2006年05月08日

ベネズエラとブラジル
中南米の転換の重心
〔Venezuela and Brazil
Latin America's Shifting Centres of Gravity:Original Article in English/ZNet原文

トニ・ソロ〔toni solo〕;2006年4月30日

現在パナマのコパ航空は、過去ボーイング737型機が占めていた航路で、ブラジルのエンブラエル社のE-190型民間航空機を利用している。この小さな出来事は、中南米における経済的な力の均衡が米国企業から遠ざかっているという、更に広範囲な転換を際立たせている。直接・間接的な政府の大量の補助金や支援に慣れすぎている米国企業は、急激な修正を着実に余儀なくされるであろう。中南米諸国との「自由貿易」を無理やり推し進めようとするブッシュ政権の破れかぶれな行動は部分的に、来る災難を和らげる試みである。もしそれを回避できないのであれば。

エンブラエル社によるコパ航空への航空機の売却は、ブラジルによる中南米における欧米の航空宇宙産業の移り変わりの初期段階を示している。先週ルラ大統領は、ロシアの宇宙計画でミッションを首尾よく終えたブラジル初の宇宙飛行士に勲章を授けた。同様にブラジルは自らの核産業を開発している。ブラジルとベネズエラの両国は、マイクロソフトのウィンドウズ・オペレーティング・システムの様な専有的なソフトウェアに優先させて、自由なソフトウェアをかなり広範囲に及び利用している。世界的な貿易は、ブラジルと中国、ベネズエラとイランを結びつけ、それは国際関係における中南米の伝統的なネットワークを再構築している地域統合の計画に組み合わされている。

天然資源に対する投資や開発のパターンも同様に転換している。その兆候は、南米の多くの地域のガス資源を1つのネットワークとして繋げる、ベネズエラからアルゼンチンに及ぶガス・パイプラインという政府間の計画に関連して提起された環境問題に見られる。提案されたルートは、地球上で最も貴重な生物の多様性、森林や水資源がある地域のいくつかを通過する。ウゴ・チャベスやイナシオ・ダ・シルヴァのような大統領らは、彼らの地域統合の推進力が強いる相容れない要求を清算しなければならなくなるであろう。

局地的な衝撃、地球規模の背景

彼らは同様に、世界的な企業エリートが権力を分かち合うことを拒むことから生じる衝突によって悪化するであろう危機に直面している。「全領域支配〔full spectrum dominance〕」という米国政府の方針や、その方針に対する英国のような従属した同盟国による支持は、交渉不可能であり、極度な不安定化要因となっている。このことはパレスチナ人の民主的な選挙決定を尊重することを、北米と欧州諸国が拒絶し続けていることに、あまりにも明確にみられる。

このあからさまな偽善は、更に広範囲な状況における、政治・経済的な失策の兆候である。その失策に伴うものは、米国の軍事力や北米と欧州の経済力が、ロシア、中国、インドやブラジルのようなますます強力となる諸国への影響力の流れを抑えることが出来るという妄想である。彼らがイランに関して難航し、つまずいている間に、地球規模の企業エリートの政治的な表看板――ジョージ・ブッシュや彼の旧友の様な――はおそらく、中南米においてより都合の悪い苦境に陥っている。

この様な地球規模と地域的な変化によって生じた対立は、弱くて脆い諸国と人々に過大な代価を課する。被害者と課せられた損害は僅かな注目しか受けない。この点において、パレスチナの人々の苦境は典型的である。ハイチと、現在ではニカラグアでは、選挙過程における公の介入と望ましくない結果の拒絶が、あまりにも日常茶飯事になり、企業メディアで報告すらされないことを示している。現在ニカラグアにおいて、ポール・トリベリ〔Paul Trivelli 〕米国大使による異様な行動があまりにも問題があるので、地元の教会指導者らですら抗議するにいたった。

現在、「ジョージ・ワシントン」航空母艦により率いられた米国海軍機動部隊が、「米州パートナーシップ」と呼ばれる訓練の一環として、カリブ海で機動演習を行っている。この演習は麻薬と人身の売買に対抗する活動の連携強化を促すと仮定されている。これ程の力の誇示に対する鎮静剤の様なこじつけの解釈を受け入れることはできない。この訓練は、オランダの国防大臣が荒唐無稽な主張をした数週間後に次いで起きた。その主張はベネズエラがオランダ領のボネール島、アルバ島とキュラソー島に侵略するかもしれないというものであり、オランダ領アンティルのエチエンネ・イース首相により即座に否認された。米国の軍艦はキュラソー島、アルバ島、トリニダード島、トバゴ島、ジャマイカ島、セントキッツ島とネイビス島、そしてニカラグアとホンジュラスを訪れる予定となっている。

アンデスの経済的緊張

この砲艦外交は、ベネズエラによるアンデス共同体〔ACN〕からの脱退によって生じた衝撃に対する、ブッシュ政権のある種の反応を間接的に形成しているのかもしれない。ベネズエラ政府は、先のペルーとコロンビアが調印した米国との「自由貿易」合意が、共同体の地域統合の根拠の土台を崩していると考えている。ACNから脱退するというベネズエラの決定は、ACNの譲歩的な貿易条件から利益を得ていたコロンビアの企業に難しい諸問題をもたらす。

今、利益を得るものたちは危険にさらされている。貿易協定を定めるという地域的な取り組みの代価を引き上げたこの結果は、コロンビア政府の十分な準備なくして訪れた。ベネズエラの措置は、コロンビア政府の秘密諜報機関DASがベネズエラのチャベス大統領暗殺を企んでいたことが、コロンビアのメディアにより裏づけられた最近の害をもたらす発表とは無関係ではないのかもしれない。DASの情報部門の元長官ラファエル・ガルシアは、コロンビアの「セマナ」誌との詳細なインタビューで、その主張をした。

ACNを去るというベネズエラの決定は、アンデス諸国にとって米国の企業に対する大規模な市場の開放が利益となることに更なる疑いを投げかけることで、近隣の地方寡頭政治家達を当惑させた。ペルーでは、国粋主義の大統領候補オジャンタ・ウマラの効果的な選挙運動は、トレド政権による米国との「自由貿易」協定の調印に反対することを優先させた。初回の選挙に勝利したウマラは、5月末〔6月4日予定〕の決選投票に向かう。彼が勝利した場合、彼はトレドによる合意を破棄するかもしれず、少なくとも再交渉を要求するであろう。それを米国政府は受け入れないであろう。

CAFTAの因果応報

ベネズエラとその南米同盟諸国は、中南米での大陸全域にわたる米州自由貿易地域〔FTAA〕を押し付けるブッシュ政権による試みを阻止した。米国政府は既に計画を立て、この妨げに対する対応を実行する準備が出来ていた。当初、それは元米国通商代表のロバート・ゼーリックにより容赦なく実行された。ゼーリックはコンドリーザ・ライスの国務副長官になる以前に、中米自由貿易協定〔CAFTA〕の交渉を推し進めた。彼の後任者らは、CAFTAと同等の地域貿易協定を交渉するようアンデス諸国を説得するのに失敗した。結局彼らは個々にコロンビアとペルーをもぎ取るに終わった。

しかし今ベネズエラ政府は、ニカラグアに安価な燃料と肥料を提供することで、除外され貧しい大多数に恩恵をもたらす、公正で公平な貿易の未来像を追求している。この取り決めは、ダニエル・オルテガにより率いられたサンディニスタ民族解放戦線〔FSLN〕によって促進され、どの政治政党を支持しているかに関わらず、最大で151のニカラグアの地方自治体に利益を与える。これが正式に調印されるのは4月25日である。

このベネズエラからの支援は、ニカラグアの燃料危機の最悪の影響を緩和する助けとなり、小規模農家が今年初めての雨季を活用し種まきの準備をしている今、とくに必要とされている安価な肥料を提供する。エルサルバドルの強力なFMLN連合〔ファラブンド・マルティ民族解放戦線〕やホンジュラスの実利的な新政府を含む、ニカラグアの近隣諸国が同様の支援を望むことはありそうなことである。ベネズエラは、2005年にペトロカリブ・イニシアチブの下、カリブ諸国との取り決めに似た協定を、これらの中米諸国に提案できるかもしれない。

惨めな米国の双子―失策、攻撃性

異なる仕方で、ベネズエラとブラジルは中米と大陸全域でその存在感をしらしめている。この転換が切り開く政治的・経済的な選択肢は、おそらくこの地域全域での国家間関係を変容させるであろう。米国政府の脅しに畏縮し、米国政府の乏しい褒美に飛びつくことが、この先、中米の地域外交で主要な選択肢として優勢なままであるとは考えられない。

イランについての戦争を挑発するレトリックが、そこでの米国の地域的な政治的失策を示しているように、攻撃的な米国政府によるベネズエラについてのレトリックは、中南米での衰えてきた立場を反映している。その政治・経済的な大失策を補う軍事的な攻撃性は、ジョージ・W・ブッシュの失敗した政権の不吉なほどに便利な選択肢である。彼の無能で詐欺的な政権は、それ自身の妄想に従い現実を作り変えようとする、誤った軍事的な博打に、いつでも打って出ることができる。見込みとしては、そのような動きは北米アメリカ合衆国の帝国の衰退を引き止めるのではなく、早めるであろう。

トニ・ソロは中米の活動家である。www.tonisolo.net を通して連絡可。

posted by Agrotous at 21:47 | TrackBack(2) | 中南米全般
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Excerpt: 原油高、商品相場高が急激にすすんでいる。 ガソリン価格にはすでに反映されてきており、電気・ガスの値上げにも間近い。 いろいろな製品価格にも影響を与えてくるだろう。たとえば、合成ゴム・天然ゴ..
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