe.gov)により公開された情報の要約である。これは実際のデータと近年の推定による簡略化されたデータを示す。石油についてのデータは異なる種類の石油を区別していない。以前には経済的ではなかった莫大な超重質原油埋蔵量の最近の再評価は含まれていない。この表の主な目的は、米国政府の公式の数字を基にした、生産の持続可能性についての大まかな認識を示すことにある。表に含まれるのは主要な南米の炭化水素生産国のみである――カリブ海の生産国は含まれない。

アルゼンチン
ボリビア
ブラジル
チリ
コロンビア
エクアドル
ペルー
ベネズエラ
石油埋蔵量(10億バレル)
2.30
0.40
10.60
.0.15
1.54
4.60
0.90
77.20
石油生産量(日産バレル)
775800
35500
1839700
18400
530000
538700
111800
2855700
各等率での今後の生産量
8.13
31.31
15.79
22.33
7.96
23.39
22.06
74.06
ガス埋蔵量(1兆立方フィート)
48.90
24.00
8.80
3.50
4.00
0.30
8.70
151.0
ガス生産量(10億立方フィート)
1400.00
200.00
310.00
35.30
215.00
1.80
19.80
1049.00
各等率での今後の生産量
13.50
120.00
28.39
99.15
19.05
166.67
439.39
143.95

この簡略化された数値ですら、ベネズエラが新たに認定された莫大な埋蔵量を含めなくとも、この地域で最も重要な石油とガス生産国であり、現在の生産率でそれぞれ75年と140年分以上の備蓄を有していることが分かる。アルゼンチンは急激に尽き始めている。同様に、ブラジルやアルゼンチン(またパラグアイやウルグアイのような輸入に完全に依存している諸国)や、より低い程度でチリが、エネルギー資源のための競争で米国や関連した外国多国籍の利益を求める無情な帝国主義の暴飲家に直面した場合に、確実な供給源を確保するため、ベネズエラとの戦略的な同盟を築こうと決心しているようである理由が読み取れる。

このデータは、米国政府が数十億ドルの税金を費やし、コロンビアの再選された麻薬テロ大統領ウリベを支援した理由を、思想的な政治関係ではなく、戦略的なエネルギー関係において理解する助けとなる。米国と他の外国多国籍企業は出来うる限り、その国の石油とガス資源を食い物にしている。コロンビアは現在の石油埋蔵を10年以内に、そしてガスを20年以内に使い果たしそうであり、その一方で大部分の国民は貧困と飢餓に陥ったままである。この事実が、ベネズエラ政府との良き関係を維持するべく、ウリベ大統領がみせた外見上自己矛盾した努力の原因を明らかにしているのかもしれない。

ペルーでのオジャンタ・ウマラとアラン・ガルシアとの間の来る決選投票における外国多国籍企業の利害関係も明白である。ペルーの重要なガス埋蔵からの生産は、カミセアのガス田の懸案の開発とともに、著しく拡大する予定となっている。民族主義者のオジャンタ・ウマラは、外国多国籍企業に優しいアラン・ガルシアよりも、ガス取引からペルーにとって良い条件を取り決めるのはまず間違いない。ペルーがボリビアの現在の水準近くまで生産を拡大したとしても、その埋蔵は50年以上尽きることはない。このことはチリの場合と対照を成しており、チリがガス生産をボリビアの水準に拡大すると、その埋蔵をおおよそ15年で使い果たしてしまうのは明らかである。

南米のガス埋蔵量の世界的な重要性についての相対的な認識を得るために、以下の表は世界最大の埋蔵量を有する諸国を示している。ひとつの地域としての南米の総計は重要性で第5位となる。よって、ブッシュ政権の代弁者らがボリビア、ベネズエラ、ロシアやイランにおける民主主義について懸念を表明するとき、この偽善に対して、カタールやサウジアラビアやアラブ首長国連邦のような諸国――全て米国帝国やその法人子会社への忠実なエネルギー供給国――における民主主義についての彼らの深い沈黙を明確に並列することができるのである。(新たに認定された埋蔵量を加えると、ベネズエラは世界最大の石油供給国の間でサウジアラビアに取って代わることに留意せよ。)

1兆立方フィート
世界の埋蔵量に対する%
ロシア
1680
27.8
イラン
940
15.6
カタール
190
15.1
サウジアラビア
235
3.9
南米
219
3.63
アラブ首長国連邦
212
3.5

米国政府はエネルギー供給に対する利用権利と支配について懸念している。その懸念は貿易や農業、援助政策を推進し、また相互に作用しており、それは外交や軍事や企業メディア・プロパガンダ諸戦略の形を定める。また米国政府は国際金融機関を依然として支配しており、これらの機関に対する支配を維持するべく、欧州のパートナーと密接に協同している。だが現在、地球規模の企業メディア・プロパガンダ宣伝戦や、軍事力での威嚇で援護された米国の悪い警官、欧州の良き警官という債務・貿易・援助の最も巧妙な操作は、終わりなき貧困の受け入れを拒絶している多くの中南米諸国の貧窮化した大多数を前に、しくじり始めている。
困難に直面するエクアドル

2005年初期のルシオ・グティエレス大統領の追放以来、エクアドルの人々は彼らのエネルギーについてのジレンマという現実や、彼らの国の天然財産と惨めな経済発展の間の矛盾について、鋭敏な理解を得てきている。石油輸出国であるにもかかわらず、エクアドルは年間約15億米ドルの石油精製品を輸入しており、それは内需を満たすには不十分な精製能力しか持たないからである。その石油輸出の多くは原油の形である。まともな生活を要求する貧しい大多数による社会・政治的な動揺に対する脆さは、昨年8月の石油ストライキの最中、貧窮化した石油生産地域が中央政府から、より多い資金を強く要求したときに深刻に表面化した。

その時ベネズエラ政府は――ベネズエラ政府はその地域の不安定化勢力であるという米国政府の主張に完全に相反して――特に必要とされた石油供給を送り届けることにより、エクアドル政府に手を貸した。その支援は、協力協定に向かう試験的な検討に繋がり、今週ベネズエラのチャベス大統領の短時間の訪問の最中にキトで最終的に調印された。ディエゴ・ボルハ経済大臣は、エクアドルの重油をベネズエラで精製し、エクアドルの石油精製品で返済することで、この協定はエクアドルにとって最大で年間3億米ドルの節約となると表明した。この協定は、精製能力拡大などのエネルギー関連計画での将来の提携を提供する。

この協定が結ばれたのは、エクアドル政府が米国石油巨大企業のオクシデンタル石油との国内での契約を破棄した後である。この決定は国営石油会社ペトロエクアドルが、エクアドル国民の利益のために、石油生産で10億米ドル以上を生み出すことが可能な油田を取り戻すことを可能にした。米国政府は、直ちに反応を示した。来年期限が切れるアンデス諸国との特恵貿易協定に取って代わるものとして提案してきた「自由貿易」協定についての交渉を中断したのである。その満期につけ込んだ、主権を下取りに出す貿易協定〔trade-in-your-sovereignty deal 〕という米国からの申し出は、農業や公共事業や知的財産などの主要な分野でエクアドルにとって基本的に不利益をもたらす。

オクシデンタル石油は10億米ドル以上の賠償要求を、米国政府が牛耳る世界銀行の傘下機関である投資紛争解決国際センター〔ICSID〕に申し立てることで、中道のエクアドル政府に対する圧力を増大させた。エクアドル政府の当初の立場は、申し立てを受け入れるICSIDの法的権限を否認するというものであった。しかしこの論争の中心的な教訓は、米国政府が貿易やエネルギーや投資を、戦略的利害を包含した継ぎ目のない総体であるとみなしているということである。そのような文脈では、エクアドルのベネズエラとの協定は、中南米での米国の影響力が減少していることを示す、もうひとつの些細な兆候となる。

貧しい者に対する全面戦争

この現実に対する企業メディアの誤魔化しは、中南米の前進する「ピンク・タイド〔左翼的な潮流:訳注1」についての幼稚な解説で、根本的な諸問題を陳腐なものにすることである。かようなナンセンスが覆い隠していることは、「自由市場」の名の下に外国企業によって略奪された社会における残酷な現実である。エクアドルでは、それはチョネ市のある地元病院についての報道となった。十分な設備と介護の欠如により26人の新生児が死亡したのである。(1)このスキャンダルはイバン・サンブラノ保健大臣の辞任に至った。しかし彼は、莫大な負債を抱えたエクアドルへの、世界銀行と国際通貨基金〔IMF〕によって強いられた数十年に及ぶ新自由主義経済の反人道的な失策に対する不運な身代わりなのである。より広範囲な国内状況で、この政策が包括的にどれ程失敗したのかを理解するためには、エクアドルの地方の女性のうち54%が専門家の介護を受けずにお産をするということが何を意味するのかを考慮に入れるといいかもしれない。

時折ある不一致にもかかわらず、北米と欧州の帝国主義勢力と、豪州や日本のような太平洋の同盟国は、彼ら自身の利害を継ぎ目のない総体とみなしている。彼らの政治指導者らは「自由市場」について偽善的に語る一方で、彼らの貿易上の国益を包含している企業に有利となるよう国際的な枠組みを操作するため、政府として度々介入するのである。首尾一貫していて、法的拘束力のある超国家的な機構において支配を世界化しようとする彼らの努力は、イランやベネズエラのようなエネルギー資源に富んだ諸国への依存という恐怖を隠蔽している。中南米における資源に富んだ諸国の貧窮化した大多数は、首尾一貫した戦略的同盟で応じない限り、彼らが彼ら自身の莫大な天然資源から利益を得ることは決してないことをかつてないほど明確に認識している。

かれらの子供達は飢え続け、不十分な教育を受け、不必要に病気にかかっている。彼らの赤ん坊は飢えにより、また国際金融機関を通し米国とその同盟国により強いられた政府の怠慢によって命を落とし続ける。中南米全域の人々は、それ相応の暮らしを保障する政治的合意を求めている。それに相容れない帝国勢力とその企業の目標は、中南米の資源を出来うる限り安く入手し支配することである。より多くの「援助」という唱導は、殆ど不合理なほどに見当違いである。裕福な国の心遣いの告白はまったくもって信頼できない。

中南米において、ウゴ・チャベスやエボ・モラレスのような政治家への支持や、キューバの功績の承認は拡大してきた。その起源は、公正に関する根本的な問題や、不可欠であり重要な人々の間の連帯についての一般の人々の認識である。コロンビアでは、アルバロ・ウリベ麻薬テロ大統領の軍国化した再選は、貧窮化した大多数が弾圧と暴力の別の4年間に直面することを意味し、それは外国企業と彼らの政府が国の資源を最も有益な条件で手にするために行われる。ベネズエラとボリビアが標的となっているのは、両政府がそのような条件を呑まず、人々にそれ相応の暮らしを保障することを主張しているからである。

草の根のレベルでは、選挙を通し、あるいは議会外の運動や抗議を通して、人々は益々清算に取り組む決心をしている。ペルーの有権者は数日後に彼らの選択を下す。メキシコの選挙は7月である。エクアドルとブラジルの人々がそうするのは10月である。ニカラグアでは11月に、ベネズエラでは12月である。選挙が主要な政治家を定める一方で、当選した政治家は、中南米の昔からの基本的なドラマが描き、そして訂正してきた時間を超越した台詞を語るであろう。つまり、この地域の資源は人々に利益を与えるためなのか、それとも貪欲で残忍な外国人のためなのか?

トニ・ソロは中米の活動家である――www.tonisolo.netを通し接触可

注釈
1."La muerte de bebés descubre la grave situación de la salud", Argenpress, 27/05/2006


訳注
1:pink tideのpinkは赤がかったという意味で左翼的と軽蔑した言葉。

タグ:トニ・ソロ
posted by Agrotous at 17:57 | TrackBack(1) | 中南米全般
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Tracked: 2006-06-17 18:55
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